映画.comでできることを探す
作品を探す
映画館・スケジュールを探す
最新のニュースを見る
ランキングを見る
映画の知識を深める
映画レビューを見る
プレゼントに応募する
最新のアニメ情報をチェック
その他情報をチェック

フォローして最新情報を受け取ろう

検索

大泉洋、芸能生活30年を迎えて願うこと。そして明かす時代劇への思い【「室町無頼」インタビュー】

2025年1月15日 12:00

リンクをコピーしました。
画像1

俳優の大泉洋が主演するアクション時代劇「室町無頼」が、1月17日から全国で封切られる(IMAX先行公開中)。オファーを受けてから、足かけ8年。コロナ禍での製作延期を経て完成した意欲作で、大泉は時代劇というジャンルに何を思ったか。また、芸能生活30年を迎えて願うことなど、軽妙洒脱な語り口でありながら、真摯な眼差しで語った。(取材・文/大塚史貴、写真/間庭裕基

入江悠監督がメガホンをとった今作の舞台は、垣根涼介氏の歴史小説「室町無頼」(新潮文庫刊)が原作。時は室町、“応仁の乱”前夜の京(みやこ)―――。大飢饉と疫病の連鎖、路上に重なる無数の死骸。そんな混沌の世の中に風の如く現れ、巨大な権力に戦いを挑んだ者たちがいた。蓮田兵衛(はすだ・ひょうえ)。日本史上、初めて武士階級として一揆を起こし、歴史にただ一度だけその名を留める男。彼の元に結集した「アウトロー=無頼」たちの知られざる闘いをドラマチックに描いている。


■オファーのきっかけは三谷幸喜演出「子供の事情」

大泉に熱烈オファーを出したのは、「探偵はBARにいる」シリーズを手がけた須藤泰司プロデューサーによるものだが、原作の世界観をアップデートしたかのような本格的な殺陣・アクションを披露している。大泉が息吹を注いだ蓮田兵衛は、己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぎ、密かに倒幕と世直しの野望を抱く無頼漢で剣の達人という設定。どのようなやり取りを経て、オファーを受けるに至ったのか、改めて聞いてみた。

画像2

「須藤さんは『探偵はBARにいる』で僕を抜てきしてくれて、3本も作るようなシリーズに育ててくれた。僕という人間への愛情も深いわけです。最初のきっかけは、僕が出演した三谷幸喜さんの舞台『子供の事情』でした。面白い転校生のキャラクターではあったのですが、転校前のあだ名が“ちんげさん”だったという(笑)。

非常に爽やかでかわいらしい舞台だったのですが、須藤さん的には『我らが大泉洋を“ちんげさん”とは何事だ!』と思われたようで、わたしに『東映は大泉洋をこう描く!というプレゼンをさせてくれ』といって持ってきてくれたのが、この作品でした。台本を読んだときは、確かにやったことのない役だと嬉しかったことを覚えています。仲間を思い、国を慮って行動していく。すごい役をオファーしていただいたなと思いました」


画像3

23年11月に京都・太秦の撮影現場を訪れた筆者に、室町時代を舞台にした映画作品がほぼ存在しないため苦労はあったものの、図らずも8年近い準備期間が製作にはプラスに働いたと須藤氏と入江監督が前向きな表情で話していたことが印象に残る。

入江「研究者や大学の先生に取材をして調べていくと、意外とアナーキーな時代で封建制度もそれほど確立されていなかったということがわかりました。それで、描く自由度はあるのかなと気が楽になって、『マッドマックス』のような世界観でもいいのかなと舵を切れました」

須藤「文献を相当読み込んでいましたよね」

入江「7年くらい室町や日本の中世についてずっと調べていました(笑)。身分が固定化されていない時代で、江戸時代のような武家社会でもなく、人々が色々な階層を行き来できた時代だととらえています。大泉さん演じる役も階層を明確にし難いけれど、顔が広くて慕われている。その自由度も含めてぴったりだと思いました」

画像4

■改めて時代劇が好きになりました

企画を成立させるために、度重なる製作延期にも決して諦めるという選択肢を持ち合わせていなかったふたりが、大泉の殺陣を絶賛していたことも記憶に新しい。大泉にとっても、太秦の剣会の殺陣師たちと行った厳しい稽古、実現までに8年もかかったことも踏まえ、思い入れの強い作品になったことは想像に難くない。

