オゾン監督の初期代表作「クリミナル・ラヴァーズ」「焼け石に水」「まぼろし」 3週間限定でリバイバル上映決定
2021年9月7日 16:00
フランソワ・オゾン監督の最新作「Summer of 85」公開(上映中)を記念し、同監督の初期代表作「クリミナル・ラヴァーズ」「焼け石に水」「まぼろし」が、封切り当時の35ミリフィルムでリバイバル上映されることがわかった。東京のBunkamura ル・シネマで、9月10日~30日の期間限定で上映される。
30歳で手がけた長編デビュー作「ホームドラマ」が、1998年のカンヌ国際映画祭の批評家週間に正式出品されたオゾン監督。その後、17歳の男女の殺意を描く暗く屈折した寓話的な怪作「クリミナル・ラヴァーズ」、ライナー・ベルナー・ファスビンダーの未発表戯曲を映画化したシュールな室内劇「焼け石に水」、シャーロット・ランプリングを主演に迎え、中年女性の内面へ深く分け入る人間ドラマ「まぼろし」という、全く異なるテーマの3作品を立て続けに発表し、一躍フランス映画の新世代のトップランナーに躍り出た。
いまや世界三大映画祭の常連にしてフランス映画界の巨匠となったオゾン監督は、毎年1~2本ペースで精力的に新作を製作している。7月に行われた第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門では、ソフィー・マルソー主演の家族ドラマ「Tout s'est bien passe(原題)」を発表。また現在ポストプロダクション中の新作で、イザベル・アジャーニ主演の室内劇は、「焼け石に水」制作時に大いに参考にしたというファスビンダーの戯曲と映画「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」(1972)をオゾン流に再映画化したものだという。
Bunkamura ル・シネマでは、8月20日~26日の1週間限定で、日本公開20周年を迎える「焼け石に水」をリバイバル上映。封切り上映を懐かしむ中高年から、今回スクリーンで初めて触れるであろう若年層まで幅広い層の観客が訪れたという。そして「Summer of 85」でオゾン監督作を初めて鑑賞した若い観客のため、同監督の過去作を紹介するべく、新たに初期3作品の限定上映を決定した。劇場ロビーでは、「Summer of 85」のフランス本国版の大判ポスターや特製スタンディ、「焼け石に水」「まぼろし」の日本版ポスターなどをディスプレイする。
「フランソワ・オゾン初期作品特集」は、Bunkamura ル・シネマで9月10日~30日に開催。「焼け石に水」は10日~16日の全日11時から、「クリミナル・ラヴァーズ」は17日~23日(上映時間は未定)、「まぼろし」は24日~30日(上映時間は未定)に上映される。料金は1300円で、「Summer of 85」のチケット(半券、特別鑑賞券、QRチケットなど)を提示すると1100円で鑑賞可能。上映スケジュールなどは公式サイト(https://www.bunkamura.co.jp/cinema/)に掲載されている。各作品の詳細は、以下の通り。
物語の軸となるのは、高校生のカップル、アリス(ナターシャ・レニエ)とリュック(ジェレミー・レニエ)。自らの屈折した性をもてあそぶアリスは、まだ幼さの残るリュックを操り、同級生サイードをゲーム感覚で斬殺する。やがて死体を埋めに入った森で迷うふたりを、ある男(ミキ・マノイロビッチ)が見つめていた――。99年のベネチア国際映画祭に正式出品された。リュック役のレニエはその後、「しあわせの雨傘」「2重螺旋の恋人」でもオゾン監督に起用されている。
1970年代のドイツで、20歳の青年フランツ(マリック・ジディ)は、街で中年のビジネスマン・レオポルド(ベルナール・ジロドー)に声をかけられ、彼の家を訪ねる。レオの不思議な魅力にとらわれ、同棲まで始めるが、そこにふたりの昔の恋人(リュディビーヌ・サニエ、アンナ・トムソン)が現れる。2000年のベネチア国際映画祭に正式出品され、テディ賞(最優秀クィア映画賞)の長編映画部門で大賞に輝いた。フランツのガールフレンド・アナ役のサニエはその後、「8人の女たち」「スイミング・プール」でもオゾン監督とタッグを組んでいる。
連れ添って25年になる50代のマリー(ランプリング)と(ジャンブルーノ・クレメル)の夫婦は、毎年夏になると、フランス南西部のランド地方にバカンスに出かける。ふたりは今年もランドを訪れるが、マリーが浜辺で午睡する間に海に入った夫は、手がかりひとつ残さず消えてしまう。事故なのか、失踪なのか、それとも自死なのか――。「愛の嵐」「地獄に堕ちた勇者ども」で知られる主演のランプリングが絶賛を浴びた。彼女は「スイミング・プール」「17歳」、そして最新作「Tout s'est bien passe(原題)」と、オゾン監督のラブコールにより出演を重ねている。