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「ブラックナイトパレード」。クリスマス映画のような季節モノの作品は、いつ公開するのが正解か?【コラム/細野真宏の試写室日記】

2022年12月24日 08:00

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「ブラックナイトパレード」
「ブラックナイトパレード」
(C)2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 (C)中村光/集英社

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)


今週末の12月23日(金)から福田雄一監督作品「ブラックナイトパレード」が公開されます。

本作は、「週刊ヤングジャンプ」で連載が始まり、その後「ウルトラジャンプ」に移籍して連載されている、中村光の原作マンガの映画化です。中村光×福田雄一というコンビは、かつて実写ドラマ版「聖☆おにいさん」で実現しています(福田雄一が監督・脚本を兼任)。

題材が「クリスマス」と「サンタクロース」なので、公開のタイミングとしてはバッチリだと言えます。

ただ、「公開タイミングではベスト」と言えるこの公開時期は、「1週間後の週末では正月に変わってしまう」ため、世の中の雰囲気も大幅に変わるのがリスク要因にも感じます。

では、本作のような季節モノの映画は、いつ公開するのがベストなのでしょうか?

これは、割と昔から続いている課題で、これまでも「バレンタイン」、「クリスマス」、「大晦日」など、特定の時期を扱った作品が多くあります。

基本的な傾向としては、本作のように、そのイベント周辺での公開となることが多いようです。

例えば冬季オリンピックを描いた「ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち」は、日本で行われる夏のオリンピックを意識して2021年6月18日に公開しています。

いずれにしても、舞台となるイベントに関連した直前辺りを公開時期とするのが「定石」のようです。

とは言え、映画を見るかどうかは、世の中の空気感に左右される面があるため、邦画、洋画を問わず、この特定の時期を全面に押し出した作品は、あまりヒットに結び付かないという結果となっているように感じます。

画像2(C)2006 フジテレビ 東宝

そんな中で、異例だったのは2006年に公開された三谷幸喜監督作品「THE 有頂天ホテル」でしょう。

この作品は、「大晦日」というピンポイントな舞台設定。ところが、1月14日という「大晦日」後に公開するという特殊な日程を組み、興行収入60.8億円という大ヒットを記録しました!

これは、純粋に「THE 有頂天ホテル」の出来が良く面白い作品だったというのが最大の理由ですが、公開日程を映画で描かれる設定の前ではなく後にすることで「時期」を意識させない安定的な興行をすることができたという実例になったと言えるでしょう。

一方で、映画の舞台となる「最も旬となる時期」に公開する手法は、必ずしも成功が難しいとも言い切れません。

なぜなら、映画の興行は「初速」でかなりの「寿命」が決まってしまう面があるからです。

そこで、「最も旬な時期」に公開日をぶつけることで「初速」が跳ねれば、最終的な興行収入にも大きく反映されることになり得るわけです。

このように、息の長い展開を目指す作品なのか、旬な時期に大きく稼ぐことを目指す作品なのか、というのが公開日を決める指針になっているのかもしれません。

画像3(C)2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 (C)中村光/集英社
画像4(C)2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 (C)中村光/集英社

さて、本作で注目すべき点は、やはり福田雄一監督作品ということでしょう。

直近の福田雄一監督作品は、2020年7月17日公開の「今日から俺は!!劇場版」で、“新型コロナウイルスの影響下という大きな不安要素があった最初の夏休み期間”で興行収入53.7億円を叩き出し、映画業界に勢いを与える作品となりました!

そして、2020年12月11日に「新解釈・三國志」が公開され、ドラマ版の映画化でもないのに、最終的には興行収入40.3億円という大ヒットを記録しました。

本作は、これらの福田雄一監督の次の作品となるので、期待が大きくなっているようにも感じます。

ただ、私は、本作の目標興行収入は10億円だと考えています。

「前2作を福田雄一監督作品の通常」と考えるのは、ややハードルを上げ過ぎなように感じているからです。

画像5(C)2020「今日から俺は!!劇場版」製作委員会
画像6(C)2020「新解釈・三國志」製作委員会

まず、「今日から俺は!!劇場版」については、連ドラからの大きな人気があり、しかも、かなり福田雄一監督との相乗効果が高い作品でした。

そして、次の「新解釈・三國志」については、当時の「第103回・試写室日記」でも書きましたが、東宝と日本テレビによる「作戦勝ち」の結果が大きいと考えています。

今日から俺は!!劇場版」は、2019年12月から2020年1月にかけて撮影していて、「新解釈・三國志」は、2019年の4月から5月頃にかけて撮影が行われています。つまり、撮影と公開の時期が逆になっているのです。

これは、東宝と日本テレビが、「今日から俺は!!劇場版」に自信を持っていて、まず「連ドラ効果」で成功しやすいものを先に公開し、その流れで「新解釈・三國志」を成功に導こうとしていたと想定されます。

その流れで、「新解釈・三國志」については映画館の予告編で、メガヒット作「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の上映前での宣伝に加え、かなり長い期間、様々な作品において「福田雄一監督作品」というのをデカデカとアピールした宣伝ができました。

私は、これらの戦略が大いに効果を生み、興行収入40.3億円という大ヒットに結び付いたと考えています。

ここで、冷静に見ておきたい事案があります。「今日から俺は!!劇場版」の前の2020年2月7日に公開された「ヲタクに恋は難しい」。私はとても好きな作品で、よく出来ていたと思いますが、新型コロナウイルスの影響が直撃したとはいえ興行収入13.4億円です。

そして、2018年公開の「50回目のファーストキス」は、興行収入12.6億円、2017年公開の「斉木楠雄のΨ難」は、興行収入10億円、といった感じです。

画像7(C)2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 (C)中村光/集英社
画像8(C)2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 (C)中村光/集英社

ちなみに、個人的に「ブラックナイトパレード」で気になったのは、これまでの脚本は、基本的には福田雄一監督が手掛けていたのですが、本作ではメインの脚本家との共作という形になっていた点です。

内容が面白いかどうかは、おそらく人それぞれだと思いますが、平時の福田雄一監督作品と言えるでしょう。

そのため、本作が成功かどうかを見極める基準は、興行収入10億円を突破できるかどうかだと考えます。

「クリスマス映画」「福田雄一監督作品」という2つの視点から、どういう結果になるのか注目したいと思います!

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