神木隆之介×浜辺美波×中村倫也、語り尽くす「屍人荘の殺人」
2019年12月17日 16:00

[映画.com ニュース] 第27回鮎川哲也賞受賞、第18回本格ミステリ大賞受賞のほか、国内主要ミステリー小説のランキングで軒並み1位を獲得した、今村昌弘のデビュー作にしてベストセラー「屍人荘の殺人」。密室殺人事件とその謎を解こうとする大学生探偵を描くだけなら他の作品にもみられる設定だが、本作が絶賛されるキモとなったのは、クローズド・サークル(閉ざされた空間だけでなく、その空間自体が孤立し、外界との往来が絶たれた状況を注すミステリー用語)。この舞台設定においてきわめて独創性が高く、読者の脳内で映像化することも易い、非常に分かりやすい物語でファンを熱狂させた。同じく映像化されて大ヒットした鈴木光司の「リング」が広まったときのような現象として、ミステリー小説界を席巻した。(取材・文/よしひろまさみち、写真/間庭裕基)
そんな作品が、待望の映画化。原作の舞台設定やキャラクターはそのままに、今の映画界を背負って立つ3人が主要キャストを務めた。主人公の探偵大学生・剣崎比留子を浜辺美波、ミステリー愛好会の葉村譲を神木隆之介、同会会長の明智恭介を中村倫也が演じている。

葉村役の神木と明智役の中村は「原作は出演が決まってから読んだ」と口を揃えるが、浜辺は「原作が話題になっているときに読んで、ものすごく好きになったんです」と、読書好きとしても知られる彼女にはまたとないチャンスとなった。
「比留子のキャラクターは、たまにものすごい毒を吐くクセの強さがあります。読んでいたときに、すごいなー、映画化したらどうなるんだろう、なんて思っていたので、この役をいただいたときは本当に驚きましたし、どうアプローチしていいのか、かなり悩みました。でも、脚本を読んでいくと、原作通りというよりも、もっとデフォルメされているキャラクターになっていたので、振り切って演じることにしました」
それを聞いた神木と中村は「さすが、ベーやん(浜辺の愛称)」と、現場入りする前のエピソードを語った。
「原作を読んだ後は、ベストセラー小説の映画化という期待を背負って立つというプレッシャーが生まれてしまったのですが、あまりにもおもしろい作品だったので、気負わずやらないと、と言い聞かせました。それに、そもそもあまり読書をするタイプではなかったのに、この作品をきっかけにミステリー小説にハマってしまいまして。浜辺さん、おすすめよろしくお願いします(笑)」(神木)
「僕の出演が決まったとき、2人の出演はすでに決定していたので、共演できるのを楽しみにしながら、原作を読みました。本当におもしろいですよね。しかも、僕が演じる明智って、いったい何歳なんだよ、っていう特殊なキャラクターじゃないですか。大学生役というよりも、社会に出たくないからミステリーにのめりこんでいる男と思ったら、自然とイメージはできあがりましたね」(中村)

物語の舞台は、大学の音楽フェス研究会の夏合宿で、宿泊先となった研究会OBが所有する山奥のペンション・紫湛荘。比留子と葉村、明智の3人は、研究会でささやかれていた不穏な噂を聞きつけ、その合宿に参加することに。すると、近くで行われていた音楽フェスの最中に事件が。3人と研究会のメンバー、それに紫湛荘に逃げ込んだフェスの客らは、そこに閉じ込められる。すると、その夜、ある人物が惨殺体で発見され……。奇々怪々の物語は原作そのままだが、映画化にあたりコメディ、青春の要素をプラスしている。
「深刻なシーンの撮影でも、常に和やかな現場で。初めて現場に入ったときは不安もあったのですが、共演の皆さんやスタッフの方みなさんのおかげですね」(浜辺)
「いや、なにげに怖いところは怖かったんですよ(笑)。特に、音楽フェスから紫湛荘に逃げるまでの過程は、演じていても追い詰められる感じ」(中村)
「こういうワンシチュエーションの映画は、本当に大変なことばかりなんですよね。セットの入れ替えとか、どこから撮るか、とか。撮影するまでにかなり準備時間がかかるので体力温存。僕が出演するシーンは浜辺さん演じる比留子が一緒ということが多かったので、浜辺さんにも“シーンの立ち位置決める前に、ソファに座っておきなよ”ってアドバイスしたりね(笑)」(神木)

本作のキモとなるのは、やはり謎解きの部分。これに関して中村は「僕からはノーコメント。ネタバレになりますからね(笑)」と、2人にバトンを渡す。
「葉村自身は謎を解くというよりも、比留子に振り回されている役なんですよね。自分から自発的に何かを暴こうという感じではない分、受け身の芝居をすればいい。ということで、浜辺さん演じる比留子に完全依存型でした。本当にすごいと思いますよ、浜辺さん。探偵の謎解きって、とにかくセリフが多くなるじゃないですか。その大量のセリフをもろともせずに、しっかり比留子になっていましたから。僕も探偵役は初主演したドラマ『探偵学園Q』でやっていますけど、あれは中学生のころだったからセリフが入ったようなもの。今やれっていわれても絶対無理です(笑)」(神木)
「そう言っていただけるのはうれしいんですけれど、あのセリフの量は大変でしたよ~。しかも、好きな小説の主人公というプレッシャーもありましたし、セリフだけに集中できる役ではなく、突拍子もないリアクションをとることも多かったですし。困ったら監督に相談をしていたのですが、監督も答えをくださるわけではなく、私達に任せてくれるんですよね。そうなったら、もう体当たりでいくしかありません。実際、動きが大きすぎて、頭にたんこぶを作ってしまいました(笑)」(浜辺)
文字通り体当たりとなった浜辺、普段は現場を引っ張る神木と中村にとっては、珍しく“受け身”の役柄。これまでに見たことのない彼らが挑んだミステリーの傑作。ネタバレは厳禁、スクリーンで見ないことには始まらない本作での彼らの活躍に期待してほしい。
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