物件紹介からわずか半年! 清澄白河エリアに個性的な映画館「Stranger(ストレンジャー)」がオープン!
2022年9月27日 13:00

9月16日、墨田区の菊川駅(都営新宿線)から徒歩1分の場所に、ミニシアター映画館「Stranger(ストレンジャー)」がオープンした。オーナーでチーフ・ディレクターの岡村忠征さんに開業のきっかけ、同館の今後などを伺った。
岡村さんは映画美学校を受講後、映画館や配給会社でのアルバイト、撮影現場の制作部スタッフなどを経てデザイン事務所を設立。一般企業のブランディングなども手がけるようになり、複数の会社を経営するまでに業務を拡大した。しかし、コロナ禍によって仕事の選択と集中を模索していた2021年11月、たまたま入ったミニシアターから刺激を受ける。「出歩く機会も減って、近所の行きつけのお店に通ううちに、店員や常連さんと交わす会話に心地よさを感じていたところ、そんな雰囲気を持った映画館を作ってみたい」と思うようになったという。

まずは知り合いの映画監督を通じて興行や配給の関係者、映画評論家などを紹介してもらい、お客同士やスタッフとが交流したり語り合えるようなスタイルに対してリサーチを重ねた。ほとんどの劇場が「映画を観る」空間づくりに特化している中、岡村さんの考えたミュージアム型の映画館からギャラリー型の映画館へというアイデアは思った以上の賛同を得た。「色んな人と話をするうちに徐々に自分の中で既成事実化されていきました」。
岡村さんは「実際に物件を探してみよう、相応しい場所はどこなんだろう」と初めは中目黒、青山の近辺をイメージしていたが、なかなか条件に合うものと出会えずエリアを再考。倉庫を再利用したアート空間やコーヒー焙煎所が多く、近年若者の人気を集めている清澄白河に思い至った。そこを中心に物件を当たってみたところ、70年続いたパチンコ屋「菊川会館」の跡地にたどり着いた。天井も高く、映画館の条件もクリアしていて、何よりこの城東地区にミシアターが存在しないことが決め手になった。

今年の3月から物件を探し始め、5月に菊川会館を紹介され、6月には契約して工事開始と目まぐるしいほどのスピード感。アテネフランセにコンサルティングを、一級建築士に設計をそれぞれ依頼、49の座席は閉館した新潟の映画館から譲渡された。クラウドファンディングを立ち上げ、Tシャツなどのグッズを制作。群馬にある敷島焙煎所にオリジナルブレンドを考案してもらい、目黒のカフェ、チェー・バーバーバーがフード・メニューを開発するなど、着々と準備を進めていった。もちろんカフェ単体での利用も可能で、今後はポップアップストアやギャラリーとしての利用も提案したいという。フルタイムのスタッフ全員を社員として雇用することで、職場環境の向上と、交流の担い手、作品キュレーターとしての期待もかけている。

「地元の人にも来てもらいたいけど、密着型にとらわれたくなかった」と話す岡村さん。あくまでも上映作品を観に来て欲しいという。こけら落としは当初からゴダールと決めていた。「10代でゴダール作品を観て衝撃を受けた。デザインの道に進んだのもその影響です。だから何が何でも上映したかった」と意気込む。あらゆる人たちに平等に映画を楽しんでもらうため、割引制度や会員サービスは今のところは設けていない。また、会話を楽しんでもらうため、WI-FIの設置も特に考えていないと言う。
一風変わった館名は映画「荒野のストレンジャー」から取られていて、岡村さんも「映画業界のストレンジャー」を自認する意味合いも含まれる。期せずして逝去の報とタイミングが合ってしまったゴダール特集のため、初日から若いシネフィルがつめかけ、満員の回も出る盛況となった。地上波ニュース番組にも取り上げられ、地元密着にこだわらないと言いつつ、自転車に乗ったご近所さんからは「テレビ見たわよ」と声をかけられ、下町的な交流も始まっている。次の特集は10月8日からクローネンバーグの親子上映がスタートの予定。加藤泰や大島渚が好きな岡村さんは、今後は邦画の上映も考えたいと語る。新興の文化エリアに出来た貴重で個性的な小さな映画館、これからも大きな注目を集めそうだ。
J=L・ゴダール 80/90年代 セレクション
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