華やかなだけじゃない!ハリウッドを動かすゴールデングローブ賞の存在価値
2020年1月30日 13:00

[映画.com ニュース] 【ゴールデングローブ賞】アメリカで公開・放映・配信された映画とテレビドラマに与えられる賞。ハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)の会員の投票により選定される。毎年1月に発表され、アカデミー賞の前哨戦としての注目度も高い。

ゴールデングローブ賞は、出席するゲストの豪華さから「Hollywood's Party of the Year(1年で最高のハリウッド・パーティー)」などと呼ばれることがある。1月上旬に行われるイベントを早々と年間No.1にしてしまうのはどうかと思うけれど、この授賞式は映画だけでなくテレビドラマも対象で、しかも裏方の人をほとんど呼ばないから、セレブ密度がやたらと高いのは事実だ。実際、ブラッド・ピットからジェニファー・アニストン、ジェニファー・ロペス、エルトン・ジョン、テイラー・スウィフトら各界のそうそうたるメンツが定員わずか1300人程度の会場に集結することなど、そうあるものではない。

また、最近のゴールデングローブ賞はセレブリティの発信の場になりつつある。いまではそれぞれがSNSアカウントを活用しているから、自らの主義主張をファンにアピールできる。だが、世界200カ国以上で放送される番組などそうあるものではない。ハーベイ・ワインスタインのセクハラ騒動が勃発したのちに行われた2018年の授賞式では、受賞スピーチにおいて#MeTooやTimes Upに関するコメントが連発し、その後の大きなうねりに繋がった。

さて、第77回となった20年のゴールデングローブ賞では、オーストラリアの森林火災への支援や地球環境問題、女性の権利などさまざまなテーマが話題となった。意外にももっとも大きな注目を集めたのは「食」だった。ゴールデングローブ賞はホテルの宴会場で行われるため、ゲストは食事やアルコールを楽しむことができることで知られている。例年コース料理が振る舞われるが、今年は植物に由来する食材のみを用いたビーガンメニューとなった。地球温暖化対策の一貫として採用されたもので、ゴールデングローブ賞としてはもちろん、授賞式としても初めての試みだったが、これがセレブに大好評。その結果、米俳優組合賞やアカデミー賞の昼食会も追従することになった。

華やかなパーティーや新たなトレンドを生み出す場として注目されるゴールデングローブ賞だけれど、今年は映画賞としての存在価値もアピールできたと思っている。

アカデミー賞まで続く長い賞レースのなかで、ゴールデングローブ賞は折り返し地点に当たる。どの賞も似たりよったりの結果となってしまいがちだが、ゴールデングローブ賞の作品賞と主演俳優賞はドラマとコメディ・ミュージカルの2部門に分かれているため、通常の映画賞の倍の受賞者を生み出すことができる。そんななかで、次世代のスターとして期待される「ロケットマン」のタロン・エガートン(主演男優賞/コメディ・ミュージカル部門)と「The Farewell」のオークワフィナ(主演女優賞/コメディ・ミュージカル部門)に賞を授与できたのは意義深かったと思う。

最大のサプライズは、それまでの映画賞ではスルーされていた「1917 命をかけた伝令」に作品賞(ドラマ部門)を与えたことだ。個人的には、この映画を観たときから、作品賞は決まりだと確信していた。物語と技法がとてつもなく高いレベルで融合していて、まったく新しい映画体験を提供していたからだ。全編ワンショットという撮影テクニックばかりが注目されるけれど、舞台演出家として長いキャリアを誇るサム・メンデス監督だからこそ、緊張感に溢れた演技を引き出すことができたと思う。

ただし、他のHFPAメンバーがこの映画にどんな印象を抱いていたのかは知らなかった。対象作品についてメンバー同士で話し合ってはいけないことになっているし、みんな好みがバラバラで、ノミネート結果を見ても驚かされることが少なくないからだ。だからこそ、「1917 命をかけた伝令」がゴールデングローブ賞作品賞を受賞したとき、とても誇らしい気分になった。
その後、「1917 命をかけた伝令」は米製作者協会(PGA)賞と米監督協会(DGA)賞を受賞。アカデミー賞レースのトップランナーとなった。ゴールデングローブ賞が潮目を変えるきっかけとなったのは明白で、映画ファンの信頼に足る選考をすることの大切さをいまさらながら実感している。

さて、今年もすでにサンダンス映画祭が始まり、新たな映画シーズンが幕を開けている。どんな傑作と出会うことができるのか、いまから楽しみだ。(小西未来)
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