TIFFの申し子・渡辺紘文監督、最愛の祖母の死乗り越え「新しい方向に進む」
2019年10月31日 20:35
渡辺兄弟は、2016年に「プールサイドマン」が同部門で作品賞を受賞するなど同映画祭と縁が深く、今年が5作目の参加。紘文監督は、「僕たちを育ててくれた場所にまた呼んでいただき、感謝しかございません」と感激の面持ちで話した。
「叫び声」は、養豚場で働く男を主人公に極限までセリフを排除したモノクロームの静ひつな人間ドラマ。豚舎の撮影は「プールサイドマン」と同時進行で進めていたそうだが、「豚小屋で働く人は、世界中の人が見たいだろうという衝動に駆られ撮っていたものを引っ張り出し、新たな映像を加えて作りました」と解説した。
セリフに関しても、「僕の作品は割と喜劇が多くて、前作までの3本がしゃべり尽くす男が主人公だったので、両極端の方が分かりやすいだろうと思った」と説明。撮影は常に韓国のバン・ウヒョンが手掛け、「10年以上一緒に作っているので、2人で延々と話し合い、現場でもさらに試行錯誤してはっきりとしたコンセプトを見つけた」と強調した。
また、これまで兄弟による映画制作団体「大田原愚豚舎」の全作品に出演していた祖母が今年8月に102歳で亡くなったことを報告。紘文監督は、「おばあちゃんが亡くなって、新しい方向に進まなくてはいけないとも思う。誰に止められようとも、死ぬまで映画を作っていく覚悟はできています」と決意をにじませた。
「叫び声」に出演した3人の子役を主人公にした新作を既に完成させていることも発表した。また、大田原愚豚舎の特集上映が東京・アップリンク吉祥寺で11月14日まで開催されている。
第32回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。