第32回東京国際映画祭、グランプリはデンマーク映画「わたしの叔父さん」
2019年11月5日 19:41
[映画.com ニュース]第32回東京国際映画祭のクロージング・セレモニーが11月5日、東京国際フォーラムで行われ、各賞が発表された。最高賞にあたる東京グランプリ/東京都知事賞は、フラレ・ピーダセン監督によるデンマーク映画「わたしの叔父さん」が受賞した。
今年のコンペ部門には115の国と地域から1804本が応募され、14作品が正式出品。栄冠を勝ち取った「わたしの叔父さん」は、美しいデンマークの農村風景の中で、酪農家として生きる若い女性クリスと体の不自由な叔父の姿を描いた作品。審査委員長を務めたチャン・ツィイーは、「この映画は、詩のような語り口で、我々に穏やかに物語ってくれました。監督は抑制的で、繊細なカメラワークをもって、忘れ去られる人間の情感をとても力強く表現しました」と評していた。
主演のイェデ・スナゴー、プロデューサーのマーコ・ロランセン氏とともステージに上がったピーダセン監督は「心臓がバクバクしています。(本作は)インデペンデントの小さな作品。少人数のキャストとクルーで撮りました。本当に光栄な賞です。コンペに選んで頂けただけで、私たちは喜んでいたんです。その時は盛大に祝って、次の日に二日酔いになったほど」と思わぬ結果に驚きを隠せない。審査員や観客、ロランセン氏への感謝の言葉を述べ、涙を浮かべているスナゴーを見ると「アイデアの段階から参加し、色々な意味でサポートしてくれた最高のパートナー。ここにいらっしゃる監督の作品に、彼女を“貸し出す”ことはできます。でも、私から奪わないでください(笑)」と深い絆を示してみせた。
「ハリー、見知らぬ友人」で第26回セザール賞の最優秀監督賞を受賞したドミニク・モル監督のフランス映画「動物だけが知っている」は、観客賞と最優秀女優賞の2冠を獲得。登壇したキャストのドゥニ・メノーシェは、観客賞ではお馴染みの法被を「体が大きすぎるから着られない……」という理由で手に持ち「日本は“太陽の昇る国”だと言われますが、いつも光が射していて、素晴らしい価値を見出す国なんだと思います」と言葉を紡ぐ。ナディア・テレスツィエンキービッツが最優秀女優賞に輝いた理由は「登場時間は短いが、インパクトのある演技だった」というもの。ビデオメッセージでは、受賞の一報を知らされたテレスツィエンキービッツが声を震わせながら感動する様子が映し出されていた。
イラン映画「ジャスト 6.5」は、最優秀監督賞と最優秀男優賞に。男優賞のトロフィーを手渡されたナビド・モハマドザデーは、場内にいた名匠アミール・ナデリの名をあげて「彼がいなければ、私たちは映画を愛することができなかった。彼の映画を見ることで、今まで映画を作ることができました。愛してます」と最敬礼。一方、サイード・ルスタイ監督は「私の国には、アッバス・キアロスタミ、アミール・ナデリといった巨匠たちが存在しています。今回、黒澤明の国から賞を頂けたことがとても嬉しい」と喜びをにじませた。
日本映画スプラッシュ部門の作品賞は、森達也監督が東京新聞社会部記者・望月衣塑子氏に迫ったドキュメンタリー「i 新聞記者ドキュメント」に。「近所のレンタルビデオ店にDVDを返却するような恰好で来てしまった」と発言して笑いを誘った森監督は、原一男監督作「れいわ一揆」も例に出し「ドキュメンタリー、面白いです。メディアが、色々な意味で閉塞状況になってしまっている状況のなかで、ドキュメンタリーが新たな領域をどんどん見せてくれている。そのような時代になっている」と分析。やがて「ドキュメンタリーはもちろんですが、今後はドラマも撮るつもりです。2、3年後は、この映画祭にドラマで参加したいと思います」と宣言していた。
全受賞結果は以下の通り。
▼観客賞:「動物だけが知っている」(ドミニク・モル監督)
▼最優秀脚本賞:「喜劇 愛妻物語」(脚本:足立紳)
▼最優秀芸術貢献賞:「チャクトゥとサルラ」(ワン・ルイ監督)
▼最優秀男優賞:ナビド・モハマドザデー(「ジャスト6.5」)
▼最優秀女優賞:ナディア・テレスツィエンキービッツ(「動物だけが知っている」)
▼最優秀監督賞:サイード・ルスタイ監督(「ジャスト6.5」)
▼審査員特別賞:「アトランティス」(バレンチン・バシャノビチ監督)
▼東京グランプリ/東京都知事賞:「わたしの叔父さん」(フラレ・ピーダセン監督)
▼グランプリ:「Down Zone」奥井琢登監督(大阪芸術大学)
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