「ロマンポルノ」初心者もファンも知っておきたい基本事項&楽しみ方
2022年9月1日 22:00
話題の映画を月会費なしで自宅でいち早く鑑賞できるVODサービスシネマ映画.comで開催中の「ロマンポルノ映画祭」https://cinema.eiga.com/romanporno/。映画祭では、映画.comがセレクトしたバラエティ豊かな旧作12本が好評配信中です。
「日活ロマンポルノ」は、日活が1971年に打ち出した当時の映倫規定における成人映画のレーベル。1988年までの17年間に1100本以上の作品が製作され、現在も映画史において、最もセンセーショナルな作品レーベルとして、国内外で高く評価されています。9月からは誕生50周年を記念した新作3作の公開も控え、ますます注目度はアップ。レーベルの特徴、旧作も含めた「ロマンポルノ」の楽しみ方を日活の高木希世江さんに伺いました。
<「ロマンポルノ」初心者もファンも知っておきたい基本事項>
当時メガホンをとったのは、豊富な現場経験を経た、助監督出身の若手たち。量産体制を敷いたことにより、限られた製作費の中で一定のルールを守れば比較的自由に映画を作ることができたため、新しい映画作りを模索。神代辰巳監督、田中登監督らをはじめ、相米慎二監督、石井隆監督ら、80年代以降の日本映画界をけん引した監督陣を輩出しました。
「10分に1回絡みのシーンを作る、上映時間は70分程度」というルールがありました。斬新な性表現から、製作当時から「芸術かわいせつか」の点で議論を呼ぶことも。しかし、日活ロマンポルノは、すべて演技であり、実行為・本番はありません。劇場公開用のフィクション映画として公開当時に映倫審査を受けた成人指定の作品群です。当時は映倫区分が一般/成人の2つでしたが、その後、再審査を受け、現在の映倫区分でR15+の作品もあります。
<日活・高木希世江さんにインタビュー>
私が初めてロマンポルノを見たのは学生の頃、PFFの特集でパルコで上映された「天使のはらわた 赤い淫画」(1981/池田敏春監督)でした。その後新文芸坐の特集上映やオールナイトに通うようになり、プロデューサー、監督、脚本家、スタッフをチェックして、追いかけて見るようになりました。特に70年代の作品は、私がそれまで見てきた映画と熱量がずいぶん違って衝撃でした。それで日活に入社したいと思ったんです。入社試験で、自分の好きな誰かに手紙を書くという課題があり、神代辰巳監督にお手紙を書きました。
当時、男性向けに作られていたロマンポルノを女性が見てわかるのか?という問題も突き付けられるのですが、作られてから50年たった今も見続けられているというのは、映画が持つ力強さや面白さがあるからだと思うんです。メロドラマ、コメディ、青春映画、時代劇、サスペンスなど、ジャンルが多彩なのも楽しいです。もちろん、傑作ばかりとは思いませんし、中には何だこれは?と思う作品もあります。数多く作られたから傑作も生まれた。とはいえ、言葉にするのは難しいのですが、映画に魅力があるから、見続けられているのではないでしょうか。
「日活が作ったことのない映画を作る」――これは、初期のプロデューサーの言葉なのですが、暗中模索の状態で作られたロマンポルノには、新鮮さや混沌としたエネルギーがあります。また、現場で修行を積んでやっと監督やプロデューサーになって一本立ちできた……そういった喜びも伝わってきます。
ある監督から、当時は企画会議でありとあらゆることを話し合って決めた、ということを聞きました。初期はオリジナルの脚本作が多いのも特徴だと思います。そして、スタッフの多くはベテランの職人。1950~60年代半ばの映画黄金期の映画作りを知る人たちが、若手の監督やキャストを支えた。低予算ですが、とても丁寧に作られています。それは撮影所というシステムがあったからこそ。その力は今見ても感じます。ロマンポルノはある日突然できたものではなく、映画製作の歴史の積み重ねの中で生まれたものであり、それは現在の映画にも続いていると思います。例えば、小津安二郎監督の助監督が斎藤武市監督で、斎藤監督の助監督が神代辰巳監督で、神代監督の現場にいたのが、上垣保朗監督や根岸吉太郎監督、池田敏春監督…といったように。