「時代劇への愛情というか、改めて時代劇が好きになりました。現代劇では描けない熱が詰まっている。リアルといえばリアルだけど、ファンタジーでもある。だって、誰も室町時代のことなんて知らないわけですから。スタッフの皆さんも、そこを楽しみながら作っている。

衣装に関しても、資料はあるんでしょうが工夫しながら遊んでいる。決まりがあるようで、ない。誰も当時の衣装を見た人なんていないわけですし。ヘアメイクディレクターの酒井啓介さんの作り出すメイクの世界もすごかった。現代劇であのメイクだとちょっと違和感がありますが、時代劇というパッケージの中では全てが収まる。時代劇でしか出来ない感情表現というものがありますよね」

画像5

大泉が時代劇映画に出演するのは、「清須会議」(三谷幸喜監督)、「駆込み女と駆出し男」(原田眞人監督)、「新解釈・三國志」(福田雄一監督)、そして今作と4本目になる。個性の異なる監督との仕事を経験したからこそ、現代とは異なる虚しさ、儚さ、潔さに惹かれるものがあると明かす。

「現代よりも死というものが身近ですし、考え方も野蛮といえば野蛮。寿命も今よりも短いし、風邪をこじらせても死んでしまう時代。ましてや武士の世界なんて、簡単に命を捨てないといけない時代だった。大きな決まりがあるから、その中でしか表現できないものがある。『こんなことで死ななきゃいけないの?』っていう。でも僕らは『この時代、この武士は死ななきゃいけないんだ』という不条理な切なさを把握しながら見るわけですよね。美しさといったら語弊があるけれど、虚しさ、儚さ、潔さと言いましょうか、そういう点でも興味深いですよね。もちろんお金も時間もかかるから、昨今は大がかりなものを作り難くなってきているけれど、これからも日本の時代劇が続いていけばいいなあと改めて強く感じました」


画像6
■役者としては、なるべくパブリックイメージなんてものは付けない方がいい

大泉は今作で、パブリックイメージとして定着している“笑い”の要素をほぼ封印して撮影に挑んだ。「僕が常日頃思っているのは、パブリックイメージをいかに覆せる役者になっていくかということ」と意に介しておらず、「役者をしていくうえでは、バラエティをしなきゃいいって話なんですよ。ただ、それが僕のやりたいことなのかと言うと、そうじゃない」と胸の内を聞かせてくれた。

「バラエティはやりたいんです。どうにもこうにも、人を笑わせたいという思いがある人間なもので。底抜けにバカバカしいことをして笑わせながらも、今作の兵衛のような役を演じたときには切り替えて見てもらえる役者になりたいと思ってやっています。どうしても人にはパブリックイメージが付いて回ります。亡くなられた高倉健さんや田村正和さんのようなスターは、私生活が全く見えなかったじゃないですか。役者としては、なるべくパブリックイメージなんてものは付けない方がいいんでしょうね」

画像7

今作の見どころのひとつとして、一揆のシーンにおける大泉と堤の一騎打ちは素早い展開の殺陣が繰り広げられて圧巻だ。撮影当時、大泉は50歳(現在51歳)、堤は59歳(現在60歳)だが、しっかりと土台を築き上げてきた者同士の対峙に思わず前のめりになってしまう。50代を迎え、何か変化があったか聞いてみると……。

「体のガタがひどいんですよ(笑)。僕の体が50歳を機に生まれ変わっちゃったというか…。僕への体の信号がすごかった。『今までのやり方では無理なんです、そんな働き方はもう出来ないんです』って、ずっと僕に言ってくる。デイシーンの後、夜中までナイトシーンはもう撮っちゃダメなのね、急激なダイエットもダメなのね、みたいな。50歳になった途端にでしたから。50歳の体に慣れるのに、まだ時間がかかっている感じです。自分の体に合ったトレーニングをしていかないと、いよいよ待ったなしなんだなと痛感しています」


画像8
■30年間やってきたからこそ出てくる僕の良さが伝わればいいなと祈るばかり

大泉が50代ということに驚きを禁じ得ないが、芸能生活30年ということを考えれば、さもありなん。30年続けてきたからこそ見えてきたことは、どのようなものなのだろうか。

