至福のレストラン 三つ星トロワグロ

劇場公開日:

至福のレストラン 三つ星トロワグロ

解説

アカデミー賞の名誉賞も受賞しているドキュメンタリー界の巨匠フレデリック・ワイズマン監督が、親子3代にわたりミシュラン三つ星を55年間持ちつづけるフレンチレストラン「トロワグロ」の秘密に迫ったドキュメンタリー。

樹々と湖に囲まれたフランスの村ウーシュにあるレストラン、トロワグロ。建築家パトリック・ブシャンの手による、周囲の自然と解け合うモダンなレストランでは、オーナーシェフ3代目のミッシェルと4代目のセザール、そしてスタッフたちのあくなき食への追求が日々つづいている。

メニューが創造される瞬間、厨房での調理、食事風景をはじめ、市場や、オーガニックの農園、牧場、チーズ工場へ赴き、人と自然が共存するパーマーカルチャーに取り組む姿などを通して、創業以来94年間、家族で始めたレストランがなぜ変わることなく愛されつづけてきたのか、その秘密をカメラがとらえていく。

2023年製作/240分/G/アメリカ
原題または英題:Menus Plaisirs - Les Troisgros
配給:セテラ・インターナショナル
劇場公開日:2024年8月23日

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映画レビュー

4.5超一流のレストランはこうして価値を維持していく

2024年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

楽しい

興奮

94歳の今も好奇心でいっぱいのフレデリック・ワイズマンが、同じく今年で創業94年、ミシュランの三つ星を獲得してから55年になるフランス、ロワール県にあるレストラン、トロワグロにカメラを持ち込む。

上映時間は今回も240分と長尺だが、それには理由がある。オーナーシェフと各部門の担当者が綿密に打ち合わせる新シーズンの献立の中身、躍動的な仕込み、ミリ単位で位置を決めていくテーブルセッティング、価格高騰に苦しむソムリエたちのワイン選び、客の好みを確認する予約担当の気配り、等々。レストランであればどこでもやっているような準備作業が、見たこともないような高いレベルで行われている。目指すのは変わらぬ超一流なのだ。いつも情報量がいっぱい詰まったワイズマン作品は、料理と相性が良かったのだとつくづく思う。次々と登場する人物の名前と肩書きを字幕で一切紹介せず、画面を見ていればそれが誰だか分かる仕組みになっているところも、映画的かつ合理的だ。

そして、トロワグロと日本料理の繋がりが明らかになるところで感動しない日本人はいないだろう。これは、別に食通でなくても、一流とは何か?サービスとは何か?がよく分かる食にまつわるドキュメント。忙しない日常をいっとき忘れて、案内されたテーブルについてみてはいかがだろう。

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清藤秀人

5.0人は、物作りの現場を見ることがこんなにも好きだってこと。

2024年10月14日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

先週、東京の とあるレストランの、楽しみにしていた予約をキャンセルした。
苦労して半年前に取った予約だった。
連れの友人の体調不良が理由で、どうにも仕方がなかったのだが、直前のキャンセルでもあり全額の弁償となった。

料理人は職人だ。
僕は職人への最大限のリスペクトをもって、その聖域であるダイニングに招き入れられる許しを得たいと願う立場。
電話口で平謝りに謝り、厨房へのお詫びも言付けて、結局とんでもない金額が弁済で飛んでしまったけれど、これで再度のチャレンジへの門戸は残してもらえるならば、安いものだと思っている。
かつてはソムリエやギャルソンを夢見た僕なら、なおさらのこと。

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パリの南。山ふところの三つ星レストラン「トロワグロ」。

手仕事を映すドキュメンタリーはとても面白い。
こんなに長尺の映画になっても、なぜだろう、ワクワク感が止まらず、ずっと退屈せずに観ていられるものだ。

「この手のドキュメンタリーは、なぜ飽きないのか」、
これをわかり易く分析してくれた人がいる。
つまり、
観光地に行くとお土産屋さんがたくさんあって、ガラスケースの中にその土地伝来の素朴な「こけし」などが並んでいるのだが、
冷やかしに店に入ってきた客たちは大抵はそこは素通りだ。「こけし」を買うために財布の紐を緩めたりはしない。意中の品は、家族や職場へのお土産のお菓子とか、せいぜいキーホルダーくらいのものだろう。中学生なら店頭の木刀だ。
でも店の奥では一箇所、人だかりがする場所がある。それは回転旋盤機と よく手入れをされたノミで、職人が角材から「こけし」を削り出し、その横ではもう一人が墨や紅の細筆で目鼻立ちを描いていく=この「実演工房」の一角だ。

