ロバート・ロドリゲス監督“絶対騙される映画”を徹底解説 “ジョーク”に気づけば「ヒントを見つけることができる」
2023年10月25日 10:00
ベン・アフレックが主演を務める「ドミノ」(10月27日公開)は、監督・脚本のロバート・ロドリゲスが“構想20年”をかけた意欲作だ。
描かれるのは、行方不明になった娘を探す刑事ローク(アフレック)が“絶対に捕まらない男”を追い、事態が二転三転していく様子。さらに、ラストには、想像の3周先を行く驚愕の展開が待ち受けている。
瞬きさえも許さない挑戦的なストーリーと革新的な映像――。“巨匠ヒッチコック”の映画術を継承して生み出した本作の“こだわり”とは? ロドリゲス監督がオンラインインタビューを通じて語ってくれた。
元々ヒッチコックの大ファンでした。彼の作品は全く予想もつかないようなひねりがたくさんあり、タイトルもワンワードが多いです。
ちょうど20年前くらいに「めまい」がリマスターリリースされ、改めてヒッチコック作品の価値がディスカッションされていた中で、この作品もミステリーでワンワードのタイトルで、誰もが想像しないことがたくさん起きる作品だと思いました。
もしヒッチコックがあと10年生きていて、ワンワード・タイトルの作品を製作するとしたら、どのようなものを作るか考えてみました。自問すると人間とは考えを深めてしまうもので、そこで思いついたのが「Hypnotic」(=「ドミノ」の原題で催眠術を意味する)でした。
そして「Hypnotic」について考えた時に、敵が全く捕まえることが出来ない存在のことを示しているのではないかと思いつきました。車や口座を盗まれても、彼らが見せたいものしか見せていないので、こちらは気づくことができない。“完全犯罪”のようなキャラクターたちがいて、それを追う刑事がいたらどうか、と。そして実はそのような「Hypnotic=催眠術師」はこの世界に存在しているが2%くらいしかいないとして……と構想を広げていきました。
オープニングの銀行のシーンやベン・アフレックが演じるロークが劇中で“はさみ”を彼女に向けるシーンは、20年前のまだ脚本を書いていない最初のブレストの段階で想起していました(“はさみ”はヒッチコックの「サイコ」を喚起させる小道具)。つまり最初は何がきっかけかというと、アルフレッド・ヒッチコックのファンだったからなんです。
アイデアを出してから簡潔な作業はしていました。最初の12年間でストーリー自体は変わっていきましたが、主人公や構想の時点で思いついた銀行のシーンなどは残っていました。
特に後半とエンディングについては、私自身が人生というものの経験をもっと積まなければ書けなかったと思います。なぜならば、この映画の究極のテーマは“家族の絆”だからです。
その部分に到着するまでに、当初の自分の人生経験では足りなかったと感じています。
ですので、2015~17年のバージョンの脚本というのは撮影後の完成稿とは違うものになっています。
変更点に関する不安は一切ありませんでした。それこそ、かつてよりも今の方がこの作品は通じるもが多くあるのではないかと考えています。
今ほど“見ているものが本当なのかも分からない”という時代もなかったですし、興味を燃え立たせるものがあり続けたので、これだけ長い年月をかけることができました。
また最近だとIP(知的財産)などと言われることが増えて、オリジナル作品を製作するのが難しいですよね。ですので、私の中でオリジナルの企画が生まれた場合、映画作家として作らざるを得ないわけです。
私は映画を作ることが大好きですが、昔はマジックも好きでした。というのも、マジックを見た時にみんなが驚く感じが凄く好きなのです。本作も同様で、観た時には映画作りをしているとは思われないかもしれませんが、実は映画作りをしています。
ある意味、映画を作る、観てもらうという行為は、みなさんを催眠にかけている(=「Hypnotized」)ことと同じだと思っています。そして映画の場合はみなさんチケットを買ってきてくださるので、「催眠術にかかりたい」と思って観に来ているのではないかと考えています。
役者がいて、脚本があるのも分かっているとは思いますが、映画館のスクリーンに映し出される世界を信じて、笑ったり、怖がったり、面白いと思って友達に伝えてくれたり、人によってはそのキャラクターの存在が自身の中で大きくなって、壁にポスターを貼って崇拝していることもあるわけです。
映画作りをしている作品だと思われないものを作るということは、私にとっては大きな魅力のひとつです。
観ている方がキャラクターと同じ立場になって、催眠下に置かれて疑問を持ち、色々なサプライズを受けます。それを味わってほしいと感じました。
やはりヒッチコックの作品に一番の影響を受けています。その他に、視覚的にもセリフ的にも、私の作品「デスペラード」と同じジョークが出てきたりします。あるいは過去作で出てきたような設定や舞台も確認することができます。実はそのジョークに気づいた方は“これって虚構の世界なのでは?”と考え始めて、映画の中に隠されたヒントを見つけることができるのです。
つまり、皆さんが目にする世界は、「Hypnotic=催眠術師」によって作り上げられており、きっと映画が大好きな人がプログラミングしたので、映画的な要素、セリフや小道具などが多く入っているという仕組みなのです。
ポスターも最高で大好きなのが、デビッド・クローネンバーグ監督の「スキャナーズ」です。
映画とポスターのイメージは少し違うのですが、設定とは作り手に場所を与えてくれます。クリエイティブにフリーになれることは凄く魅力的だと思っています。
特に映画館の場合は、皆さんは自分の席に座ってトライするような状態でいてくださるので、ルールも物理的な法則も関係なく、何でも作ることが出来ることにワクワクします。そういう作品に魅力を感じますし、好きなのです。
最高でしたね。それこそヒッチコックの映画は、大スターを起用しながらも演じるキャラクターが「everyman=普通の人、一般の人」というのが多かったです。
今回も同じ方程式を用いていまして、それこそ「めまい」のジェームズ・スチュアートだったり、「北北西に進路を取れ」のケイリー・グラントもそうですが、演じているキャラクターは一般人なわけです。だからこそ観客も、彼がスターだと認識はしているはずですが感情移入がしやすいのではないかと思います。
まさにベン・アフレックは、その資質を持ち合わせていて、大スターでありながらも家族想いなところも伝わってきます。そして自分の娘を絶対に取り戻すといった決然とした思いを抱えている刑事という側面と、家族をとても愛してやまない柔らかい側面の両方を演じてくれるのも分かっていました。
彼は人としても最高なのですが、もうひとつ良かったのが、お互いに90年代の低予算映画のような、手作りでスピーディーに撮る作品に慣れていたことでした。
コロナ渦で20日間の撮影時間が短縮してしまった中で、昔風に挑戦することになり、彼も大いに乗ってくれました。自分たちのルーツでもあるインディーズ的にどんどん撮っていき、2人とも楽しみながら撮影することができましたし、前向きに乗ってきてくれたことにも感謝しています。特に役者としては1日に演じなければならないシーンが多く、感情も多く表現しなければならないので、かなり大変だったと思います。ただ逆にそれが良いエネルギーとして、この映画から伝わってくるのではないかと考えています。
日本には、3月に訪れています。その時、改めて日本が「アリータ バトル・エンジェル」を愛してくれていると肌で感じました。
私も、ジェームズ・キャメロンも作る気満々で、しょっちゅう「アリータ」の話をしています。権利関係で少し色々あったのですが、ジェームズ・キャメロンの「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」も上手くいきましたし、私もまだ「スパイキッズ」の新作が控えていますので、終わったらジェームズとしっかりと話していきたいと考えています。
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