「30年前はもちろん何も見えていなかったんだろうけど、僕は一度始めたことを辞めない人なんですね。なんとなく続けることに意義があるっていう人なんで、役者とバラエティをずっと続けてきたからこそ出て来るものに期待するような気持ちなんです。何か見えるようになっているかは分からない。おそらく色々なものが見えているんでしょうが…。ただ、30年間やってきたからこそ出てくる僕の良さみたいなものが映っていればいいな、見てくれる方々に伝わればいいなと祈るばかりです。

辞めるのは簡単じゃないですか。劇団にしたって揉め事なんてよくあるし、人気があるうちに辞めちゃえば『TEAM NACSってすごい人気の劇団があったんだ』って伝説なり、思い出になるのも良いこと。でも、30年やってきたから出せるものもあるわけで、それは時間にしか作り出せないもの。もう一度、今から何かを初めて30年というのは相当難しい。80歳になっちゃいますから。せっかく続けてきたものを辞めるのはもったいない。僕にも30年続けてきたからこそにじみ出る味わいがあるといいなあ」

画像9

年齢を重ねることで、「欲」は出て来るものか問いかけてみると「役者をやっている以上は、ただただ面白い作品に出合いたいって思っているかな。自分で面白いものを作り出せるほどのエネルギーがあればいいんだろうけどね。好きなクリエイターと作るという道もあるんだろうけど、一方で馬券や宝くじみたいな予想外の出合いにも期待しちゃうんです」とほほ笑む。

「僕はギャンブルと呼ばれるものはほとんどしない。ただ、役者の仕事にはどうなるか分からないというギャンブル性がある。そして結果がついてくる仕事ですよね。ドラマは視聴率、映画は興行。そこには多分にギャンブル性がある。他でギャンブルはしないけれど、仕事のギャンブルには勝ちたいね。そして、さらに面白い作品に出合いたいという欲は、手放すことがないでしょうね」

日本映画界にとって、もはや欠かすことのできないポジションを確立した大泉が60代、70代と年輪を重ねることでどのような芝居を見せてくれるのか興味は尽きない。

画像10

フォトギャラリー

大泉洋 の関連作を観る


Amazonで関連商品を見る

関連ニュース

映画.com注目特集をチェック

関連コンテンツをチェック

シネマ映画.comで今すぐ見る

ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件

ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件 NEW

トニー・レオンとアンディ・ラウが「インファナル・アフェア」シリーズ以来、およそ20年ぶりに共演した作品で、1980年代の香港バブル経済時代を舞台に巨額の金融詐欺事件を描いた。 イギリスによる植民地支配の終焉が近づいた1980年代の香港。海外でビジネスに失敗し、身ひとつで香港にやってきた野心家のチン・ヤッインは、悪質な違法取引を通じて香港に足場を築く。チンは80年代株式市場ブームの波に乗り、無一文から資産100億ドルの嘉文世紀グループを立ち上げ、一躍時代の寵児となる。そんなチンの陰謀に狙いを定めた汚職対策独立委員会(ICAC)のエリート捜査官ラウ・カイユンは、15年間の時間をかけ、粘り強くチンの捜査を進めていた。 凄腕詐欺師チン・ヤッイン役をトニー・レオンが、執念の捜査官ラウ・カイユン役をアンディ・ラウがそれぞれ演じる。監督、脚本を「インファナル・アフェア」3部作の脚本を手がけたフェリックス・チョンが務めた。香港で興行ランキング5週連続1位となるなど大ヒットを記録し、香港のアカデミー賞と言われる第42回香港電影金像奨で12部門にノミネートされ、トニー・レオンの主演男優賞など6部門を受賞した。

HOW TO HAVE SEX

HOW TO HAVE SEX NEW

ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。

セルビアンフィルム 4Kリマスター完全版

セルビアンフィルム 4Kリマスター完全版 NEW

内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。

痴人の愛 リバース

痴人の愛 リバース NEW

奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。

卍 リバース

卍 リバース NEW

文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。

愛のぬくもり

愛のぬくもり NEW

「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。

おすすめ情報

映画ニュースアクセスランキング

映画ニュースアクセスランキングをもっと見る

シネマ映画.comで今すぐ見る

他配信中作品を見る