SKIPシティの国際コンペ部門最高賞は合作アニメ作品に栄冠

2019年7月22日 13:00

国際コンペティション部門の審査委員長を 務めた三池崇史が「ザ・タワー」を絶賛
国際コンペティション部門の審査委員長を 務めた三池崇史が「ザ・タワー」を絶賛

[映画.com ニュース] 「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019」のクロージングセレモニー(表彰式)が7月21日、埼玉・川口市のSKIPシティ映像ホールで行われ、ノルウェー、フランス、スウェーデン合作のアニメ「ザ・タワー」(マッツ・グルードゥ監督)が最優秀作品賞(賞金100万円)と観客賞をダブル受賞した。アニメ作品の長編コンペティション部門は初選出、初の最高賞受賞となった。

「ザ・タワー」は、70年間レバノンの難民キャンプで暮らす曽祖父と少女の深い絆を軸に、4世代に渡る難民一家の歴史を77分で描いたもの。グルードゥ監督は、これがデビュー作となるノルウェー人のアニメーション作家。2018年、仏アヌシー国際アニメーション映画祭でプレミアされている。

プロデューサーのパトリス・ネザン氏は、「難民の問題は日本の方には縁遠いテーマかもしれませんが、観客からは多くのフィードバックをいただきました。本作は監督自身が難民キャンプで過ごした経験を基にしたものです。現実を忠実に描きたい、という思いがあり、製作に8年かかりました。監督は繊細で人間性あふれる人で、きっちり寄り添う贅沢な経験となりました」と挨拶した。

国際コンペティション審査委員長の三池崇史氏は「『おめでとう』ではなく、『素晴らしい作品をありがとう』と言いたい。審査員の総意として選ばせていただいた。審査員は映画に関わっている個性的な4人が集まったわけですが、観客の意見と一致したことは素晴らしいこと。自分は勉強しなかったので、世界の歴史を知っているわけではないですが、レバノンで生まれたパレスチナの少女と心を通わせることができた。監督はノルウェー人ということにも映画の可能性を感じた。日本のすべての人が見るべき作品。自分がなくした優しさを取り戻すことができた」と大絶賛だった。

国内作品を対象に、今後の長編映画製作に可能性を感じる監督に対して授与する「SKIPシティアワード」には、磯部鉄平監督の「ミは未来のミ」が決まった。不慮の事故で亡くなった仲間のために、主人公(櫻井保幸)たちがある行動を取るという青春ストーリー。本作が初の長編となる磯部監督は「映画祭の期間中、サンダルで歩いていたら怒られたので、昨日、靴を買いました」と笑いを取った上、「昨年、短編部門でグランプリ(『予定は未定』で優秀作品賞)を取った時に、『SKIPに帰ってきたい』と言っていたんですが、賞までもらえてうれしい」と喜んだ。

国内コンペティション部門の審査委員長の荻上直子氏は「『ミは未来のミ』は童貞男子たちの行動がおかしかった。デジタル化が進み、作品全体のクオリティがアップした。一方、パッションに満ちた映画は見せてもらえていない気がした。私も自主映画出身。みなさんも10年後、20年後も作り続けてください」と後輩作家たちにエールを送った。

同映画祭は “若手映像クリエイターの登竜門”。これまで「凪待ち」の白石和彌監督、「長いお別れ」の中野量太監督、「ピンカートンに会いにいく」の坂下雄一郎監督、「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督、「岬の兄妹」の片山慎三監督らを輩出した。16回目の今年は92の国と地域から658作品(海外591作品、国内67作品)から長編映画の応募があり、国際コンペティション部門は10作品、国内コンペティション長編部門は5作品、国内コンペティション短編部門は203本の応募から9作品が上映された。

●国際コンペティション部門
最優秀作品賞(賞金100万円)
「ザ・タワー」(マッツ・グルードゥ監督)

監督賞(賞金各25万円)
「イリーナ」(ナデジダ・コセバ監督)
「陰謀のデンマーク」(ウラー・サリム監督)

審査員特別賞(賞金30万円)
ミッドナイト・トラベラー」(監督:ハサン・ファジリ)

観客賞
「ザ・タワー」(マッツ・グルードゥ監督)

●国内コンペティション賞
SKIPシティアワード
「ミは未来のミ」(磯部鉄平監督)

優秀作品賞(長編部門)
「サクリファイス」(壷井濯監督)

優秀作品賞(短編部門)
「遠い光」(宇津野達哉監督)

観客賞(長編部門)
「おろかもの」(芳賀俊、鈴木祥監督)

観客賞(短編部門)
歩けない僕らは」(佐藤快磨監督)

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