劇場公開日 2020年3月6日

ジュディ 虹の彼方に : 映画評論・批評

2020年3月3日更新

2020年3月6日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

栄光と悲惨に彩られた伝説的な生涯。哀切で複雑なニュアンスに富んだ演技が見事

ジュディ・ガーランドフレッド・アステアと並んで20世紀のショー・ビジネス、映画史を代表する天才エンターテイナーである。

ジュディは子役でスタートし、「オズの魔法使」(39)の少女ドロシーに抜擢されて一躍スターダムに上り詰めたものの、ハードなケジュールをこなすためにMGM首脳部から興奮剤や減量剤、果てはアルコールまで大量投与された。その結果、神経を病んで自殺未遂、入退院を繰り返し、結婚を五回、カムバックを六回経験している。その栄光と悲惨に彩られた伝説的な生涯は、これまでにも何度かドラマ化されている。

ジュディ 虹の彼方に」は、そのような暴露的な波瀾万丈の一代記ではない。最晩年、一九六八年のロンドンのクラブ「トーク・オブ・タウン」のライブに出演した際のエピソードを中心に、ジュディの最後の華やぎの日々を控えめなタッチで描いている。ジュディ・ガーランドを演じたレネー・ゼルウィガーは〈トロリー・ソング〉〈サンフランシスコ〉〈オーヴァー・ザ・レインボー〉などのジュディの持ち歌を研究し尽くし、歌い込んでおり、とりわけジュディ独特の、笑っていても怯えた小動物のような暗さを垣間見せる“泣き笑い”の表情を見事に表現している。この哀切で複雑なニュアンスに富んだ演技によって、レネー・ゼルウィガーが第92回アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞したことはまことに喜ばしい。彼女が受賞のスピーチで語ったように、かつてジュディ・ガーランドは映画史に燦然と輝く大傑作「スタア誕生」(54)で本命と言われたもののオスカーを逃してしまい、失意の果てに、ふたたび薬物依存症に陥ってしまった経緯があるからだ。

ジュディの生涯最高のパフォーマンスは、MGM最後のミュージカル映画「サマー・ストック」(50)のラストで黒いスーツの男たちを従え、太腿も露わな網タイツ姿で「ゲット・ハッピー」を歌い踊る官能的なシーンだが、そこに漂う妖しいまでのゲイ・テイストはひと際、印象的だった。

現在、ジュディの存在自体が<ゲイのアイコン>と化しているのは有名だが、この映画のラストシーンが、深い感銘を呼び起こすのは、ハリウッドによって絶望の淵にまで追いやられたジュディと、歴史の闇のなかで疎外されていた性的マイノリティたちの熱い連帯が表明されているからである。

高崎俊夫

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る
「ジュディ 虹の彼方に」の作品トップへ