ロマンポルノに興味はあるけれど、恥ずかしいから見られない人たちがいる、という状況は以前から感じていますし、今もそれは少なからずあると思います。2001年、渋谷のシネクイントで女性限定のロマンポルノ・オールナイトを開催しました。パルコにある映画館ということもあり、主に20代、サブカルが好きな女性が集まり、満席になりました。このオールナイトは数回続きました。その後、名画座などで監督特集や女優特集に通う若い世代がいます。
また、2012年、日活創立100周年の時は、ユーロスペースから、曾根中生監督のお蔵入りの作品「白昼の女狩り」を上映できれば、特集上映をやりましょうと提案があり、蓮實重彦さん、山田宏一さん、山根貞男さんが選んだ「生きつづけるロマンポルノ」を開催しました。3人のお墨付きの作品の上映ということもあり、大学生から30代の割とコアな映画ファンで大盛況でした。初めてロマンポルノを見てリピーターとなる観客も多く、場内の熱気が凄かったです。見やすい環境と、今回の、こういう初心者向けに水先案内になるようなことができると、若い世代が見やすくなるのではないかと思います。
そして、2016年の「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」。ロマンポルノ45周年にあたり、性的表現の自主規制が強まる一方で、インターネットでは過激な映像が見られるようになった時代に「ロマンポルノ」というものを考えよう、と。制作面では、脚本を作る前に、レイプシーンは入れないと社内でブレストして決めました。女性が見て不快なシーンはやめよう、と。今は、また変わったと思います。#MeTooムーブメントが起こり、さまざまなハラスメントが社会問題となる中で、ロマンポルノの受け止め方も変わってきていることを感じます。
映画も出会いだと思います。
私は、見始めた頃は、「ロマン・ポルノ1971-1982全映画 官能のプログラム・ピクチュア」という本をバイブルにして作品を選んでいました。今は、見たことのない作品が上映されると映画館に行くようにしています。
40代くらいまではロマンポルノをカルチャーとして捉えている人も多いと思います。ですから、映画が好きでロマンポルノを見ている身近な人から面白い作品を教えてもらったり、ネットや本で調べて見ているように思います。若い世代は、様々なコンテンツに触れていますから、情報量が多すぎて、どれを選んだら良いのか分からない人もいるかもしれませんね。でも、ロマンポルノは難しい映画ではありませんし、70分くらいで1作品見られます。何か気になる、ちょっと面白そうだ、と思う作品から気軽に見ていただければと。
もちろん、女優の素晴らしさに感動する、好きな俳優をみつける――ロマンポルノは常連の脇役俳優も多いのです――、また、「(秘)色情めす市場」の芹明香さんなど、演じる女性キャラクターのファンになる方もいます。そして、70~80年代のファッション、メイク、音楽、東京や地方のロケ地の風景なども興味深いですよね。ジャンルが多様ですから、恋愛や青春映画が好き、コメディが見たい、アクション系が良いなど、選んでご覧いただくのも良いと思います。
個性派の3監督が時代の「今」を切り取って、様々な生き方を描いています。ロマンポルノを知らない世代、今まで見たことのない人に、どう見てもらおうか?――それを考えて作られました。「手」は特に女性に響くと思いますし、「愛してる!」は笑いながら、高嶋政宏さんの深いメッセージを受け取れて、「百合の雨音」はリアルタイムでロマンポルノをご覧になった方々にも楽しんでいただけると思います。3本ご覧になって、<私の好きな映画>をみつけていただけたらと思います。
ロマンポルノ映画祭はシネマ映画.comにてオンライン開催中!
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