2倍の予算をかけた覚悟の大作「もののけ姫」 賛否が分かれた事前の評判と「生きろ。」のコピー
2023年7月21日 21:00
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日本テレビ系「金曜ロードショー」で、7月21日午後9時から「もののけ姫」が放送されます。
同作は1997年に公開され、興行収入201.8億円(※2020年の再上映分ふくむ)の大ヒットを記録。宮崎駿監督とスタジオジブリが、より多くの人に知られるようになった記念碑的な作品です。
「もののけ姫」は、当時のスタジオジブリにとって倍の制作予算、作画に2年をかけた大作で、作品の内容的にもヒットするかどうか分からない挑戦的な内容でした。これまでに刊行された関連書籍を参照しながら、本作のトリビア、あらすじ、主な声優一覧をご紹介します。
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「耳をすませば」までのジブリ作品は、制作予算10億円、作画期間1年が目安だったそうですが、「もののけ姫」では予算20億円、作画期間2年と最初からスケールの大きな作品を目指していました。
鈴木敏夫プロデューサーは、社員化したスタッフが成長して力を発揮でき、これまでの実績によって関係各社から最大の協力を得られるであろう今のタイミングが、当時50代半ばだった宮崎監督が本格的な活劇をつくる最後のチャンスになるかもしれないと考え、宮崎監督に「いつもの倍のお金をかけましょう」と提案したことを、著書「天才の思考 高畑勲と宮崎駿」でつづっています。
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実際の制作費は、最終的に24億円までふくらみました。「ALL ABOUT TOSHIO SUZUKI」には、制作の終盤、鈴木プロデューサーが関係各社に制作予算が超過した報告と出資の増額を提案する文書が一部黒塗りで掲載されています。
宣伝にもこれまで以上に力が入れられ、10億円かけた配給宣伝費、大がかりなタイアップ、テレビ局や出版社と協力した施策などで、配給収入(※興行収入から映画館の取り分を差し引いた配給会社の取り分)60億円を目指していました。配給収入が60億円いかないと制作費がペイしないという高いハードルで、当時のジブリ作品で配給収入が最高額だった27.1億円の「紅の豚」の倍以上の売り上げをあげなければいけませんでした。
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近年のスタジオジブリは3DCGの「劇場版 アーヤと魔女」も制作していますが、ジブリ作品と言えば手描きのアニメーションというイメージをもっている人が多いと思います。そんなスタジオジブリが、本格的にCGやデジタル技術をとりいれたのが「もののけ姫」でした。95年にジブリ内にCG部が新設され、菅野嘉則氏、百瀬義行氏、片塰満則氏、井上雅史氏の4人が参加しました。ジブリの短編「ギブリーズ episode2」(「猫の恩返し」と同時上映)などを手がけた百瀬氏は、12月15日に監督最新作「屋根裏のラジャー」(スタジオポノック制作)が控えています。
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「もののけ姫」のCGは、主に手描きアニメでは表現が難しいところに使われました。序盤のアシタカとタタリ神の戦いで、アシタカの右腕にまとわりつくタタリ神の“ヘビ”や、アシタカが射た矢がタタリ神の目に刺さる“ヘビ”は3DCGで描かれています。また、神々しさと禍々しさをあわせもつディダラボッチ(シシ神の夜の姿)の体内で輝く小さな粒にも、パーティクルというCGの表現が用いられています。
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大ヒットして今では名作として親しまれている「もののけ姫」ですが、公開前の評判は賛否両論でした。試写を見た関係者からは、「この作品は子どもが観るには難しすぎる。10億円いかないんじゃないか」という声がでたことを、鈴木プロデューサーは「天才の思考 高畑勲と宮崎駿」で振り返っています。
手や首が飛ぶ過激なシーンが用いられた特報、予告編で用いられた「人はかつて、森の神を殺した」というフレーズは、これまでのジブリ作品とは違うことを事前に知ってもうらうために打ちだしたものでしたが、これに対しても関係者のあいだでは不安の声があがりました。また、作中にハンセン病と思われる人々が登場することについても、差別問題の観点からテレビで放送できないのではないかという声がでたそうです。
糸井重里氏が苦心してつくったコピー「生きろ。」も、哲学的すぎて女性や子どもが映画館にこないのではないかという関係者からのクレームが出ましたが、鈴木プロデューサーは映画にも哲学的なメッセージが必要な時代だと考え、「これでいくしかない」と思ったそうです。
公開から4半世紀以上が経ち、現在では世の中に広く受け入れられた「もののけ姫」は、意図的に大きな覚悟をもって制作され、公開直前・直後には賛否両論の意見がありました。同作の制作や宣伝の苦闘ぶりは、約6時間半におよぶドキュメンタリー「『もののけ姫』はこうして生まれた」(ディレクター:浦谷年良)に記録されています。
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