号泣必至!中国で爆発的ヒットを記録した感動作「シスター 夏のわかれ道」監督 「エドワード・ヤン、是枝裕和監督作を何回も見返した」
2022年11月26日 10:00
2021年に中国で公開され、全土を巻き込む社会現象となるほどの爆発的ヒットを記録した感動作「シスター 夏のわかれ道」が公開された。監督は1986年生まれの36歳、イン・ルオシン。中央戯劇学院演劇文学演出科を卒業後、演劇や映画の脚本で頭角を現し、2020年に「再見、少年」で長編映画デビュー、本作が監督2作目となる。日本公開を記念し、イン監督のインタビューとメッセージ動画が公開された。
看護師として働くアン・ランは、医者になるために北京の大学院進学を目指していた。ある日、疎遠だった両親を交通事故で失い、見知らぬ6歳の弟・ズーハンが突然現れる。望まれなかった娘として、早くから親元を離れて自立してきたアン・ラン。一方で待望の長男として愛情を受けて育ってきたズーハン。姉であることを理由に親戚から養育を押し付けられるが、アン・ランは弟を養子に出すと宣言する。養子先が見つかるまで仕方なく面倒をみることで、アン・ランの固い決意が揺らぎ始める。
脚本にこんな描写がありました。弟が姉の部屋の窓に向かって外から石ころを投げ、生かじりの知識でイタズラっぽく大声で曹植の「七歩詩」を暗唱するのです。“豆の茎で豆を煮る。豆は釜の中で泣く。豆も豆殻も根は同じ。どうしていじめるの?”その光景は瞬時に私の脳裏に広がりました。暗闇の中、窓の外では星がきらめき、2人の瞳は見つめ合い互いの心の中を探りあっている。短い時間で2人の間に無数の複雑な感情が湧き上がる。姉も弟も、心の中で密かに問いかけている。“あなたの存在は、自分にとって何を意味するのだろう?”と。このシーンが撮影を決意した決め手です。
ツィフォンとは前作「再見、少年」で一緒に仕事をしたのですが、彼女の強靱さ、感覚の鋭さ、動揺しない所が、アン・ランの不屈の闘志を持ったタフなキャラクターと非常にマッチしていたのです。唯一の懸念は、彼女の年齢が、役柄より5歳以上も若いという点でした。しかしツィフォンと絶えず脚本や役柄についてディスカッションを重ね、徐々にアン・ランに入り込んでいた姿をみて、彼女がこの役を演じきれると確信をしました。キムはオーディション動画を見た時、母親の指示に従いながらしぶしぶ演技している感じでした。しかし、その目はとても澄んでいて、つたない動作の中にみせる自然な姿が、とても印象的でした。面接で彼にゲームの中で演技の練習をさせてみると、非常にリラックスして、反応も素早く、高い集中力を見せました。すべてが素晴らしかったので、大勢の中から最終的に弟役に選びました。彼は撮影時4歳半で、役柄より幼かったのですが、見事に演じ切りました。
参考としたのは、エドワード・ヤン監督の「ヤンヤン 夏の想い出」、是枝裕和監督の「奇跡」「海よりもまだ深く」です。何回も見返しました。
本作は、劇中の人物にとって100日あまりの出来事です。私は最終的にオープン・エンディングを選びました。この結末で私が伝えたかったことは、家族によって心を傷だらけにされ、すでに“家を出る”決断をした女の子の固く閉ざされた心の扉が、歳の離れた弟との新たな姉弟関係によって、わずかに開いたとしたら、彼女はどんな選択をするのだろうか? 最終的な選択は、弟の手を取り、ひとまずその場から逃げ出すことでした。この先の暮らしがどうなるか、私はクリエイターとして、彼女に絶対的な結末を与えることはできません。アン・ ランに、そして観客に伝えたかったことは、世代間の隔たりに痛みは付き物であるということ。そして、我々は永遠に対立しながら、その複雑で親密な関係の中にいるということです。共に生き、折り合う点を探すのか、あるいは消極的になるのか、または反抗して決裂するのか? アン・ランは羽ばたくことができる以上、羽ばたいてほしいと願うと同時に、この残酷で変化の多い世界でも愛を持ち続けて欲しいと願っています。
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