「わたしは最悪。」ストーリー仕立て、揺れる感情をとらえたビジュアル6種披露 AICONによるイラストも
2022年6月21日 17:00
第94回アカデミー賞で脚本賞、国際長編映画賞にノミネートされた「わたしは最悪。」の、気鋭のアートディレクター・石井勇一が手がけたストーリー仕立ての特別ビジュアルポスター6種と、グラフィックデザイナー・AICONとのイラストコラボポスターがお披露目された。
「わたしは最悪。」は、「母の残像」「テルマ」で知られ、カンヌ国際映画祭コンペティション部門の「ある視点部門」に本作を含め3度正式出品されたノルウェーの奇才ヨアキム・トリアーの監督作。本作で映画初主演を果たし、第74回カンヌ国際映画祭で女優賞を獲得したレナーテ・レインスベをはじめ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハーバート・ノードラムが共演した。世界各国で19受賞、101ノミネート(4月29日時点)を果たしており、アメリカでは4スクリーンでの限定公開ながらも、2020~22年公開の外国語映画のなかで、「パラサイト 半地下の家族」「燃ゆる女の肖像」に続くスクリーンアベレージ第3位を達成した。
物語の主人公は、学生時代は成績優秀で、アート系の才能があるが、「これしかない!」という決定的な道が見つからず、いまだ人生の脇役のような気分のユリヤ(レインスベ)。そんな彼女に、グラフィックノベル作家として成功した年上の恋人アクセル(リー)は、“妻”や“母”といったポジションを勧めてくる。ある夜、招待されていないパーティに紛れ込んだユリヤは、若くて魅力的なアイヴィン(ノードラム)に出会う。新たな恋の勢いにのり、ユリヤは今度こそ人生の主役の座を掴もうとするが……。
自身のさまざまな感情に翻ろうされるユリヤの表情をとらえた特別ビジュアルポスターを手がけたのは、ファッション、広告、グラフィックを始め、「花束みたいな恋をした」や、「mid90s ミッドナインティーズ」「ライトハウス」などのA24作品など、映画のアートディレクションでも知られる石井。物語を読み解くためのキーワードである「LOVE」「OBSESSIN」「CONFUSION」「MAGIC HOUR」「DELIGHT」「CHOICE」と名付けられたビジュアル6種は、フォント、レイアウト、スチールの印象が全く異なるにも関わらず、ユリヤの心情の変化が、一連のストーリーのように表現されている。
イラストポスターは石井と、国内外での展示、アパレルブランドとのコラボなど、幅広く活動するグラフィックデザイナー・AICONのコラボによるもの。思い悩むユリヤの内面と表情を、独特のウェーブのラインで繊細に表現し、シンプルながらも哲学的なデザインに仕上がった。
石井は「ビジュアル含めて宣材物として特に意識したのは、とにかくリアルで等身大な彼女自身をそのまま打ち出すということ。いわゆる決められた構図の決められた表情ではなく、不安の中にあるひたむきに真っ直ぐ見つめる視線。普段、私たちが何気なくしているリアルな自分の表情こその人生が詰まっている美しさです」と解説。「ああは人に言ってしまったけど、色々と思い付きでファッションや興味も心変わりしてしまう様に、ビジュアルパターンのロゴ表情も敢えて全く変えています。紙面としては、タイトルロゴとしての機能性もさることながら、全体の顔を文字で隠して覆うことによる彼女自身への鬱屈感や苦しさ、また自分自身が決して何者でもないといった匿名性を持たせる為のダブルミーニングとしてデザインしています」とこだわりを明かす。さらに物語についても、以下の通り印象を語る。
石井「これからの時代における本来の自分らしさ。気が付けば自己を見失い周りの人の為に生きてしまっていたなんて良く聞く話。そんなこととは無縁な等身大の彼女によるとてつもなくリアルで生々しく、決して他人事ではない解像度で魅せてくれる自分らしさとは。観るまでは、まさかこんな気持ちになるとは思いもしなかった、まさに最悪で最高なギフト映画」
「わたしは最悪。」は、7月1日から東京のBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国で順次公開される。R15+。
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