通常開催断念のカンヌ映画祭、オフィシャルセレクションを発表 河瀬直美、深田晃司、宮崎吾朗の作品が入選

2020年6月4日 10:00

今年は通常開催を断念
今年は通常開催を断念

[映画.com ニュース]新型コロナウィルスの影響で、例年通りの開催を断念したカンヌ国際映画祭が、現地時間の6月3日、「カンヌレーベル」としてラインナップを発表した。異例の事態となった今年はコンペティション、ある視点部門など、部門ごとのセレクションではなく、オフィシャルセレクション全体で56作品を選出。内訳を、「常連」14本、「若手」14本、「初監督作」15本、「コメディ」5本、「ドキュメンタリー」3本、「アニメーション」4本、「オムニバス」1本としている。初長編が15本というのは、過去最高の割合とか。またコメディをわざわざカテゴリーに銘打っているのは、カンヌにおいてコメディ映画の評価が珍しいためだろう。

日本からは常連組に河瀬直美の「朝が来る」、深田晃司の「本気のしるし 劇場版」、アニメ作品として宮崎吾朗によるスタジオジブリ初の3DCG制作「アーヤと魔女」が入選した。常連には他に、ウェス・アンダーソンがフランスで撮影した「ザ・フレンチ・ディスパッチ(原題)」やフランソワ・オゾンの「ETE 85」、英BBC制作の6本シリーズから2本を出品したスティーブ・マックイーントマス・ビンターベア、シャルナス・バルタス、ジョナサン・ノシテ、マイウェンといった名前が並ぶ。常連とはいえ、カンヌにしては比較的若手が集まった印象だ。

俳優による初監督作として目を引くのは、ビゴ・モーテンセンの「Falling」と、フランスの国立劇団コメディ・フランセーズの俳優ローラン・ラフィットによる「L’Origine du monde」。また女性監督の作品は、昨年から2本増えて16本となった。フランス映画も増え、昨年から5本増しの21本(うち9本が長編デビュー作)と存在感を増している。果たしてこれが、映画祭単独開催の断念と関係があるのかどうかは、興味深いところだ。

TV放送とオンラインによるライブ会見をおこなった映画祭ディレクターのティエリー・フレモーによれば、応募本数は昨年の1845本に比べ今年は2067本で、パンデミックの影響によるポスト・プロダクションの減速の影響は感じられないという。とはいえ通常はラインナップの発表が4月半ばであることを考えれば、1カ月半も引っ張っているのだから応募数が増えるのも当然だろう。フランス映画の多さに関しては、「贔屓ではなく、応募本数が増えた結果」とか。

もっとも、カンヌの単独開催が流れたなか、なぜここまで締め切りを遅らせる必要があったのか、そこまでして「カンヌレーベル」は必要なのか、といった疑問の声も上がっていた。フレモー自身は「カンヌレーベル」のお墨付きは作品のプロモーションになるため、プロデューサー、セールスカンパニー、配給会社が必要としている、と語っているが、その一方で、「たんなるエゴ」という声も業界にはあった。しかも締め切りを伸ばすことによって、必然的に他の映画祭(とくにベネチアとトロント)のセレクションの妨げにもなることは避けられない。

肝心なのは、選ばれた「カンヌレーベル」作品が今後どういう形で披露されるのか、ということだが、それについては今回、サン・セバスチャン国際映画祭(オンライン開催)が例外的にコンペに同じ作品を選ぶことを示唆したのみで、明確な発言は聞かれなかった。一時はベネチア映画祭時に上映される可能性も囁かれていたものの、フレモーの煮え切らない態度に業を煮やし、ベネチアビエンナーレのプレジデントが匙を投げたと報道されている。

果たして今後、どんな新情報が飛び出すのか。また短編とシネフォンダシオン、カンヌクラシック部門が追って発表になる他、監督週間をのぞく併設部門の批評家週間とACID(インディペンデント映画アソシエーション)も、ラインナップを発表する。マーケット部門はすでに告知されている通り、6月22日から26日までオンラインで開催される。

