【コラム/細野真宏の試写室日記】「ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」は王道的な「ファミリー層向け映画」の風格を見せられるか?
2022年3月4日 10:00

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
このところ作品選びが、やや難航してしまうほどインパクトのある映画が少ない状況でしたが、ようやく変わりつつあるような気がしています。
3月に入った今週末3月4日は「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」と「余命10年」が大規模公開されますが、どちらも完成度が非常に高いのです!
そこで今週は、2本の作品紹介をしたいと思います。

まず、「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」については、定番のキラーコンテンツです。
その上、1985年3月に公開された名作「ドラえもん のび太の宇宙小戦争」のリメイク作品なのでベースの物語も非常に良いのです。
しかも、山口晋監督が映画ドラえもんシリーズ「初監督」とは思えないほどセンスが良く、作画は割と凝っていてシリーズ最高峰クラスだと思われます。
通常はオープニングの歌がありますが、本作はオープニングで歌はなく、「ミニチュアによる特撮シーン」に合わせて音楽とスタッフの名前が出ます。
この「ミニチュアによる特撮シーン」は、「STAND BY ME ドラえもん」の白組とのコラボで実際にミニチュアを作り、2Dアニメーションに上手く合成されています。

しかも、この劇中の特撮シーンは、スネ夫が監督をする自主制作映画という設定。なかなか本格的な撮影手法を披露しているのです。
このように出だしから、かなり出来が良く、満足度も高い作品になっていると思います。
物語は、図らずも現在の世相を反映している形となっていますが、私はタイミングとしては悪くないのではと考えています。


ただ、あえて「もったいない」と感じてしまった点を挙げるとすると、中盤に歌が流れますが、ここのセンスが私のとは違っていました。
映画の公式HPを見ると、【Official髭男dism『Universe』×武田鉄矢『少年期』スペシャルPV】として、1985年版の「ドラえもん のび太の宇宙小戦争」でのエンディング曲「少年期」が使われています。
「少年期」は、かなりの名曲です。この歌が流れると作品のクオリティーをより上げることが出来ていたと思いますが、本作では、なぜか違う楽曲の懐メロ調の別の歌手で、私にはあまりピンときませんでした。
また、おそらくゲスト声優だと思われますが、一人だけ声のトーンが違い、「ん?」と浮いている気がしたシーンもありましたが、まぁ重要な役どころではないので許容範囲でしょうか(笑)。
別の言い方をすると、このくらいしか違和感を覚える箇所がなく、全体としては「全世代型の出来の良い作品」になったと思っています。
そのため、本来であればシリーズ最高の興行収入を打ち立てても不思議ではないのですが、大きな2つの不確定要素があります。


1つ目は、2006年から行われている「リメイク作品」についての動向です。
この、過去の名作を現在の技術を加え内容も含めて進化させる、という試みは、声優陣が大幅に代わった「映画ドラえもん のび太の恐竜2006」から始まりました。2007年「映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 7人の魔法使い」、2009年「映画ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史」、2011年「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 はばたけ天使たち」、2014年「映画ドラえもん 新・のび太の大魔境 ペコと5人の探検隊」、2016年「映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生」と1~3年おきに行われています。
これらの「リメイク作品」は、どれも(通常の新作より)良く出来ているのですが、なぜか興行収入が上がりにくい傾向にあるのです。
これは、大まかなストーリーは変わらない、というのがあるのかもしれませんが、大人も子供も楽しめるように大きく進化した作品となっているのです。そのため、過去の名作の「リメイク作品」の流れをポジティブに捉える習慣の定着が重要だと感じています。

2つ目は、言わずと知れた新型コロナの影響です。
そもそも「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」というタイトルからも分かるように、1年前の2021年に公開されるはずでしたが新型コロナの影響で1年延期となっての公開なのです。
さらには、先月に行われる予定だった一般試写会も中止となっています。
そして、今年の1月以降の公開作品で、いわゆる王道的な「ファミリー層向けの映画」がまだないため、未就学児・小学生を中心としたファミリー層の動向が読みにくいのです。

新型コロナウイルスは目下、オミクロン株になっていて「感染力」が上がっています。
直近の厚生労働省のデータ(HER-SYSデータ)では、2月20日~26日の全国の人口10万人当たり7日間の累計新規感染者数は、5才~9才が932.1人と全年齢層で最も割合が多くなっています。
次に多いのが10才~14才の655.1人となっています。
このように、やや「未就学児・小学生を中心としたファミリー」がコア層となる映画には不利な環境になっているのかもしれないのです。
このような背景がある中、果たして「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」は感染予防と経済・日常の両立をしながら王道的な「ファミリー層向け映画」の風格を見せられるのか大いに注目される作品なのです!
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