戸田奈津子氏、ハリソン・フォードの人柄に思い馳せる「自分のことを絶対にスターと言いません」【ワーナー・ブラザース映画ファンフェスティバル】
2025年12月22日 21:30

12月31日で日本での劇場配給業務を終了するワーナー ブラザース ジャパンが送るメモリアルイベント「ワーナー・ブラザース映画ファンフェスティバル」内の上映作品「ブレードランナー ファイナル・カット」が12月22日、東京・丸の内ピカデリーで上映され、字幕翻訳家の戸田奈津子氏、フリーアナウンサーの笠井信輔が来場した。
映画上映前に行われたトークイベントに登壇した戸田は「今日のような素晴らしい会に、でもちょっと寂しい会にお呼びいただきましてありがとうございます。このような幕切れになってしまい、とても寂しいのですが、今日は懐かしい日々を思い出したいと思います」と残念そうな表情で挨拶した。

大のSF映画ファンとして知られる笠井も「僕もこの映画を何回観たか分からないです」と切り出すと、会場に向けて「今日はじめて『ブレードランナー』を観る方は?」と質問。手を挙げる観客の姿を確認すると、「配信も含めて、スマホで見ないで大正解ですよ。こんな大きな画面で観られるチャンスはなかなかないので。皆さんと一緒にこの後観られるのをとても楽しみにしております」と会場に呼びかけた。ちなみに会場には10回以上観たという熱烈なファンの姿もあった。
ワーナーとの付き合いを尋ねられた戸田は「本当に長いお付き合いで。半世紀になるかもしれません。字幕もやらせていただきましたし、撮影現場に行って取材するという楽しい旅もずいぶん行かせていただきました」と述懐。最初に手がけたワーナー映画は「マッドマックス」だったそうで、「メル・ギブソンがまだ若い青年だった頃でした。オーストラリアの砂漠の真ん中に行ったりして、いろいろな思い出がございます」と懐かしそうに振り返った。

戸田自身は本作の字幕を「やっていなかったと思う」と語るが、「ブレードランナー」という映画に関しては、「リドリー・スコットの美意識、彼の面目躍如となる映画で、私の大好きな一本でございます」と語る。
主演のハリソン・フォードとの付き合いは、1978年の「スター・ウォーズ」以来、実に47年近くに及ぶ。「無名時代から大スターになるまでの過程をこの目で見たのは、彼が一番」と切り出した戸田は、フォードが「スター・ウォーズ」で来日した当時に思いをはせる。「最初に彼が来日した時は、まだ映画が公開される前だったから。二人で銀座をフラフラ歩いても誰も振り向かない。一緒に天ぷらそばを食べたんですけど、全然誰も気付かない。それがあれよあれよという間に大スターですからね」。
だが世界的な大スターとなった後も、その誠実な人柄は当時から全く変わらなかったという。「彼は自分のことを決してスターともアクターとも呼ばないんです。口癖は『アイ・アム・ストーリーテラー(私は物語を語る人)』。自分をそういう風に捉えていて、スターなんて絶対に言いません。本当に真面目で誠実な方です」とその素顔を称賛した。

今作は、ネオンきらめく日本の夜の繁華街の風景をスタイリッシュに描き、サイバーパンク文化に大きな影響を与えた。スコット監督の通訳を担当したこともある戸田は「リドリー・スコットは美意識の人。映像の人なのね。インタビューでも、ストーリーの話に持っていこうとしても、色や構図の話しかしないわけですよ。ここはオレンジにしたかったとか、本当にアーティストの目を持っているんです。例えば彼が大阪を撮った『ブラック・レイン』も、われわれが知っている大阪じゃないんですよ。あるいは『ハンニバル』のフィレンツェもそう。いつも彼のアーティストの目を通した映像なのね」とその類稀なる感性を評価した。
さらに笠井は「今日観ていただくのはファイナル・カット版ですが、実は『ブレードランナー』には5つのバージョンがあるんです」と切り出すと、「なぜこんなにあるかというと、結局スタジオとリドリーがもめたことが原因なんです」と説明。「主人公であるデッカードは人間なのか」といった命題から、全編にただよう暗いムード、そして暗い画面などに言及しながら、いくつものバージョンがつくられた本作がたどった経緯について解説していく。
そんな本イベントは予定時間を超えるほどに白熱したものとなったが、その中で最後のコメントを求められた戸田は「私は映画人生が長いですが、一番ショックだったのはフィルムがなくなってデジタルになったこと。それから今回、ワーナーのようなメジャーがなくなっていくこと」と切り出す。「ワーナーも(20世紀)フォックスもみんななくなっていくじゃないですか。自分が育ってきた映画がその会社の作品だったので。手足をもぎ取られるような感じがしてすごく寂しいです。映画が今後また復興して、私が愛した素晴らしい映画の時代が来ることを待ち望んでいます。皆さまもぜひそう思っていただきたいです」と会場に呼びかけ、この日のイベントを締めくくった。
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