月船さらら、市川知宏を“飼育”する 「完全なる飼育」シリーズ第9弾、11月公開決定
2020年8月7日 06:00
[映画.com ニュース] 数々の衝撃作を生み出してきた「完全なる飼育」シリーズの第9作目「完全なる飼育 etude」(「etude」最初のeは、アキュート・アクセント)が、11月27日から公開されることが決定した。
和田勉監督がメガホンを取り、新藤兼人監督が脚本を担当した第1作「完全なる飼育」が発表されたのは、1999年のこと。ノンフィクション作家・松田美智子氏の小説「女子高校生誘拐飼育事件」を原作に、孤独な少女と孤独な中年男との歪んだ純愛を描き、日本国内だけでなく、アジア各国をはじめ全世界で話題を呼んだ。
「TAP 完全なる飼育」以来7年ぶりのシリーズ新作は、劇中の舞台「完全なる飼育」の物語の中で繰り広げられる“飼育”と、その舞台に挑む若手俳優を、演出家が稽古という名の“飼育”をするという二重構造。これまでのシリーズ作品とは異なり、女性が青年を飼育するという展開となっており、オール台湾撮影を実施。俳優たちの生々しく激しい体当たり演技、台湾ならではの美術セット、艶やかで美しい極彩色に彩られた舞台照明と衣装が、男女の間のサディスティックな世界感をより一層際立たせている。
メガホンをとったのは加藤卓哉監督。東映東京撮影所に所属し、「劔岳 点の記」「あなたへ」「くちびるに歌を」などの助監督を経て、「TSUTAYA CREATORS’PROGRAM FILMS 2015」で準グランプリに輝いた「裏アカ」(2021年春公開)で長編映画デビューを果たしている。宝塚歌劇団月組男役スターとして活躍した月船さららが、近寄りがたい孤高の存在であり、強さと妖艶さを兼ね備えた女性演出家・小泉彩乃役を演じ、「第21回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞した市川知宏が若手俳優・篠田葵役に挑戦。また、第1作「完全なる飼育」に主演し、シリーズ全8作のうち7作に出演してきた竹中直人も参加している。
月船は「この物語は『舞台』のお話です。その『舞台』こそ、私が10代の頃から人生を賭けてきた世界でした。だから『彩乃』を演じることにプレッシャーも感じましたし、彼女の『舞台への情熱』に嘘がないようにしたい。愛情や情熱が深くなるほど、それは歪み、いつか狂気に変貌するのかも知れません。自分がいつそうならないとも言えない……でも彩乃の狂気に、私はどこか神聖さすら感んじていたのです」と述懐。一方、市川は「過去に何作と作られてきた『完全なる飼育』シリーズに参加することができ、とても光栄です。今回は『孤独』と『赦し』がテーマになっています。是非その2つに着目して観て頂きたいと思います」とアピールしている。
加藤監督は「月船さんの類稀な表現力と、市川君の迫真の芝居が、台湾という場で化学変化を起こし、この映画を自分が想像していたよりもひとつ高いステージに押し上げてくれました」と述懐。「批判し攻撃することでしか自分を保てないような今の世界に、『赦す』という言葉で何か変化を与えられたら。そんな想いを共有した信頼するスタッフの力を借り、『完全なる飼育』という冠に恥じぬよう、覚悟を持って撮った作品です」とコメントを寄せている。
「完全なる飼育 etude」には、金野美穂、寺中寿之、永井すみれ、松井るなも出演。11月27日から東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開。R15+指定。