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「恒星の向こう側」中川龍太郎監督に聞く、女優・河瀨直美【第38回東京国際映画祭】

2025年10月25日 14:00

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中川龍太郎監督
中川龍太郎監督

第38回東京国際映画祭が、10月27日から開幕する。コンペティション部門に選出された個性あふれる世界各国の作品15本には、日本映画が2本含まれている。そのうちの1本である「恒星の向こう側」は、中川龍太郎監督が福地桃子を主演に迎えて描いたオリジナル作品。公式上映を前に、中川監督に話を聞いた。

第27回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門で、中川龍太郎監督の「愛の小さな歴史」(14)が選出されてからおよそ10年。自身の体験を基に描いた「走れ、絶望に追いつかれない速さで」(15)を続いて発表し、連続で映画祭のスプラッシュ部門に選ばれた。

その後も映画制作は順調で、モスクワ国際映画祭、台北映画祭、釜山国際映画祭などにも出品している。中川監督にしか表現できない心打たれるその世界観は、海外でも評価されたのだ。今回は自身の3部作の最終章とも言われ、喪失をテーマに、母と娘、その娘と夫との関係を、全2作同様、感動的に描写している。

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――今回のこの作品では、河瀬(直美)監督の役が重要な位置を占めます。河瀬さんのキャスティングは最初から考えていましたか?
中川龍太郎監督(以下、中川監督):河瀬監督には、2020年に公開された僕の映画「静かな雨」で俳優として出演して頂きました。まだその頃はお付き合いがなかったのですが、それ以降、「なら国際映画祭」に呼んで頂いたり、河瀬さんが総監督した『東京2020オリンピック SIDE:A/ SIDE:B』で、自分も水泳担当の監督をやらせてもらったりして、結構お世話になったのです。
俳優として「静かな雨」に出演して頂いた時、実は僕の人生で一番感動した演技でした。その素晴らしさに、河瀬さんの演技をもっとメインに立てた映画を作りたいという思いがずっとありました。今回の題材を映画にするにあたって、母親役は河瀬さんしかいないと、お願いした次第です。
――中川監督の映画は、風景がとても素晴らしいと思いました。今回は北海道の野付郡などが舞台になっています。ロケハンに関してはどのような感じですか?
中川監督:今までほとんど自分の実体験で感じたものを舞台にしています。友人が自殺したことを題材にした「走れ、絶望に追いつかれない速さで」を監督した直後に、北海道を一人旅しました。釧路と根室辺りを旅してるときに、野付半島という場所とたまたま出会って、その景色に驚き、あの世みたいな感じの風景で圧倒されました。ですので、いつかこの場所で撮りたいと思い続けてきたのです。
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――この作品は3部作の最終章と言われています。
中川監督:「走れ、絶望に追いつかれない速さで」と「四月の永い夢」(18)は、人の喪失を題材にしていて、この作品もそういう意味で喪失を巡る物語です。今までも喪失をテーマにしていましたが、直接的な人の死というのはこれが3本目になります。3部作という言葉はプロデューサーが使用していて、僕も違和感がなかったという事が一点、もう一点は、寛一郎さんが演じたキャラクターが、「走れ、絶望に追いつかれない速さで」の仲野太賀さんであったり、「四月の永い夢」の朝倉あきさんであったり、精神的な延長上にあるキャラクターなのです。柔らかい憂鬱の中にいて、本当に思っていることを表現できない存在として考えていまして。
今までは、自分を重ねたキャラクターを真ん中に置いていました。しかし今回は、その視点を外したところで寛一郎さんのキャラクターが重要だと思いました。つまり、当事者として体験する立場から観察する立場への変更ですね。20代前半に撮っていたのは、親友の死に対して一番の当事者だった。それが35歳になった今、親友の死に対して少し距離ができた。当事者から観察者になるという、その変更を描きたいと思いました。
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――中川監督の映画では、喪失と再生がテーマになっているとよく言われます。
中川監督:そうですね、自分が描きたいコンセプトは、喪失と再生というセットで語られがちですよね。でも、あくまで自分の体験の中で感じる範囲のことに留まりますが、再生があるから喪失の価値があるわけではなく、喪失そのものに価値があると僕は考えます。
例えば、成功と失敗も「失敗は成功の元」と言われますが、別に成功のために失敗があるのではなく、失敗そのものに価値があると思うのです。というのは、その失敗から多くのもの、人生の本質を学べるのではないでしょうか。喪失も同じで、喪失そのものに価値があり、そのことに気づくことで初めて深い意味で再生できるのだと思うのです。
であるからこそ、この映画では喪失のバリエーションが多いのかもしれません。それは、河瀬直美さんが演じるキャラクター、福地桃子さんが演じるキャラクター、そして寛一郎さん。三者三様に、その喪失の意味を見出していくという様子を、この映画では描きたいと思ったのです。
取材構成:小出幸子

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