コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第216回
2013年3月1日更新
第216回:どこよりも早い2014年のアカデミー賞予想
第85回アカデミー賞が大きな番狂わせもなくあっけなく終わってしまったので、すでに気持ちは来年のアカデミー賞に切り替わっている。たいていのアカデミー賞狙いの作品は年末に劇場公開されるし、そのほとんどはまだ製作中だから、まだ1本も見ていない状況だけれど、スタッフやキャスト、物語設定を確認しながら、あれこれ想像するのはとても楽しい。そこで今回は、来年のアカデミー賞で話題になりそうな作品を挙げてみることにした。
まず、注目したいのは「アルゴ」でプロデューサーとしてオスカーを受賞したジョージ・クルーニーの新作2本だ。彼がメガホンを握る「ザ・モニュメンツ・メン(原題)」は、第2次世界大戦中、ナチスドイツによって盗まれた美術品を奪回する任務を負った専門家チームの活躍を描くストーリーで、史実に基づいたアカデミー好みの娯楽映画になりそうだ。クルーニーをはじめ、ダニエル・クレイグ、マット・デイモン、ケイト・ブランシェット、ジャン・デュジャルダンという豪華キャストの共演も注目だ。
クルーニーがプロデューサーとして参加する「オーガスト:オーセイジ・カウンティ(原題)」も、アカデミー好みの作品だ。ピューリッツァー賞受賞のブロードウェイ劇の映画化で、メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ベネディクト・カンバーバッチ、ユアン・マクレガーが共演。監督は、「ER 緊急救命室」の製作総指揮を務めたジョン・ウェルズ。
ダニエル・デイ=ルイスに次いで、2度のアカデミー賞主演男優賞に輝いているトム・ハンクスも、2つの注目作品に出演している。ミュージカル映画「メリー・ポピンズ」の舞台裏を描く「セイビング・ミスター・バンクス(原題)」(ジョン・リー・ハンコック監督)において、ハンクスはなんとウォルト・ディズニー役に挑戦。ポール・グリーングラス監督がメガホンを握る「キャプテン・フィリップス(原題)」では、ソマリア海賊の人質となったコンテナ船の船長を演じている。いずれも実在の人物であることから、演技に注目が集まることになりそう。
「ジャンゴ 繋がれざる者」ではアカデミー賞にノミネートされなかったレオナルド・ディカプリオだが、今年は2つの新作を抱えている。「華麗なるギャツビー」(バズ・ラーマン監督)と、マーティン・スコセッシ監督との5度目(!)のタッグとなる「ザ・ウルフ・オブ・ウォール・ストリート(原題)」だ。オスカー初受賞となるか注目だ。
女優では、「グレース・オブ・モナコ(原題)」(オリビエ・ダアン監督)でグレース・ケリーを演じるニコール・キッドマンと、「ダイアナ(原題)」(オリバー・ヒルシュビーゲル監督)で故ダイアナ妃に扮したナオミ・ワッツが注目を集めそうだ。
好きな映画作家の新作も相次いで公開される。コーエン兄弟の音楽映画「インサイド・ルーウィン・デイビス(原題)」をはじめ、ジェイソン・ライトマン監督の「レイバー・デイ(原題)」、アルフォンソ・キュアロン監督の「グラビティ(原題)」、アレクサンダー・ペイン監督の「ネブラスカ(原題)」などなど。
今年も楽しい映画生活が期待できそうだ。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi