醜聞 スキャンダル

劇場公開日:

解説・あらすじ

黒澤明が初めて松竹に招かれメガホンを取った作品。脚本は「野良犬(49)」と同じく菊島隆三との共著である。新進気鋭の画家(三船)と美しい声楽家(山口)が偶然出遭ったところを雑誌記者に盗撮される。まったくの醜聞(スキャンダル)に巻き込まれていく二人。物語の舞台はやがて裁判へ……。いたずらに醜聞を追うジャーナリズムを糾弾する一方で、後半は志村喬演じる弁護士の心情・行動が焦点となっていく。

1950年製作/104分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1950年4月30日

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

4.0【黒沢明監督が当時のイエロー・ジャーナリズムに憤慨して製作した作品。だが、今作を観ると現代でも同じだな、と思った作品であるとともに、初めて観た山口淑子さんの日本人離れした美貌にビックリした作品。】

2025年5月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 1件)
共感した! 2件)
NOBU

4.0「李香蘭」こと山口淑子

2025年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

一見すると芸能人のスキャンダルを扱った法廷劇のようでいて、実のところは「人間の弱さ」と「良心の目覚め」という深い主題を内包している。中心にいるのは志村喬演じる蛭田弁護士。貧しさと過去の屈折を抱えた彼が、依頼人を裏切りながらも最後に正義に目覚める姿には、『生きる』や『悪い奴ほどよく眠る』へとつながるモチーフが明確に現れている。

蛭田と青江(三船敏郎)が居酒屋で「俺たちはやるんだ」と語り合い、店の客たちも一緒になって「蛍の光」を歌うシーンは、当時の日本社会における“自己欺瞞”と“良心の呵責”が表裏一体であることを象徴的に描き出している。盛り上がりはするが、何も変わらない。弱さに負ける人間の滑稽さと哀しさが染みる。

主人公の青江は観客の視点を担い、蛭田の変化を傍で見つめる立場にある。物語は最初こそ青江が主役のように進むが、最終的には蛭田が真の主人公であったことが明らかになる構造も見事。

また、山口淑子の起用も見逃せない。かつて“満洲の歌姫”として国家プロパガンダの象徴だった彼女を「虚偽のスキャンダル被害者」として登場させたことにより、黒澤は国家・マスコミ・大衆・個人の力関係を裏から批判している。現代の観客にはこの起用の意味は伝わりづらいかもしれないが、戦後日本における「虚構と現実」「加害と被害」「清純と汚名」の狭間に立たされた存在としての山口淑子は、非常に強い象徴性を帯びていた。

黒澤はここで「良心」「正義」「自己犠牲」といったテーマに真正面から向き合っており、のちの作品群で繰り返し掘り下げていく核心がこの一本に凝縮されている。本作を通じて、黒澤が「ヒューマニズムの苦み」をどう捉えていたのか、その萌芽を感じることができる。

83点

コメントする (0件)
共感した! 1件)
neonrg

5.0不幸な人間にとっては幸福な人間が不幸になるのを見るのは楽しい

2023年9月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

楽しい

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
野川新栄

3.5黒澤明監督作品には珍しい法廷劇でした。

2022年8月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

1950年。監督:黒澤明。主演:三船敏朗。
黒澤明の10番目に監督した映画。黒澤明が40歳。三船敏朗が30歳です。
黒澤作品としては、余り秀作とは言えず目立たない作品。

メロドラマになりそうな素材を、法廷劇に変えた意図は如何に!!
オートバイ乗りの三船敏朗。
ソプラノ歌唱する山口淑子。
クズ弁護士の志村喬。

オートバイ。ソプラノ歌手。クズ弁護士。病床の美少女(桂木洋子)
絵のモデル(千石規子)
全ての出演者が図式的で凡庸・・・という珍しい黒澤作品。

三船敏朗が幼く見える。
山口淑子が詰まらない大根に見える。
屑を演じる志村喬がやや珍しい役柄。
モデル役の千石規子がひとり生き生きしている。

伊豆の山で写生中の画家(三船敏朗)が偶然ソプラノ歌手(山口淑子)を、
オートバイの後ろに乗せて伊豆旅館まで送る。
入浴後、ベランダで談笑している場面を月刊アムールにパパラッチされる。
アムールはバカ売れ!
怒った三船敏朗はアムールを名誉毀損で訴える。
後半は法廷劇となる。
買収された弁護士・志村喬のせいで弁護は迷走する。

ここで黒澤と三船のファンなら、ソプラノ歌手との愛が芽生え、ことを複雑にするのを期待してしまいます。
ところがそれは全くなし。
肩透かしです。
バイク野郎・三船敏朗が画家・・・そんな、らしくない中途半端な社会派作品でした。
三船敏朗が美男子だと確認して、良いとしますか・・・。

しかしスターを激写するパパラッチと、
珍しい法廷場面に好奇心旺盛な黒澤明の柔軟性を感じもしました。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
琥珀糖

他のユーザーは「醜聞 スキャンダル」以外にこんな作品をCheck-inしています。