海よりもまだ深く
劇場公開日:2016年5月21日
解説
「海街diary」「そして父になる」の是枝裕和監督が、「歩いても 歩いても」「奇跡」に続いて阿部寛と3度目のタッグを組み、大人になりきれない男と年老いた母を中心に、夢見ていた未来とは違う現在を生きる家族の姿をつづった人間ドラマ。15年前に文学賞を一度受賞したものの、その後は売れず、作家として成功する夢を追い続けている中年男性・良多。現在は生活費のため探偵事務所で働いているが、周囲にも自分にも「小説のための取材」だと言い訳していた。別れた妻・響子への未練を引きずっている良多は、彼女を「張り込み」して新しい恋人がいることを知りショックを受ける。ある日、団地で一人暮らしをしている母・淑子の家に集まった良多と響子と11歳の息子・真悟は、台風で帰れなくなり、ひと晩を共に過ごすことになる。主人公の母親役を樹木希林が好演し、共演にも真木よう子、小林聡美、リリー・フランキーら豪華な顔ぶれがそろう。
2016年製作/117分/G/日本
配給:ギャガ
スタッフ・キャスト
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2022年11月20日
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2022年7月26日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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予告編で樹木希林さんが目立っていたため、「海よりもまだ深」い母の愛がテーマなんだろうと勝手に想像し、ならば共感できる点は皆無と思っていましたが、もっと幅広い視点で人生を見つめている作品でした。
子供達のために、必死で家庭を守ってきた母親。家族のために、好まない職に就いているとみられる義息子。価値観が異なっても、高年収の男との再婚を考える元嫁。息子に会うには元妻に養育費を渡さなければならないのに、ギャンブルがやめられず常に金欠状態の男。
幼い頃に描いた未来を生きている大人はどれほどいるのか。
やりたい仕事を得て、成功している人はどれだけいるのか。
不幸や破綻を予知できていれば、この相手を選びなどしないのに。
夢を諦め、勝負せず、妥協して、欲しいものを減らし、上手くいかないことも全部包み込んで、「こんな毎日」を生きていく。時折舞い込む小さな喜び、ささやかな嬉しいサプライズが、そんな日々を少し楽しくしてくれる。
訴えかけてくるテーマは、とても現実的です。ただ、「(人生何かを)諦めたら幸せになれる」という表現は悲しいと思いました。同じようなことですが、「足るを知った時、幸せに気付く」という受け取り方のほうが、最期自分の人生に納得がいくのではないかなという気がします。
各家庭には色々な事情があることは承知していますが、要は「愛と金」の二つが必要なのですよね。。
愛と金、共に満ち足りた家庭が理想ですが、どちらかもしくは両方が足らない…(と思う)ことが多くて苦労するのでしょうか。
共に絶望的に欠如していれば、人らしく生きることができず、道を踏み外しかねないのかも知れません。
壊してしまったらそう簡単には直らないと知っているからこそ、何でも無駄にせず丁寧に扱い、丁寧に生きている母親役が、樹木希林さんによく合っていました。自然と涙を流すシーンではもらい泣きしました。それとあの微妙にくたびれた冷蔵庫。ああいう小道具は、わざと汚して雰囲気を出すのでしょうかねぇ。汚れ具合がすごくリアルでした。
金遣いの荒い父親そっくりになってしまった良多。どうしようもない男だけれど、親孝行な一面もあるし、性格の悪い人ではない。良多に借りがあると言った町田は、彼に救われたことがあったのだろう。きっと死んだ父親もどこか憎めなかったから、母親は別れずに連れ添った。聞けば父親は息子の自慢をしながら商店街を歩いていた。親の本音を知り、良多はすずりを質に入れずに形見にしたのですよね。
真悟にとって、元の家族3人で過ごした台風の夜は一生の思い出になります。雨に濡れた宝クジはプライスレス。
良多がすずりを、真悟が宝クジを。最後の電車内では、共に父親から譲ってもらった品を大切そうに眺めていました。
こんなはずじゃなかった人生でも、愛おしくなる瞬間が、あなたにもわたしにも訪れますように。
「花も実も付かないんだけどね…。(略)何かの役には立ってんのよ。」
「栴檀は双葉より芳し」
「そんなに簡単になりたい大人になれると思ったら大間違いだぞ。」
「全部ひっくるめて、あたしの人生やから。」
「誰かの過去になる勇気を持つのが、大人の男っていうもんだよ。」
「いなくなってから、いっくら思ったってダメよ〜。」
「いつまでもなくしたもの追いかけたり、叶わない夢見たり、そんなことしてたら、毎日楽しくないでしょ。幸せってのはね、ん〜、何かを諦めないと手にできないもんなのよ。」
「人生なんて単純よ。」
2022年7月25日
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是枝監督の真骨頂を感じた映画でした
日本的な貧しさと人間模様。
今を愛することを説いて貧しいながらも人生を楽しんでいる樹木希林と、受け入れることがてきず沼にハマっていく阿部寛。
ラストの公園のシーンや、「前に進ませてよ」と元妻に言われるシーンはグッと来ましたね。
それにしても演技が神がかっていました。
冒頭の樹木希林と小林聡美の掛け合いは圧巻です。演技の域を越えて、憑依しているというか、本物の会話を切り取ったようでした。
万引き家族へ続いていく作品の高まりを感じました。
2022年7月16日
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鑑賞方法:VOD
見る側の心境や体調によって見え方が変わる鏡のような作品。
素晴らしいですね。
何度も見てしまう。