人は、物が作られていく様子を見る事がこんなにも好きなのだ。
旅先で、その職人さんの技術に感嘆し、手元をじっと見つめ、惚れ込んで買い求めたこけしは、もう先ほどのショーケースのこけしとは違う物だ。
職人の息と、見学するこちら側の息使いが重なって(息を止めて) 、そこに生まれる「モノ作り現場」の面白さ。一期一会の出会いが、あの実演販売には起こっているからかも知れない。

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インドからやってくる旅行客を案内するツアーコンダクターの悩みは
「味がない!」と彼らが騒ぐことらしいね。
カツオ出汁と、土鍋をくぐらせた ほのかな利尻昆布は、スパイスの国からの来客には、確かに難しいのかも知れない。
結局、ツアコンは日本でもインド料理店を慌てて探す羽目になるのだと聞いた。

昨今
「移民にフランス料理をさせるサクセスストーリー」は大流行なのだが、僕はあれはないなと思っている。
だから申し訳ないが、まったくあのたぐいには興味が湧かない。
厨房での下働きならともかく、食材、ソース、温度に 香辛料に ドレッセに、サービス。
料理は血だし、文化なのだし、その味覚の伝統は生まれた時からその風土に馴染み、その場所に育っていなければ「フランス料理」も「和食」」も、実現するはずはないと思うから。
彼らが独立すれば、味付けは早晩エスニックに戻ってゆくだろうし、多国籍理がそこには完成するだろう。
僕はカリフォルニア・ロールは要らない。

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トロワグロの現在のシェフ=ミシェルと、同じく料理人になった二人の息子。そして妻と娘。
一家で営むトロワグロは、オーベルジュだったのですね!

長男セザールと父は本店でオーソドックスなメニューに挑み続け、次男ルネは隣村の別の店でシェフを務めながら意表を突いた新作を試す。🇺🇦

キッチンの光景はもとより、献立作成のための「川魚の種類」と「アーモンドペースト」にこんなにもこだわった 冒頭からのディスカッション。
食材を仕入れる朝市や、牧場や、チーズ工房や、ブドウ畑、そしてワイン醸造所での「シェフと提携先のオーナーたちとの丹念なやり取り」=人間関係が、ここまでかと驚くほどに、じっくりとフイルムに記録されます。

◆BGMは一切なし。

そしてダイニングを回ってのオーナーとお客たちとの語らいの深さ・・
客席に通される前に「お客とスタッフが顔見知りになる大切な意味のために」大人も、そして親に連れてこられた子どもたちも、料理人の顔と厨房の様子を見せてもらえる。

客ごとの好みや、アレルギーや、ペスカタリアンの有無を一晩に50客、変更に次ぐ変更まで、すべてを頭に入れている有能なホールスタッフ。
ギャルソンたちは「グレーのニットベスト」がとても可愛らしい。
セルヴーズ=女性スタッフは、細みの黒いドレスで真っ赤なチューリップの花瓶の前を通る。

ハラスメントをいさめ、穏やかな言葉使いで (「ルール」を守ろうではなく)、「仲間を守ろう」と勧めるあの社員ミーティングも良かった。参考になった。

厨房シーンも、有りがちな怒声とかつり上がった目が何処にもなく、もちろん視聴率を稼ぐためのドラマ仕立ての「皿を落とすシーン」とか、「客とのトラブル」等のヤラセの脚色も無い。
プロたちを写すのにヤラセは要らない。

◆料理よりも、人が写っている

・【仔羊の脳みそ】:Tête de veau (テット・ド・ヴォ)の下処理を失敗した若者に対して、厨房が殺人的な時間であるにも関わらず!彼を伴って厨房の一隅にゆっくりと座り、二人一緒にラ・ルース料理辞典とエスコフィエ を、“もう一度学ぶために” じっくり読み合わせするシェフの姿・・
・【腎臓のソテ】に合わせるパッションフルーツ・チリソースを試作した料理人に対しては、最大限のねぎらいと「とても美味しい」との褒め言葉。完食。

