【「アオラレ」評論】瞠目すべきクロウの怪演。車道の殺人鬼を描く現代の「激突!」!!
2021年5月1日 14:00

「アオラレ……脳内の考えが周りの人に知られちゃうやつ?」って、それは20年前に公開された本広克行監督の「サトラレ」(01)だ。ここで触れるのは、公道で車間距離を詰めたり、危険な追い越しを指す、あの社会問題にもなった「あおり運転」が発端の新作スリラーだ。
15歳の息子を持つレイチェル(カレン・ピストリアス)は運転中、行く手を阻み難癖をつけてきた素性の知れぬ男(ラッセル・クロウ)に対し、自分に非はないと主張して場をやりすごす。
だが、それが怒りを誘引したのか、男はレイチェルをどこまでも車であおって追い回し、さらにあろうことか、彼女のネット端末から個人情報をさらい、レイチェルの身内と接触しては各自を血祭りにあげていくのだ。常軌を逸した殺人行為、いったい当のレイチェルはどうなってしまうのか!?
落ち度のないドライバーが大型トレーラーの襲撃に遭う「激突!」(71)や、殺人鬼を乗せた大学生の受難を描いた「ヒッチャー」(81)など、車道でとんだトバッチリを食らうこのテの映画は脈々とあり、「アオラレ」はその最新版だ。「危険運転で接近してくる、肥大化したラッセル・クロウ」という絵ヅラだけでも人類は恐怖に駆られるのに、彼が演じる怪キャラクターは狂気を膨張させ、あおり運転だけで事を済まさない。己れに理解を示さぬ者を執拗に追い詰め、関係者を片っ端から手にかけていく。まさに無秩序の極みだが、現代社会の歪みが生んだモンスターとしてどこか悲劇的で、また巻き込まれるヒロインもやや道徳心に欠けるところ、そこは作品にかろうじてメッセージ性が含まれている。あおり運転に始まり、現代のネット社会にまで魔の手が及ぶ、これぞまさしく新時代の「激突!」。いや本当、面倒でもパスワードはちゃんと設定しておこう。
加えて本作の恐怖を倍化させるのは、キャリアのプラスになるとも思えぬ、ラッセル・クロウのやりたい放題な怪演だ。2000年製作の「グラディエーター」で悲劇の剣闘士を体現し、栄えあるオスカーを受賞。後年「レ・ミゼラブル」(12)では主演のヒュー・ジャックマンを差し置き、じつにいい湯加減で熱唱。以前とは何だか性質の異なる役者になってしまった。今回も「ワールド・オブ・ライズ」(08)のときのようなスーパー増量によって、両国でよく見かける巨漢に変身! と言いたいところだが、じつは肉体スーツを着込んで役作りをしたらしい。腐っても名優、あまりアオラレ、いやサトラレたくない事実かも。
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