ともあれ、カンヌ関連からはまだまだ目が離せない状態だ。(佐藤久理子)

▽ラインナップは以下の通り

▼常連
ザ・フレンチ・ディスパッチ(原題)ウェス・アンダーソン
「Ete 85(原題)」フランソワ・オゾン
朝が来る河瀬直美
「Lovers Rock(原題)」スティーブ・マックイーン
「Mangrove(原題)」スティーブ・マックイーン
「Another Round(英題)」トマス・ビンターベア
「DNA(英題)」マイウェン
「Last Words(原題)」ジョナサン・ノシター
「Heaven:To The Land of Happiness(英題)」イム・サンス
「El olvido que seremos(原題)」フェルナンド・トルエバ
「Peninsula(英題)」ヨン・サンホ
「In the Dusk(英題)」シャルナス・バルタス
「Des hommes(原題)」リュカ・ベルボー
本気のしるし 劇場版深田晃司

▼若手
「Les nouveaux venus Passion simple(原題)」ダニエル・アルビッド
「A Good Man(原題)」マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
「Les Choses qu’on dit, les choses qu’on fait(原題)」エマニュエル・ムレ
「Souad(原題)」アイテン・アミン
「Limbo(原題)」ベン・シャーロック
「Red Soil(英題)」ファリド・ベントゥーミ
「Sweat(原題)」マグヌス・フォン・ホーン
「Teddy(原題)」 ルボビック、ゾラン・ブケルマ
「February(英題)」カメン・カレフ
「Ammonite(原題)」フランシス・リー
「Un medecin de nuit(原題)」エリ・ワジュマン
「Enfant terrible(原題)」オスカー・レーラー
「Butterfly(英題)」パスカル・プランテ
「Here We Are(原題)」ニール・バーグマン

▼オムニバス
「The Story of Hongkong(原題)」アン・ホイジョニー・トーツイ・ハーク
サモ・ハン・キンポーユエン・ウーピンパトリック・タムリンゴ・ラム

▼初監督作
「Falling(原題)」ビゴ・モーテンセン
「Pleasure(原題)」ニンジャ・サイバーグ
「Slalom(原題)」シャーリーン・ファビエ
「Memory House(英題)」ジョアン・パウロ・ミランダ・マリア
「Broken Keys (英題)」ジミー・ケイルズ
「Ibrahim(原題)」サミール・ゲスミ
「Beginning(英題)」Dea Kulumbegashvili
「Gagarine(原題)」ファニー・リアター、ジェレミー・トゥロイル
「16 printemps(原題)」スザンヌ・リンドン
「Vaurien(原題)」ピーター・ドゥーロンティス
「Garcon chiffon(原題)」ニコラス・モーリー
「Should The Wind Fall(英題)」ノラ・マーティロスヤン
「John and The Hole(原題)」パスカル・シスト
「Striding into The Wind(英題)」ウェイ・シュジュン
「The Death of Cinema and My Father Too(英題)」ダニ・ローゼンバーグ

▼ドキュメンタリー
「The Billion Road(原題)」デュド・ハマディ
「The Truffle Hunters(原題)」ミシェル・ドウェック、グレゴリー・カーショウ
「9 jours a Raqqa(原題)」グザビエ・ド・ローザンヌ

▼コメディ
「Antoinette dans les Cevennes(原題)」キャロリン・ビグナル
「Les Deux Alfred(原題)」ブリュノ・ポダリデス
「The Big Hit(英題)」エマニュエル・クールコル
「L’Origine du monde(原題)」ローラン・ラフィット
「Le Discours(原題)」ローラン・ティラール

▼アニメーション
アーヤと魔女宮崎吾朗
「Flee(原題)」ジョナス・ポエール・ラスムーセン
「Josep(原題)」オーレル
ソウルフル・ワールドピート・ドクター

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