これぞ親子三代で、56年にも渡って三つ星を獲得している、その実力。その余裕なのでしょう。

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◆ナレーションさえ無い

今回の鑑賞、
映写は 途中の5分間のインターバルを挟んでの長丁場でした。
見終わったあとの充足感の理由はこうでした
つまり、三つ星のあのレストランを訪れるという事は、有機体=ミシェル・トロワグロ氏の店と、あの人となり に会いに行くという事だったのですよ。

料理よりも、人そのものが写っていたのです。
説明がいらなかった。
いろいろと、納得しかありませんでした。

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長い映画なので
東座の社長さんは上映まえに館内を回り、
・この映画では臭いを出したくないから飲食は我慢して欲しい旨を説明し、
・お客さんたちには「より座り心地の良い席」への移動を勧め、
・いつもの定位置に陣取る僕には「靴を脱いで足を乗せられるマット」を、ウインクして そっと出して下さったんです。
・ひざ掛けのサービスも有ります。

いつもはニコニコと丸椅子に座っていらっしゃる社長のお母さまも、別人かと思うほど機敏に接客 (=元料理人でいらっしゃる) なさっていました。

手作りチケットの裏面には、社長合木こずえさんオススメのオーベルジュ・レストランの名が3つ、書かれてありました。
「ポトフ 美食家と料理」の上映の時には、この映画館は、町内のビストロと組んで「ポトフコース」のコラボレーションもしてくれた。

映画館も、人だ。 と思いました。

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きりん

4.0エンタメとして観ても面白い

2024年9月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

前に観たワイズマン作品は《ニューヨーク公共図書館》で、それも面白かったんだけど、そこまでじゃなかったんだよね。
今作は面白かった。

たぶんトロワグロの店主に注目したつくりになってるからだと思うんだよね。
《ニューヨーク公共図書館》は組織が何をやってるかって感じだったんだけど、今作はトロワグロが何を考えてるかみたいに観えるの。

特にストーリーとかなくても、一人の人間を淡々と描いていくと、なんかそこにドラマチックなものが生じるなと思ったよ。

4時間で長いし、価格も2,800円で高いけど、現代の教養としてワイズマンは観た方が良いと思ったな。

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Scott

ワイズマンはやっぱり面白いけれど、

2024年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ターゲットとなる場所を定めたら、そこに働く人々・集まる人々・関わる人々・生じた出来事すべてを記録し尽くそうとするドキュメンタリーの巨匠フレデリック・ワイズマンの今回の舞台は、ミシュランの三ツ星を55年間守り続けるフランスの名レストラン・トロワグロです。そして、このレストランの裏も表も描き尽くすので4時間もの作品になってしまったというのはいつものワイズマン流。更に、大きな出来事が起きる訳でもないのに、「へぇ~」とか「ほぉ~」と言いながらついつい観てしまうのもやはりワイズマンでした。

 お客さんそれぞれに向けたメニューを一つ一つ検討する真剣さや、新しい料理についてシェフがあれこれ議論する様や、素材それぞれの生産者にまで訪ねて吟味し、或いは自分達で生産する職人気質などは確かに興味深いのですが、僕は、

 「へぇ~、フランス料理ではマトウダイがそんなに頻繁に用いられるのかぁ」
 「カエル料理もお馴染みなんだなぁ」
 「『活き締め』『紫蘇』などの言葉はそのまま『イキジメ』『シソ』の日本語のまま通じるのか」
 「醤油や味噌も使ってるよぉ」
 「肉は食べずに魚だけ食べる『ペスカタリアン』という人々が居るのかぁ」
 「5千ユーロ(80万円)のワインなんてあるの?」

なんてことに事に感心し、アッと言う間の4時間でした。93歳になってもワイズマンはやっぱり面白いなぁ。

 ・・と締めたかったのですが、たった一つ気になる事。これまでのワイズマンの取り上げたテーマ、ボストン市庁舎でも、ニューヨーク公共図書館でも、ジャクソンハイツでも、英国ナショナルギャラリーでも、映画を観たら「一度行ってみたいな」という気になったものでした。しかし、今回は「トロアグロに行こう」とは思えませんでした。それは、このレストランが結局は「大金持ちの社交の場」に見えたからです。8万円近くするコース、シングルでも5万円近くするホテルには気後れして近づけそうにありません。ワイズマンにとってはいつも通り「興味ある場所にカメラを向けた」に過ぎないのかも知れませんが、今回はなぜこんな金ピカな所だったのでしょう。

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La Strada

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