自分がこれを劇場で観た時、まだ若かった。だから面白かった印象はあっても“とても良い”という印象はなかった。しかし歳を重ねたいま(言うてもこれを書いてる時点で自分はまだ30代半ばだが)、これを見直したとき、“とても良い”と再認識した次第です。
よくよく思えば、“若い女性が呪いにより90歳の老婆に変貌させられた”という最初のあらすじ。これが若い時の自分の中で誤解を生んでいたように思います。この呪い、実は、
“自分の気持ち(内面)が姿(外見)として現れるもの”ではないか?
それは劇中のソフィーの容姿が目まぐるしく変化している点だ。呪いがかけられた当初はまさに“おばあちゃん”。しかしハウルやカルシファー、マルクルらに出会い、心が動く場面では少し若返ったり、元に戻ったりと変貌していた。だが、自分が年老いた人物と思えば、老婆に戻ったりしていた。そうや、物語の最初、ソフィーの心は動いていなかった。表情も硬かった。まさに“年老いた心”をしていたのではないか?そしてハウルに恋心を抱いていた時だけでなく、家の掃除や景色に心を奪われていたときなど、ソフィーの心が動いた時、感情が表立った時、若くなっていた。
心の弾力を保つことが、若さではないか?
話は変わるが、世界で最も過酷なレース「ダカール・ラリー」に36回挑戦した菅原義正というドライバーがいる。77歳までダカールに挑戦し、84歳となった今アフリカ砂漠のラリーに参加している。幾度かテレビで観たことあるが、容姿は年相応でも心が若さは尋常ではない印象だった。つまり、こういうことやったのではないか?
恋して、笑って、泣いて、怒って、生きる。これがあれば、人間はいつでも若いんやというメッセージではないか。
他方、ただ心の若さを保つだけではないこともこの映画では感じる。一つは「自己決定の大切さ」や。自分の思いを内に抑圧せず、出すことこそ生きることであり、それが若さであるということではないか?そしてもう一つは「戦争は愚の骨頂」という戦争批判や。これに関してはハウルのセリフに激しく同意。
最初観た時は、自分が若かったからわからんかったんやろう。だが歳を重ねた自分が見直したとき、これほど素晴らしい映画だったとは思いもしなかった。
これからの自分、いろんなことに心を動かしていきたい。そして、自分の年齢を理由に抑圧するような考えは持たないようにしたい。そう思える映画です。
改めて、宮崎駿監督の偉大さに触れたと感じました。