紅の豚

ALLTIME BEST

劇場公開日:1992年7月18日

解説・あらすじ

宮崎駿が監督・原作・脚本、スタジオジブリ制作による劇場用アニメーション作品。イタリア、アドリア海を舞台に、豚の姿をした飛行機乗りのポルコ・ロッソと、彼を取り巻く人々との愛と友情の日々を描く。

第1次大戦後のイタリア、アドリア海。暴れまわる空賊相手に賞金稼ぎをしているポルコ・ロッソは、自分に魔法をかけて豚の姿になった飛行機乗りだった。ある時、目障りなポルコを倒すため空賊たちがアメリカ人の凄腕パイロット、ドナルド・カーチスを雇い、ポルコは機体の不具合もあって不本意にもカーチスに撃ち落とされてしまう。幼なじみのジーナの心配をよそに、機体の修理のためミラノにいる昔なじみの飛行機製造工のピッコロを訪ねたポルコは、そこでピッコロの孫娘フィオに出会う。

本作の主題歌を歌う加藤登紀子が、ヒロイン・ジーナ役の声優も務めた。

1992年製作/94分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1992年7月18日

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映画レビュー

5.0 大人になってから見ると、違う

2025年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

子どもの頃はあんまりおもしろく感じれなかったこの作品も、大人になってみると面白さがわかってくる。宮崎駿監督はこの映画を作ったことを後悔しているようなことを口にする時があるのだけど、こういう映画も世の中には必要じゃないかな。
第一次世界大戦から第二次大戦の間のきな臭い時代を舞台に、飛空艇乗りが夢を馳せることができた最後の時代をコミカルかつ、かっこよく描くこの作品、滅んでいくものへの哀悼を詰め込んだ内容と言える。ロマンは現実に滅んだかもしれないが、こうして映画の中にだけでも残っているって、それ自体が生きる希望になると思うのだ。大人にもたまにはユートピアに逃げる必要がある、現実は本当に大変だから。
実際、内容的にはことごとく男のロマンを詰め込んだような内容なのだけど、それがギリギリ気恥ずかしさを回避できているのは、主人公が豚だからだろう。人間のまま展開したら気恥ずかしすぎてダメだったと思う。

