復讐劇なのになぜポップ? 「プロミシング・ヤング・ウーマン」色彩豊かなビジュアルの魅力
2021年7月3日 11:00

第93回アカデミー賞で脚本賞を受賞した「プロミシング・ヤング・ウーマン」から、衣装や装飾などにフォーカスした場面写真とスケッチ画が披露された。“復讐劇”という暗いテーマにもかかわらず、対照的な“色彩豊かなカラー”が取り入れられた本作。今回は、その魅力を紹介していく。
本作は、“前途有望な若い女性”(プロミシング・ヤング・ウーマン)だったキャシーによる、未来を踏みにじった男たちへの復讐劇。「17歳の肖像」「華麗なるギャツビー」のキャリー・マリガンがキャシーを演じ、「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」で俳優として活躍するほか、「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」の監督としても知られるボー・バーナムらが共演。エメラルド・フェネルが、自身のオリジナル脚本で長編映画監督デビューを飾った。

フェネル監督は「“女の子が好きなもの”を再利用して恐ろしいものを作りたかった」と話し、この作品をあえて鮮やかな色彩で彩った。「女性はうまくいっていないときほど自分を奇麗に着飾るの」と、昼間のキャシーにはリボンやギンガムチェックをたくさん着せ“私は元気”という雰囲気を醸し出した。
キャシーの両親が暮らす家は、ゴージャスな家具を用いて80年代を感じさせる幻想的な空間である。しかし家具たちはどこか色あせ、長年手入れをされていないような状態となっている。これは、ある事件から時が止まり、現実の世界に直面しないキャシーの生活=心と結びついているようにも感じられる。


一方、夜な夜な出歩くキャシーには特定の男性に魅力的に見られるための武装ともいえる様々なスタイルがデザインされた。ある晩は仕事帰りの女、またある晩はボディコンシャスのドレスに身を包んでいる。
衣裳を担当したナンシー・スタイナーは、ソフィア・コッポラ監督の「ヴァージン・スーサイズ」「ロスト・イン・トランスレーション」、ヨルゴス・ランティモス監督の「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」など、個性派映画監督とのコラボレーションで知られる。


彼女が描いたスケッチ画は、コスチュームだけでなく背景も色彩を取り入れ、映画の世界観そのものを描く。カフェでのスケッチ画は、“防御感”がないパステルカラーのトップス。ラフでありつつもカフェ自体が彼女の空間としてマッチしている。ナースのコスプレのスケッチ画は、木目の背景。派手な髪色にポーズを決め、勝負服といった印象だ。キャシーは医大を退いていながら、なぜこのユニフォームを着なければいけなかったのか、興味をそそるスケッチ画になっている。
「プロミシング・ヤング・ウーマン」は、7月9日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田で先行公開、16日から全国公開。
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