松尾スズキ&中山美穂 夫婦の心のすれ違いが抱腹絶倒の喜劇に! R18大人の艶笑譚「108」
2019年10月25日 15:00
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脚本家の海馬五郎が、自分より若い男への恋心を告白する妻のSNSを発見。離婚時の妻への財産分与を避けたいと、大金を使い果たすべく妻の投稿への“いいね”の数――なんと108人の女性を抱こうと決意する。こんな途方もないアイデアを映画というファンタジーで実現したのは希代の喜劇作家、松尾スズキ。10月25日公開の「108 海馬五郎の復讐と冒険」で脚本、監督、そして主演と3役をこなした松尾と、妖艶な美貌で疑惑の妻を演じた中山美穂が作品を語った。(取材・文/編集部 撮影/間庭裕基)
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五郎の妻・綾子を演じ、本作でコメディエンヌとして新たな一面を発揮した中山。「ひたすら面白いと思いましたね。読んでいて、想像できない部分もあって、これどうやって撮るんだろう……って。それが楽しみでしょうがなかったです。ひたすら妄想の世界なので、思いきり演じられるかなと思いました」と、期待を胸に新境地に挑んだ。
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そして松尾は「『Love Letter』には夢中になりましたね。昔は、岩井組の方という感じがしていましたが、そこから月日が経って女性としても人としても、酸いも甘いも乗り越えていらっしゃるでしょうから、やりがいのある役にしてあげたいな、という気持ちがありました。これまでやらなきゃいけない仕事がいっぱいあったと思うんです。そこから、“やりがいだけの仕事”だけ、みたいなことになればいいなと思って、演出しておりました」と数々の才能を見出してきた演出家ならではの胸の内を明かす。
妻の綾子以外にも、坂井真紀が演じる五郎の妹マリ、前妻のエイドリアン(LiLiCo)、五郎の古くからの友人の美津子(秋山)、そのほか五郎に近づく女優志望の若い女性、高級デリヘル嬢ら、ワケありとも言える様々な立場の女性たちが五郎を癒し、励まし、そして翻弄する。松尾の鋭い観察眼から生み出された女性キャラクターは、美点とともに、女のしたたかな一面も描かれている。
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「男もずるいけど、女もずるいですからね。ずるい部分が自分の心の中にあるにもかかわらず、ある種の筋を通そうっていう、その矛盾が面白い」といい、「綾子は、この物語のシリアスな部分を一手に背負っているんです。後半、中山さんがビジネスホテルでひとりでスマホを眺めているシーンが泣けてしょうがない。孤独なんだろうな、今、さみしんだろうなって。引くに引けない事情もあるからスマホ見るしかないって。そこが笑えるところだし、次のシーンでは、実はこんなことしてたんだ、ってバレちゃう。特に、最後の大きな木の下でのシーンが大好きで。コメディなのに、最後の方はだんだんコメディではなくなってしまうんです」と複雑な女心を丁寧に掬い取った。
中山も、「女性キャラクターの一人ひとりが何かを抱えているという設定が切ない。でもそれが笑いになって、面白くなってしまうのが不思議でしょうがないんです。それは、どんな女性もそれぞれ持っているものを強調しているから。だから皆が理解できるのだと思います」と同調する。
妻は若いダンサーに思いを寄せ、それを知った夫は肉体的な浮気で復讐しようと考える。「どこか、男は浮気はセックスから、という都合のいい解釈の仕方をしますよね。心は目に見えないですからね。パートナーがいて、どこまで心が自由になっているか、そこはブラックボックスですから。こわいですよ」と本音を吐露する松尾。
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50人以上の男女が入り乱れる“女の海”に、島ごと買い占められる“女島”と、最終的には天国か地獄かわからない場所に追い込まれる五郎。そういった描写からR18+指定となった。「セックスシーンはいっぱい出てきますが、それをいやらしく書こうとは全く思っていませんでした。笑いの要素のひとつとして見せたかったんです。ただ、中山さんの絡みのシーンは、五郎の妄想で、そこがいやらしいから嫉妬して燃え上がる……という理由でセクシーに撮りたかったですね。でも、そのシーンはR18にならないんです。ただ、“女の海”のシーンはどうにもならなくて。あの話を終わらせるためにはあれしかなかった。映画的な画のカタルシスがほしかったんです。それがR18にせざるを得なかった理由です」と明かした。
中山はそんな松尾の企てに苦笑しながらも「松尾さんの世界を傷つけてはいけないなと思っていましたが、どっぷり浸かれてうれしかったです。こんな新しい世界に自分が入ることができたなんて信じられない。主演も脚本もやられる松尾さんは、本当に天才だと思いました」と笑顔で撮影を振り返った。
芸達者な役者陣が、大真面目に馬鹿げたシチュエーションを演じ、最後はほろりとさせられる人間味溢れる大人の艶笑劇。様々な表現が規制される時代だからこそ、大スクリーンで楽しんで欲しい一作だ。
(C)2019「108 海馬五郎の復讐と冒険」製作委員会
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