映画.comでできることを探す
作品を探す
映画館・スケジュールを探す
最新のニュースを見る
ランキングを見る
映画の知識を深める
映画レビューを見る
プレゼントに応募する
最新のアニメ情報をチェック

フォローして最新情報を受け取ろう

検索

「ルノワール」あらすじ・概要・評論まとめ ~うつろう1980年代を背景に、少女のまなざしを通じて描く“大人になること”~【おすすめの注目映画】

2025年6月19日 10:30

リンクをコピーしました。
「ルノワール」
「ルノワール」
(C)2025「RENOIR」製作委員会+International Partners

近日公開または上映中の最新作の中から映画.com編集部が選りすぐった作品を、毎週3作品ご紹介!

本記事では、映画「ルノワール」(2025年6月20日公開)の概要とあらすじ、評論をお届けします。


画像2(C)2025「RENOIR」製作委員会+International Partners
【「ルノワール」あらすじ・概要】

長編初監督作「PLAN 75」が第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でカメラドール(新人監督賞)の次点に選ばれるなど、国内外で高い評価を得た早川千絵監督の長編監督第2作。日本がバブル経済のただ中にあった1980年代後半の夏を舞台に、闘病中の父と、仕事に追われる母と暮らす11歳の少女フキの物語を描く。2025年・第78回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、早川監督にとってデビューから2作連続でのカンヌ映画祭出品となった。

1980年代後半。11歳の少女フキは、両親と3人で郊外の家に暮らしている。ときに大人たちを戸惑わせるほどの豊かな感受性を持つ彼女は、得意の想像力を膨らませながら、自由気ままに過ごしていた。そんなフキにとって、ときどき覗き見る大人の世界は、複雑な感情が絡み合い、どこか滑稽で刺激的だった。しかし、闘病中の父と、仕事に追われる母の間にはいつしか大きな溝が生まれていき、フキの日常も否応なしに揺らいでいく。

マイペースで想像力豊かなフキが空想にふけりながらも、周囲の大人たちの人生に触れていく様子を通して、人生のままならなさや人間関係の哀感を温かなまなざしとユーモアをもって描く。フキ役はオーディションで選出され、撮影時は役柄同様に11歳だった鈴木唯。フキの母・詩子を石田ひかり、父・圭司をリリー・フランキーが演じるほか、中島歩河合優実坂東龍汰らが顔をそろえた。


【「ルノワール」評論】
●うつろう1980年代を背景に、少女のまなざしを通じて描く“大人になること”(執筆:高森郁哉)
画像3(C)2025「RENOIR」製作委員会+International Partners

泣き顔の幼児たちが次々に映るビデオ。じっと見つめるのは、われらが主人公フキ。暗い場所、不穏な空気、いきなり驚きの展開。明転した小学校の教室で、作文を読み終えたフキが口角の片方を少し上げる。どう、驚いた?と言わんばかりに。早川千絵監督の長編第2作「ルノワール」の冒頭はまた、純真無垢な子供をかわいらしく描く単純な映画ではないと宣言する。

主人公が教室で作文を朗読する場面は、本作が影響を受けた映画として早川監督が挙げた3本のうちの1つ、相米慎二監督作「お引越し」からの引用でもある(ほかに「森のくまさん」の輪唱も)。さらに、エドワード・ヤン監督作「ヤンヤン 夏の想い出」からは大人の顔をまっすぐ見つめる子供や階上から落とす水風船、ビクトル・エリセ監督作「ミツバチのささやき」からは少女と見知らぬ年長男性の危うい接近や、彷徨と幻想的な出来事(これは「お引越し」にもあり)など、いくつもの引用が散りばめられている。だが何より重要なのは、これら3作品の子役たちがいずれも驚くほど自然に演じていることで、その点は本作で長編映画初主演を飾る鈴木唯にも共通する。

画像4(C)2025「RENOIR」製作委員会+International Partners

早川監督は、がんを患った父が入院した病院に通っていた子供の頃の印象を起点に、脚本に着手。長編デビュー作「PLAN 75」で高齢者が自死する権利が制度化された近未来という明確なコンセプトに基づき脚本を構成したのとは異なるアプローチを選び、長年蓄積してきたいくつもの断片的なイメージを吐き出し、つなぎ、全体像が見えないまま手探りでテーマを見つけるように書き進めたという。

1976年生まれの早川監督は、自身が11歳だった1987年に映画の時代を設定。ただしこの年の出来事を忠実に再現するのではなく、70年代後半から80年代にかけて起きたことや流行したものをエピソードにからめ、おおよその時代感を醸し出していく。具体的には、著名な超能力者が出演するテレビ番組に象徴されるオカルトブーム、キャンプファイヤーを囲んで子供たちが踊るシーンで流れるYMOの「ライディーン」、伝言ダイヤルなど。大半のロケを行った岐阜市を舞台にしたこともあり、大都市で見られたようなバブル景気の明白な描写はないものの、病院内の展示販売でピエール=オーギュスト・ルノワールの「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」のレプリカにフキが興味を持つ場面で示唆されるように、大衆が洋画を愛好するほど豊かになったことがほのめかされる。その一方で、80年代に起きた神奈川金属バット両親殺害事件や東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件を想起させるテレビのニュースやフキが体験する出来事により、価値観がうつろう時代の不穏さや人々の心の揺らぎを、ブルー基調の画面にほの暗く映し出してもいる。

画像5(C)2025「RENOIR」製作委員会+International Partners

当時を知る観客にノスタルジックな感興も提供しつつ、子供が家族や身近な人々の人生を垣間見てゆるやかに大人になっていく筋は、先述の3作品を反復する。ただしこれら過去作の子供たちに比べ、フキのキャラクター設定には2020年代の視点からのアップデートが加えられたように感じられる。たとえば、英語教室で仲良くなった子(高梨琴乃)の裕福な家に招かれ、家族の微妙な空気を察知したフキが仕掛けること。あるいは、母・詩子(石田ひかり)と仕事上で知り合った御前崎(中島歩)の関係を阻止しようと画策すること。これらのエピソードには、子供らしい純粋さと残酷さを伴いつつ能動的に他者に関わり、状況に関与しようとするキャラクターの新味がある。そんなフキを、鈴木唯が射貫くような強いまなざし、ほっそりした四肢の躍動、馬のいななきの模写にあふれる野性味で、実に印象的に体現した。2013年生まれで撮影時は実際に11歳だったという彼女。願わくばその野生馬のようにしなやかな個性と魅力を保ちつつ、女優として大成することを心から期待する。

執筆者紹介

高森郁哉 (たかもり・いくや)

フリーランスのライター、英日翻訳者。主にウェブ媒体で映画評やコラムの寄稿、ニュース記事の翻訳を行う。訳書に『「スター・ウォーズ」を科学する―徹底検証! フォースの正体から銀河間旅行まで』(マーク・ブレイク&ジョン・チェイス著、化学同人刊)ほか。


早川千絵 の関連作を観る


Amazonで関連商品を見る

関連ニュース

映画.com注目特集をチェック

でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男の注目特集 注目特集

でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男 NEW

【あり得ないほど素晴らしい一作】この映画は心を撃ち抜く。刺すような冷たさと、雷のような感動で。

提供:東映

メガロポリスの注目特集 注目特集

メガロポリス NEW

【映画の“神”が186億円の自腹で製作した狂気の一作】この映画体験、生涯に一度あるかないか…

提供:ハーク、松竹

なんだこの映画!?の注目特集 注目特集

なんだこの映画!? NEW

【異常な超高評価】観たくて観たくて仕方なかった“悪魔的超ヒット作”ついに日本上陸!

提供:ワーナー・ブラザース映画

宝島の注目特集 注目特集

宝島

【あまりにも早すぎる超最速レビュー】すさまじい映画だった――全身で感じる、圧倒的熱量の体験。

提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

映画「F1(R) エフワン」の注目特集 注目特集

映画「F1(R) エフワン」

【「トップガン マーヴェリック」を観た人類におくる】あの“体験”を更新する限界突破の超注目作

提供:ワーナー・ブラザース映画

フロントラインの注目特集 注目特集

フロントライン

【感情、爆発。】日本を代表する超豪華キャスト。命を救う壮絶な現場。極限の人間ドラマ。魂の渾身作。

提供:ワーナー・ブラザース映画

“生涯ベスト級”の声多数!の注目特集 注目特集

“生涯ベスト級”の声多数!

「愛しくて涙が止まらない」…笑って泣いて前を向く、最高のエール贈る極上作【1人でも多くの人へ】

提供:KDDI

ネタバレ厳禁映画の“絶品”登場!の注目特集 注目特集

ネタバレ厳禁映画の“絶品”登場!

【超・超・超・超・異色展開】このカオス、このサプライズの波状攻撃…あまりにも好きすぎた

提供:バンダイナムコフィルムワークス

関連コンテンツをチェック

おすすめ情報

映画.com注目特集 6月18日更新

映画ニュースアクセスランキング

映画ニュースアクセスランキングをもっと見る