A・ホプキンス、“史上最高齢”でオスカーノミネート「ファーザー」予告完成! 仲代達矢&西田敏行が感服コメント
2021年3月31日 12:00
83歳を迎えたアンソニー・ホプキンスが、第93回アカデミー賞の主演男優賞に“史上最高齢”でノミネートされた「ファーザー」の日本版予告編が完成。あわせて日本が世界に誇る名優・仲代達矢、ドラマ「俺の家の話」で認知症が進行していく父を熱演した西田敏行らのコメントが公開された。
本作は、世界30カ国以上で上演された傑作舞台を映画化したもの。認知症となり、現実と幻想の境界線が曖昧になっていく主人公アンソニーの視点で、老いという誰しもに訪れる“人生の夕暮れ”と、親子の揺れる絆を描き出す。
ホプキンスが自身と同名、同年齢、同誕生日のアンソニー、「女王陛下のお気に入り」のオスカー女優オリビア・コールマンが、アンソニーを介護する娘アンを体現。舞台版を手掛けたフランス人劇作家フロリアン・ゼレールが長編映画初監督を務めた。第93回アカデミー賞では作品賞をはじめ、主演男優賞、助演女優賞、脚色賞、編集賞、美術賞の計6部門にノミネートされた。
予告編は、アンソニーが「私は誰なんだ?」と驚きの言葉を発する、衝撃のシーンで始まる。腕時計がない……、そして娘のアンだったはずの女性はどこへ? アンソニーの記憶と現実を追体験する迷宮のような世界観が、見るものをかつてない映画体験へと誘う。「おかしな事ばかりだ」と戸惑うアンソニー。そして愛する父の変化に思い悩むアン。ホプキンスとコールマンの熱演が光る、重厚感たっぷりの映像に仕上がった。
さらに本作について、数々の著名人からコメントが寄せられた。仲代は、「やがて老いてゆく全ての人間へのエレジー。恐れもせずにこの作品に身を投じたアンソニー・ホプキンスの姿は、正に敬服の至りで有りました」と語る。西田は、「アンソニー・ホプキンス殿、貴方の演技をどのような言葉をもって称えたら良いのでしょう。既にご高齢の貴方が老いがもたらすいろんな障害を客観視をして冷めた演技をなさる。もはや神の領域としか言わざるを得ません」と賛辞をおくっている。
「ファーザー」は、5月14日から東京・TOHOシネマズシャンテほか全国で公開される。著名人のコメントは、以下の通り。
マジカルな世界に迷い込んだかの様な混沌とした世界は、時々可笑しく! 恐ろしく不安定! ……A.ホプキンスの演技力は我が親の記憶を呼びさます生々しさ、愛しい時間であったと思えた作品!
私は舞台で娘アンを演じ、フロリアン・ゼレールの戯曲に魅了されました。この作品の深い愛を自ら初監督し、アンソニー・ホプキンスとオリビア・コールマンの圧倒的な素晴らしさに浸らせてくれた事に感謝します。厳格な父が自己を喪失していくリアルさに涙が止まらない。
親と子はいつか逆転する。老いるという事はこういう事なのだろうか。私もアンソニーと一緒に彼の記憶の中を彷徨った。
誰もがいつか迎える「老い」。記憶や理性が崩壊していくさまを、私たちはアンソニー・ホプキンスの至芸を通して体験する。これはユーモアも混じえた上質なサスペンス映画だ。そして避け難い結末が胸を締め付ける家庭劇でもある。
2019年、最も印象に残った舞台作品の映画化。観ているあいだ中、私たちは終始混乱し、苛立ち不安になる。でもそれこそが彼の生きる世界そのもの。そこに生きる「父」の姿は未来の私かもしれない。
たいへん良い映画です。地味なのに退屈せず、緊張感が持続します。いろいろなことを考えさせてくれます。
認知症の「父」の体験を驚くべき脚本と映像のマジックで再現する。映画制作の偉大な発明を通して、深くて広い人間愛が描かれる。不安に満ち、揺れ動く世界の中から、最後に残る人のぬくもりと希望。かけ値なしの傑作だ。
映画は人生の予行演習だ。ここまでの認知症の主観の世界は本人以外は見られない。A・ホプキンスは「名優」という言葉では賞讃が追いつかないほど俳優の未踏の極地に居る。
「確かさがないから不安で確認する」「認知症は暮らしの障害」を体感したあっという間の時間。不安や混乱が混じる日常生活を理解しできることを共に楽しむ。難しいことですが体感した今ならできると感じました。
記憶と幻想の境界が崩れゆく気持ちなんて体感できるはずがないのに、圧巻の演技と巧みな演出で、いつの間にか、主人公と一緒に戸惑い悩む自分がいた。この家族が下した選択の正否なんて誰にもわからない。でも、きっと僕も最後は母の温もりに帰るんだと思えた時、心が救われた自分がいた。
アンソニー・ホプキンス史上最高の演技。残酷なまでに巧妙な構成に圧倒され「2001年宇宙の旅」や「惑星ソラリス」を思い起こさせられた。パズルのピースをひとつずつ合わせていくように主人公が感じている苛立ちやその奥深い痛みを追体験させられる。