劇場公開日:1995年3月25日
解説
「Undo」「花とアリス」の岩井俊二監督の長編第1作。事故で婚約者の樹を亡くした博子は、国道になってしまったという彼が昔住んでいた住所に届くはずのない手紙を出した。しかしその手紙は、婚約者と同姓同名の女性のもとへ届き、2人の不思議な文通が始まるのだった。中山美穂が博子と手紙を受け取る女性、樹の2役を演じ話題となった。
1995年製作/113分/日本
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1995年3月25日
劇場公開日:1995年3月25日
「Undo」「花とアリス」の岩井俊二監督の長編第1作。事故で婚約者の樹を亡くした博子は、国道になってしまったという彼が昔住んでいた住所に届くはずのない手紙を出した。しかしその手紙は、婚約者と同姓同名の女性のもとへ届き、2人の不思議な文通が始まるのだった。中山美穂が博子と手紙を受け取る女性、樹の2役を演じ話題となった。
1995年製作/113分/日本
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1995年3月25日
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渡辺博子さん。
あなたは、あいつのどこが良かったの?
亡くなって三回忌を迎える婚約者に踏ん切りをつけ、想い出としてだけ抱いて前に進もうという気持ちだったのかも知れません。
卒業アルバムから拾った、今はもう国道敷になっているという樹(いつき)君の住所に宛てて、博子が亡き婚約者にラブレターを送ったというのは。
それが、たまたま同姓同名で同性の樹(いつき)さんに受け取られたというあたりから、「岩井ワールド炸裂」とでもいうべき次第と相成ります。
踏ん切りをつけようとしたはずのラブレターだったのに、同じ世代を生きている樹さんによって、却(かえ)って亡き樹君への想いが募ってしまったといえる、ある意味では皮肉な構図なのですけれども。
そして、本作では「おまけ」として、クラスメイト時代の樹さんと樹君との仄(ほの)かな関係性も、本作の「二重(ふたえ)のらせん構造」として仕込まれていたのだろうとも思います。
ちょうど、遺伝情報(記憶)を伝えるDNAが、独特の二重のらせん構造を持っているように。
(たとえば、図書カードの裏面に、密(ひそ)かな細工をしても気づかれないよう、誰も借りないような本ばかりを借りて、最後の最後に、その本の返却をさりげなく樹さんに頼むような小細工だとか。)
そういうフアンタジーの効果も冴えて、観終わって、しっとりとした、それでいて溢れるようなたっぷりの情感の残る一本として、これも「岩井監督らしい」佳作であったと思います。
評論子は。
(追記)
作中では、本の返却を自宅で服喪中の樹さんに頼んだ時の樹君の表情が、評論子には、忘れられません。
図書カードの細工に樹さんが気づいてくれるか、くれないか、その期待と不安。
そのなんとも言えないような不安定な気持ちが、樹さんに対する「取って付けた」ような樹君の悔やみの言葉になり、その不安定な語調を感じ取った樹さんも、つい吹き出してしまう…。
その情感も、評論子には素敵な一本でもありました。
(追記)
作品の本筋とは何の関係もないことで恐縮ではありますけれども。
飛んでいる飛行機が、日本エアシステムの機体だったり、(博子の文通相手の)樹さんが使っていたのが、パソコンではなく、明らかにワープロ専用機だったり(シャープ製の書院?東芝製のルポ?)、往時を知る者としては、懐かしくもありました。
(JAS・日本エアシステムが日本航空に身売りをしたのは、後のことです。TDA・東亜国内航空の機体でなかっただけでも、まだ「新しい」ともいえるでしょうか。)
往時の樹君が走っていたグラウンドの写真を撮ってもらうにしても、動画で撮影してメールで送ってもらうのではなく、ポラロイドカメラを送り付けて頼むあたりも、その意味では、なかなか「味わい」がありました。
(追記)
「救急車の到着までに1時間」…冬場の北海道の地方都市なら、当時としては、あり得なくもないだろうと思います。
そして、状況としても、正に今、降りしきる雪の中で、何とかして道路を啓開して交通を確保しようと道路管理者(国道であれば北海道開発局?北海道道であれば北海道庁の小樽建設管理部?)が除雪車両を投入して必死の除排雪作業の真っ最中―。
そんな状況では、無理もないことでしょう。
いかに救急車とはいえ、悪路を走るにしては、ふつうのワンボックス車に過ぎないわけですから。
(ましてや、小樽は「坂の街」)
これも、小樽の色彩がたっぷりのエピソードでもあったと思います。
評論子は。
感動の名作。
博子(中山美穂)と小樽に住む樹(中山美穂)の手紙のやり取りがミステリアスで面白い。
この作品からインスパイアされたと言われる有名な手紙のやり取りのラブストーリーの『イルマーレ』(2000年・韓国映画)との大きな違いはSFではないところ。
意味のある一人二役で良かった。
視聴中、一瞬どっちの中山美穂さんか迷う。
豊川悦司さんが傍におるほうが関西やろ、ほんで雪景色のほうは北海道の小樽だべ。
回想シーンの樹(酒井美紀)も中山美穂さんが演じても良かったかもしれない...って、そしたらもっとややこしくなるやん、ますますわかんねぐなるべさ。
郵便配達員が「ハンコください」というセリフが好き。今はあまり聞かなくなったので昭和生まれの私には懐かしい響き。
ポラロイドカメラで現在の校舎を撮影し、在校していた生徒たちに「本人に会えた」と言われるくだりは泣ける。さらに追い打ちで「好きな人の名前」という考え方に驚き、同時に感動がMAX状態になった。
そして「わがままな女」が「お元気ですかー私は元気です」を繰り返すのを秋葉(豊川悦司)が笑顔で見守るシーンも涙腺崩壊ポイントのひとつ。
『失われた時を求めて 第7篇』(著者 : マルセル・プルースト)をピックアップする岩井俊二監督のインテリジェンスと、藤井樹(柏原崇)の過去の恋と秋葉の現在進行形の愛の描き方の巧みさに脱帽。
「青春18×2 君へと続く道」を観たら「love letter」が題材になっていて、そういえば「love letter」を観ていなかったなと鑑賞。
さすがの岩井俊二、少女の描き方が秀逸です。
少女漫画の世界だよ。