【コラム/細野真宏の試写室日記】「SING シング ネクストステージ」。前作51億円超えの大ヒットは本作でどうなる?
2022年3月17日 10:00
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映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
今からちょうど5年前の2017年3月17日に日本で「SING シング」が公開され、興行収入51.1億円という大ヒットを記録しました。
その続編となる「SING シング ネクストステージ」が今週末3月18日から公開されます。
まず、映画の出来ですが、これは文句なく面白いです!
前作の「SING シング」から5年も経っているので、私は内容をそれほど覚えていない状態で見ましたが、それでも全く問題ない感じでした。
物語を追っているうちにメインのキャラクターのことを徐々に思い出していけますし、場合によっては、初めて「SING シング」シリーズに触れる人でも作品についていけると思います。
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「SING シング」では、落ち目の劇場の支配人であるコアラのバスター・ムーンが、出演者を公募して劇場を立て直す物語でしたが、本作では“ネクストステージ”に進みます。
前作の「ゼロからの立て直し」も面白かったですが、本作では、地元での成功を経て「世界的に有名なエンターテイメントの聖地での成功」という夢を追いかけます。
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本作でカギとなるのは、15年もの間、人前には出ていない伝説的ロックスターのライオンであるクレイ・キャロウェイという存在です。
そして、このクレイ・キャロウェイというキャラクターにリアリティーを持たせるために、アーティストグループでの「グラミー賞・世界最多受賞記録」を持つU2のボーカルであるボノが声優を務めています。しかも、U2は本作のためにオリジナル楽曲「Your Song Saved My Life」も提供しています。
「SING シング」シリーズが人気となっている理由の一つに、実際に歌が上手い人をキャスティングしているというものがあります。
本作の場合は、クレイ・キャロウェイの説得の際に、ヤマアラシの少女でパンクロックギタリストのアッシュが重要になりますが、この声優をスカーレット・ヨハンソンが務めています。
そして、意外にもスカーレット・ヨハンソンは歌がかなり上手いのです。
さらに、日本で「SING シング」が大ヒットした要因には、吹替版のクオリティーの高さもあります。
このヤマアラシの少女・アッシュの声優を吹替版では長澤まさみが務めていて、これも驚くほど上手いのです!
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そして、本作でのカギとなる伝説的ロックスターのクレイ・キャロウェイを吹替版では、B'zのボーカリストである稲葉浩志が声優を初めて務めています。
初声優ということもあり、正直なところ、やや会話の部分では浮いているところはあるかと思います。
その点、字幕版のボノは、声優も歌も自然でした。
ただ、それでも私は本作では吹替版を推したいです。「SING シング」シリーズの「肝」となるのが歌唱シーン。特に稲葉浩志の歌唱シーンは圧巻で、字幕版よりも感動があるのです!
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また、幅広い層に訴え掛けるために、新キャラとなるアイスクリーム売りのゾウ・アルフォンゾの声優をジャニーズグループの「SixTONES」のメンバーであるジェシーが務めていますが、こちらは声優も歌も非常に上手いのです。
このように、前作のような適材適所のキャスティングはさらにセンスが上がっていると思います。
ちなみに、吹替版では、 エルトン・ジョンの「Goodbye Yellow Brick Road」や ビリー・アイリッシュの「bad guy」など、サントラとして流れる歌についてはそのまま英語の歌が流れる点も良いです。
以上の背景もあり、前作は「イントロ」のような感じでしたが、本作では役者が揃い、本格的な「舞台」がメインなので、より面白くなっているのです。
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さて、肝心の興行収入がどうなるのかを考えてみます。
日本では、ミニオンズがすっかり定着して、同シリーズを作っているユニバーサル・ピクチャーズ傘下のスタジオ「イルミネーション」作品の人気が急上昇しています。
例えば、イルミネーション第1作目の2010年公開作「怪盗グルーの月泥棒 3D」は興行収入12億円でしたが、2013年の「怪盗グルーのミニオン危機一発」では興行収入25億円と倍増しています。
そして、2015年の「ミニオンズ」では興行収入52.1億円と、さらに倍増しているのです。
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その流れを受け、2016年の「ペット」では、新シリーズにもかかわらず興行収入42億3800万円という大ヒットをしています。
同様に、2017年の「SING シング」も興行収入51.1億円という大ヒットをしたわけです。
さらには、2017年の「怪盗グルーのミニオン大脱走」は、興行収入73.1億円というメガヒットとなっているのです!
ここまでの動きを見ると、このまま「イルミネーション」作品は右肩上がりを続けそうな印象を持ちます。
ただ、現実はそう上手くはいかず、2019年の「ペット2」は、作品の完成度は高かったにもかかわらず興行収入21.6億円と半減してしまったのです。
これは、日本ではミニオンズは定着したものの、その派生キャラクターまでは定着していないことが露見した形になったと思います。
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その流れで言えば、「SING シング ネクストステージ」の完成度は「SING シング」より高くても、興行収入は半減して25億円程度になることも想定されます。
しかも、これらはいずれも「コロナ禍前のデータ」なので、コロナ禍の今では、さらに落ち込むことも視野に入れないといけないのです。
例えば、ユニバーサルが2016年に買収したドリームワークス・アニメーションは、「イルミネーション」スタジオのトップであるクリス・メレダンドリが同様にトップを務めています。
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そして、そのコラボ作品第1弾となった2018年公開作「ボス・ベイビー」は興行収入34.4億円を記録しました。
ただ、2021年のコロナ禍で公開された「ボス・ベイビー ファミリー・ミッション」は、出来が良くても興行収入10億円程度と3分の1以下になってしまったのです…。
このように客観的にデータだけで考えると、「SING シング ネクストステージ」の興行収入は20億円程度で終わっても不思議ではないと言えそうです。
環境面はどうしようもないので結果は受け入れざるを得ないのですが、本作の出来に関しては本当に良いと思います。
Rotten Tomatoesでは、批評家の評価は71%ですが、一般層は98%と“ほぼ満点”となっています!
ちなみに「SING シング」では批評家の評価は71%、一般層は72%となっているので、本作の一般ウケはかなり期待できるのです。(すべて2022年3月16日時点)
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そして、吹替版も出来が良いですし、日本では音楽映画の人気が高い傾向にあるので、データ以上のポテンシャルを発揮してほしいところです。
そのため、「SING シング ネクストステージ」のポテンシャルは興行収入30億円はあると思われるので、何とか口コミ等で30億円を目指してほしいと思います。
(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
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