レニー・ゼルウィガーが放つ陽の気、そして女優としての矜持
2020年3月4日 15:00
[映画.com ニュース] 独特の、ウキウキした感じ。そうだ、この人の周囲には、いつもそんなオーラが漂っているのだったと、久々に会って思い出した。筆者がレニー・ゼルウィガーに会うのは、「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」以来、4年ぶり。彼女はその前に6年も休みを取っていたため、その時も久しぶりだった。「あの休みは、必要だったのよ」と、ビバリーヒルズのホテルの一室で、彼女は当時を振り返る。(取材・文/猿渡由紀)
「あれは、やらなきゃいけないことだった。あの頃の私の生活は、ヘルシーではなかったから。自分はこれを期待されているという理由で、仕事を入れていた。ひとつの映画を撮影している間に、その前に撮った映画のプロモーション活動をしたりとかね。そんな状況では、個人的に興味のあることを学んだり、何かを書いたりすることはできない。身近な人の子どもたちが育っていくのを見つめてあげることも。それができる人もいるのでしょうけれど、私にはできなかった。だから、一時停止しないといけなかったの」。
自分基準で仕事を選ぶことに決めた彼女は、最新作「ジュディ 虹の彼方に」に、かつてないような時間をかけて挑んだ。ジュディ・ガーランドの晩年を描くこの映画の話が彼女のもとに訪れたのは、2017年。その翌年を丸々使って歌のトレーニングをし、19年に撮影。映画の北米公開は、同年秋。その頃から賞レースのキャンペーンが始まり、先月のオスカー主演女優賞受賞で、今作のジャーニーはついに完結する。
オスカーをもらうのは、「コールドマウンテン」の助演女優賞受賞以来、16年ぶりだ。カムバックストーリーを愛するハリウッドは、両手を広げて彼女を受け入れ、抱きしめた。そこまでみんなから愛された気分を聞くと、ゼルウィガーは、ちょっと照れくさそうな表情になる。本人いわく、褒められるのは「元来、あまり得意ではない」らしい。
「この映画を作る経験は、世界からかけ離れた静かなところでコツコツとした感じだったのよね。今作にかかわるみんなが同じ情熱とモチベーションを持っていて、自分たちの求めるものにできるだけ近づけるため、今すべきことに集中していた。おかしな話だけど、最終的にそれをほかの人たちが見るのだということすら、あまり考えなかったの。だから、みんながこの映画を祝福してくれたのは、なんというか、急にどん、と来た感じだったわ」。
初めて歌の才能を披露した「シカゴ」でも、オスカー候補入りを果たしている。しかし、誰もが知る名女優ガーランドの歌を歌う上では、まったく違うレベルの難しさがあった。
「私の声は、そもそも細く、それを変えるのは無理。つまり、私が自然に歌うと、ジュディみたいには絶対にならないの。だから、物理的にやらないといけなかった。ここではもっと顎を開く、ここではこの部分から声を出す、というふうにね。自分の体からあの声を出すために、パーツに分けて挑んだの。私は若い頃、体操をやっていたのだけれど、それに似ていたわ。それは、とても時間がかかることだった。でも、ラッキーなことに、私たちには時間があった。自分にはできないと思えたことができるようになるための時間をもらえるなんて、すごくラッキーなことよ」。
働き者であることは、「父譲り」。休業期間も、何もしなかったわけではなく、結局は放送にいたらなかったものの、テレビドラマを制作し、撮影したりしている。
「私はワーキングガール。いつだって仕事をしてきた。何もしないでいられないタイプなの。怠けるのは嫌い。常に何かを作り出し、貢献していたい。あの期間中も、違うことをいろいろやっていたし、今もプロデュースをしたり、テレビ番組をクリエイトしたりしているわ。それに誰も気づいてくれなかったとしても、全然かまわない」。
それでも、演技はやはり特別だ。50歳という節目の年に人生2度目のオスカーをもらったことを分岐点のように感じているかと聞くと、「ええ、断然、そう感じるわね」と、にっこり笑った。
「前の私にとって、これは、新しいことだった。何かを発見し、何かを築いているような感じ。違ったクリエイティブ体験を蓄積しているような、そんなジャーニーだったわ。今は違う。この仕事に、違った意味での喜びを感じる。それが、とても楽しい」。
そんな彼女は、女優として、これからもたくさんの映画に出ていくつもりでいる。「私はこの仕事が大好きだもの。前からそうだったし、これからも変わらないわ」。
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