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共感した! 2件)
杉本穂高

4.0 【84.1】紅の豚 映画レビュー

2025年12月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

宮崎駿監督作品『紅の豚』は、1992年に公開されたスタジオジブリ作品であり、第一次世界大戦後のアドリア海を舞台に、自由を愛し、自らを豚と化した元エースパイロット、ポルコ・ロッソの孤独と、彼を取り巻く人々の人間模様を描いた作品である。本作は、圧倒的な映像美と個人的情熱の融合により、日本アニメーション映画史における一つの頂点を極めたが、その一方で、古典的な構造の採用によって生じた批評的な課題も内包している。
1. 作品の完成度と主題の深化
本作の完成度は、極めて個人的なテーマ(飛行機への愛、イタリアへの憧憬)を、ファシズムの台頭という普遍的な時代背景に重ね合わせ、**「個人はいかにして、国家や時代の暴力から精神的な自由を維持するか」**という哲学的問いにまで昇華させた点にある。
ポルコの**「豚」という姿は、社会との関わりを拒否し、自らに課したニヒリズムの象徴である。彼は、豚となることで俗世間の「重力」から逃れ、孤独という代償を払いながら、「飛ばねぇ豚はただの豚だ」**という信条の下、空の自由を享受する。この孤独と自由の間の緊張こそが、物語の深淵な魅力を構築している。技術的な面では、飛行艇のダイナミクスと、アドリア海の光の描写は、日本アニメーションの美術水準を飛躍的に高めた、映像表現の金字塔と評される。
2. 監督・演出・編集
宮崎駿監督の演出は、細部に至るまでのリアリティ(エンジンの鼓動、水の飛沫)と、ファンタジー的な飛翔の爽快感を両立させている。編集は、物語の緩急を見事に制御し、アクション、ロマンス、そして回想シーンのメランコリーをシームレスに繋ぎ合わせている。特に、ポルコの過去のトラウマを、台詞ではなく、映像と音楽のみで表現する手法は、卓越した演出の証明である。監督は、自身が愛する飛行機とロマンティシズムを、商業的なエンターテイメントとして成立させることに成功している。
3. キャスティング・役者の演技
キャスティングは、主要キャラクターに個性の強い実力派を配することで、アニメーションキャラクターに稀有な**「大人の重み」**を与えている。
• 森山周一郎(ポルコ・ロッソ):森山の声は、ポルコの孤独な諦念と、決して失われないロマンを完璧に体現している。その低いトーンは、哲学的な皮肉とユーモアを滲ませ、主人公に抗いがたいカリスマ性を与えた。
• 加藤登紀子(マダム・ジーナ):加藤は、大人の女性の包容力と、複数の喪失を経た深い哀愁を声に込め、物語にロマンティックで現実的な基盤を提供している。
• 岡村明美(フィオ・ピッコロ):フィオの若さ、純粋さ、そして技術者としての強い意志を、岡村の溌剌とした声が鮮やかに表現し、物語に未来への希望という対立軸を打ち立てた。
• 大塚明夫(ドナルド・カーチス):ライバルのカーチスに、軽快な楽天家でありながら、誇り高き競争者という二面性を与え、物語のテンポとアクション性を高めている。
4. 脚本・ストーリーと構造的矛盾
脚本は、ポルコの自己解放という内面的なドラマを軸に、海賊との戦闘、フィオとの出会いと成長、そして決闘へと展開する。その構成は、冒険活劇として洗練されている。
しかし、この物語の核心的な課題は、「構造的な甘さ」、すなわち古典的なロマン活劇の定型化にある。特に、クライマックスにおけるフィオを賭けの対象とする展開は、フィオの自立したキャラクター設定と衝突し、前時代的なジェンダー観に甘んじるという倫理的矛盾を露呈させている。このプロットの類型性は、物語の解決を**「男たちの意地」**という単純な価値観に委ねることで、脚本の独創性を損なう要因となった。
これは、監督の**「ノスタルジー」と「現代的な倫理観」が衝突した摩擦痕であり、作品が「完璧な傑作」**の領域に到達することを阻んだ、批評的に看過できない疵である。
5. 映像・美術・音楽
美術監督・男鹿和雄による映像は、アドリア海の光と影のコントラスト、そして鮮やかな色彩によって、絵画的な美しさを極めている。飛行艇のデザインと、それが生み出す金属的な質感の描写は、メカニカルな美学を確立した。
久石譲による音楽は、イタリア風の陽気さと、ポルコの孤独を象徴するメランコリックな旋律を巧みに融合させ、作品の情緒的な深さを最大限に引き上げている。エンディングを飾る**『時には昔の話を』**(加藤登紀子)は、映画の主題を総括し、作品に温かい郷愁の余韻を与えている。
6. 受賞歴
本作は、アカデミー賞や主要な国際映画祭での受賞歴はないものの、第47回毎日映画コンクール日本映画大賞をはじめ、国内で高い評価を獲得しており、その芸術性と大衆性が広く認められている。

作品[Porco Rosso]
主演
評価対象: 森山周一郎(ポルコ・ロッソ)
適用評価点: \bm{\text{A9}}
助演
評価対象: 加藤登紀子、岡村明美、大塚明夫
適用評価点: \bm{\text{A9}, \text{B8}, \text{B8}} (平均 \bm{\approx 8.33})
脚本・ストーリー
評価対象: 宮崎駿
適用評価点: \bm{\text{B+7.5}}
撮影・映像
評価対象: 作画・撮影スタッフ
適用評価点: \bm{\text{S10}}
美術・衣装
評価対象: 男鹿和雄
適用評価点: \bm{\text{S10}}
音楽
評価対象: 久石譲
適用評価点: \bm{\text{S10}}
編集(減点)
評価対象: 瀬山武司
適用評価点: \bm{0}
監督(最終評価)
評価対象: 宮崎駿
総合スコア: [ \bm{84.06} ]

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honey

5.0 おとなのジブリ

2025年9月14日
iPhoneアプリから投稿

楽しい

興奮

ドキドキ

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蜷川吝塀

4.5 やっと分かった

2025年9月1日
iPhoneアプリから投稿

大人になると良さが分かると聞き何度も挑戦してきたが

30代後半

ユーモアも美しさもやっと分かる歳になった。

あれ、余裕でジブリのトップ3に入るなと

セリフもいいですね。

マンマユート団が本当に好き。

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ボタもち

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