コラム:編集長コラム 映画は当たってナンボ - 第3回
2008年6月27日更新
第3回:「インディ・ジョーンズ」銀メダル確実。今年の夏は北京五輪VS「ポニョ」
「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」が順調にスタートを切った。オープニングの成績は、先行上映の貯金を合わせて興収14億円という今年公開の映画で最高のスタート(ちなみに、先行上映の貯金がなければ、「ライラの冒険」から「今年最高」の座を奪うことは不可能だった)。この先行と公開2日間の数字を見る限り、最終興収50~60億円あたりが予測されている。
ここで、今年の夏休み映画市場を眺めてみよう。まずは、宮崎アニメ「崖の上のポニョ」がラインナップのど真ん中にデンと鎮座している。映画業界の期待を一身に集める宮崎アニメは、この夏の映画の強敵、北京オリンピックに対する最大の刺客でもある。オリンピックやサッカーのワールドカップ、プロ野球の日本シリーズといった大きなスポーツイベントがあると、映画の興行はもろに影響を受けるものだが、こうした国民的スポーツイベント相手でも、国民的映画なら十分戦える。
参考までに、過去の宮崎アニメの興収をお伝えすると、04年の「ハウルの動く城」が196億円、01年「千と千尋の神隠し」が304億円、97年「もののけ姫」が193億円とまさにモンスター級。宮崎駿の長男で映画監督としては素人の宮崎吾朗が、06年に作った「ゲド戦記」ですら興収76.5億円を稼いでおり、宮崎アニメはまさに大ヒット確実の国民的映画と言っても過言ではない。今年の夏休み映画が興行収入で競ったなら、表彰台の真ん中、金メダルは「ポニョ」でまず間違いないのである。
では、これに続く銀メダル候補は何だろう? これが今回の「インディ・ジョーンズ」というのが事情通たちの一致した見方だ。まず、洋画の中では話題性、実績、大作感などでもっともポテンシャルが高く、興収50億円以上は最初から確実視されていた。先週・今週のオープニング記録を見る限り、「インディ」のパフォーマンスは予想通りで、銀メダルもほぼ手中に収めたと言える。
ところが、その次にくる銅メダル候補となると、これが混戦模様でなかなか読みにくい。当初我々が期待していたのは、「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟による「スピード・レーサー」。兄弟のブッ飛んだ映像センスは健在で、懐かしの「マッハGoGoGo」のテーマ曲もふんだんに使われているなど日本色も濃厚で、表彰台の一角を狙えるかと思われた。しかし、5月に公開された全米での壊滅的な不入りのせいで、一気に圏外へ消えそうな状況である。
かくして、ナンバー3の座は熾烈な戦いとなりそうだ。まず、洋画では「ハンコック」にチャンスが出る。日本では絶大な人気を誇るウィル・スミス主演作である点はポイントが高い。だが、「町の嫌われ者で、落ち目のスーパーヒーロー」という微妙な設定が果たして受けるのか、また、公開時期が夏休みギリギリの8月30日である点がマイナス要因。そして、日本映画では「花より男子ファイナル」に注目が集まる。マツジュン、小栗旬ら今をときめくイケメンたちを並べ、東宝とTBSがガッチリ手を組んで勝負に出る。6月28日公開だが、直前の前売り券の売れっぷりが凄い。ここに来て大爆発を予感させているが、興収40億円以上稼ぐようなことになると、銅メダルの可能性はかなり高い。だが、40億円に届かなければ、例年の実績から言って「ポケモン」がこの位置に来るはずだ。これ以外にも、「20世紀少年」「セックス・アンド・ザ・シティ」「ハムナプトラ3」「カンフー・パンダ」あたりも上を狙ってくるだろう。
いずれにせよ、映画人たちのこの夏の共通の願い、それは、「北京オリンピックなんて盛り上がって欲しくない」ということで間違いない。
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi