“バカの勝利”と“バカのプロット”――アメリカの現政権が引き起こしている騒動で考えたこと【ハリウッドコラムvol.362】
2025年4月8日 10:00

ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリストの小西未来氏が、ハリウッドの最新情報をお届けします。
映画を大量に観てしまっているせいか、現実で起きていることをつい映画に当てはめてしまうくせがある。米政権が引き起こしている一連の騒動をみて、「バカの勝利(Fool Triumphant)」というジャンルを思い出した。これは、「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」という、いまや古典となった指南書で紹介されている物語ジャンルのひとつだ。
「バカの勝利」の典型は、「フォレスト・ガンプ 一期一会」だ。周囲から見下されている負け犬の主人公が、その純粋さや無知ゆえに騒動を巻き起こしながらも、最後には勝利を手にするというパターンだ。「アマデウス」ではモーツァルトという天才が、周囲の常識人を困惑させながら歴史に名を残す。「チャンス」では単純な園丁が偶然に政治顧問となり、その言葉が深遠な知恵として解釈される皮肉を描く。「ブリジット・ジョーンズの日記」もこれになるかもしれない。個人的には大統領の替え玉として雇われたそっくりさんの活躍を描く「デーヴ」がとても気に入っている。
ただ、現政権にこのジャンルは当てはまらない。なぜなら、「バカの勝利」は、最終的には愚か者こそが実は最も賢明だったという逆説を描くからだ。
となると、と考えて、「バカのプロット(idiot plot)」という、身も蓋もないネーミングのパターンだと気づいた。これは、映画評論家のロジャー・エバートが広めた用語で、「関わる全員が愚かでなければ成立しない物語」のことを指す。一人でも理性的に行動する人物がいれば、すぐに解決してしまうようなナンセンスな問題が延々と続いていく。
たとえば、愛すべき「ビッグ・リボウスキ」がそうだ。デュードとウォルターが言われた通りのことをしていれば、あっという間に物語は終わる。だけど、彼らがことごとく間違った選択をするせいで、どんどんこじれていく。同じコーエン兄弟の「バーン・アフター・リーディング」もそうだ。とくにこちらは、CIAの機密資料が入ったCD-ROMをめぐる物語なので、米軍事作戦を漏洩させた「Signal」チャット問題とそのまま重なる。登場人物みんなが愚かで、誰も理性的に行動せず、問題をひたすら複雑化させていく。

いまはアメリカによる相互関税が世界に衝撃をもたらしているが、実は関税に関しては、ちょっと前から80年代の傑作「フェリスはある朝突然に」のワンシーンがバイラル化している。高校で経済学の先生が、「スムート・ホーリー関税法」を解説する場面だ。1930年に施行された関税法によってアメリカは2万品目以上の輸入品の関税を引き上げた。報復関税の影響で、輸出入は落ち込み、世界恐慌をより深刻化させた経緯がある。もっとも映画のなかの生徒たちは、誰も講義の内容に耳を傾けていないが。
現政権は同じ失敗を繰り返そうとしている。歴史を学べなんてそんなハードルの高いことは言わない。せめて「フェリスはある朝突然に」を見直してほしいものだ。
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