コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第196回
2012年9月7日更新
第196回:2012年夏の大作映画総まとめ!
9月の第1月曜日はレイバーデイという祝日で、日本における勤労感謝の日のようなものだ。たいていの学校ではレイバーデイの翌日から新学期が始まるため、夏の終わりを告げる日として知られている。そして、映画界では、5月に開幕した夏の大作映画シーズンの終わりを意味するのだ。
今夏もアメリカでは大作映画が立て続けに公開されたが、果たしてどんな映画がヒットしたのだろうか? Box Office Mojoによると、2012年の夏の全米興行ランキングは以下の通りである(9月4日時点)。
1. 「アベンジャーズ」 6億2032万ドル
2. 「ダークナイト ライジング」 4億3331万ドル
3. 「アメイジング・スパイダーマン」 2億5981万ドル
4. 「メリダとおそろしの森」 2億3243万ドル
5. 「テッド(原題)」 2億1612万ドル
6. 「マダガスカル3」 2億1477万ドル
7. 「メン・イン・ブラック3」 1億7885万ドル
8. 「Ice Age: Continental Drift」 1億5614万ドル
9. 「スノーホワイト」 1億5511万ドル
10. 「プロメテウス」 1億1263万ドル
ざっと見てわかるのは、アメコミ映画(「アベンジャーズ」「ダークナイト ライジング」「アメイジング・スパイダーマン」)と、CGアニメ(「メリダとおそろしの森」「マダガスカル3」「アイス・エイジ4」)の強さだ。逆に、ウィル・スミスの「メン・イン・ブラック3」を除けば、高額の出演料を手にしたビッグスターの出演作が見あたらない。ジョニー・デップの「ダーク・シャドウ」やトム・クルーズの「ロック・オブ・エイジス」、アダム・サンドラーの「That’s My Boy」、ベン・スティラーの「The Watch」などはすべて圏外である。彼らの観客動員力が落ちているのか、あるいは作品の質が伴わなかったためかどうかは不明だが、気になる現象だ。
また、今に始まったことではないが、オリジナル作品が極端に少ない。ほとんどが続編やスピンオフ、リブートと呼ばれるリメイクで、完全なオリジナル作品は「メリダとおそろしの森」と「テッド」しかない。僕としては、オリジナリティに満ちたコメディ「テッド(原題)」が世界で4億ドル近い大ヒットとなってくれたことがとてもうれしい。こうした作品がもっとつくられるようになってくれるといいのだが、リスクを避けたいスタジオが知名度のある作品を優先するのも理解できる。「テッド(原題)」にしても、すでに続編製作が決定したようだし。
さて、これから芸術の秋。アカデミー賞に向けた良作がつぎつぎと公開されることになる。個人的には、ポール・トーマス・アンダーソン監督の新作「ザ・マスター(原題)」や、ベン・アフレック監督・主演の「アルゴ」、ライアン・ジョンソン監督の「ルーパー」、スティーブン・スピルバーグ監督の「リンカーン」などに期待している。この場でどんどんご紹介していくつもりなので、お楽しみに。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi