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予想外の経歴! 片山慎三監督作「岬の兄妹」を生き抜いた松浦祐也&和田光沙とは何者か

2019年3月20日 21:00

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WEB番組「活弁シネマ倶楽部」に出演した「岬の兄妹」チーム
WEB番組「活弁シネマ倶楽部」に出演した「岬の兄妹」チーム

[映画.com ニュース]“映画を語る”をテーマとしたWEB番組「活弁シネマ倶楽部」の収録が3月15日、東京・浅草九スタで行われ、「岬の兄妹」(公開中)のメガホンをとった片山慎三監督、キャストの松浦祐也和田光沙が出演。映画評論家の森直人氏がMCを務めたトークを、映画.comが取材した。

足に障がいを持つ兄・良夫(松浦)と自閉症の妹・真理子(和田)が、貧困から脱するため、売春で生計を立てようとするさまを描く。センセーショナルな内容もさることながら、本作の確固たる力となっているのは、松浦と和田の存在だ。終始大盛り上がりだったトークでは、パイロット版を経て現在の作品が生まれるまでの経緯や製作費、映画の神様がほほ笑みかけた瞬間、劇中屈指の名シーン“ウンコバトル”の秘話に言及するだけでなく、2人の意外な過去が明らかになる場面があった。

高校卒業後、職人の道を歩み、圏央道や大江戸線・六本木駅のトンネル工事に参加していた松浦。転機となったのは、当時交際していた女性との“映画体験”だ。「劇場に行ったら目当ての映画がやっていなくて、その時アテネフランセで見たのが小川紳介監督の特集上映。『三里塚 辺田部落』を見たんですが、すげぇ作品があるなと思って。『ぼくらの七日間戦争』『ロボコップ(1987)』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』しか見ていなかったのに、それをいきなりぶち込んじゃった(笑)」と心機一転映画業界へ。「それからシナリオをずっと書いていたんですけど、ある低予算Vシネマのプロデューサーに『現場に出ろ』と言われて、制作部に。見習いから初めて、進行、最後は主任までいった」と明かし、その後、俳優・曽根晴美さんの付き人を経て、俳優デビューを飾っていた。

一方の和田も異色の経歴の持ち主だ。「10年以上前の話なんですが、元々ヤマト運輸のドライバーだったんです。当時、新卒でヤマトのドライバーになる女性としては初の世代。物を届ける仕事がしたかったんです。でも、手厚い待遇だったので早めに辞めないと役者になるタイミングを逃すなと思って(笑)。本当は辞めたくなかったんですけど、きっぱり辞めた後、緒方明監督のワークショップに参加しました」と打ち明けて「靴が浜温泉コンパニオン控室」で女優としての活動をスタート。「(ワークショップは)10年選手ばかりの役者さんが集うなか、私だけがド素人。緒方監督はそれを心配されたのか、講師をされていた日本映画大学の実習に役者として呼んでくれたんです。そこにいったら色んな方と知り合うようになりました」とエピソードを披露した。

公式Tシャツを忘れたため、自身のタンクトップにイラストを描いた松浦
公式Tシャツを忘れたため、自身のタンクトップにイラストを描いた松浦

本作を激賞し続けている森氏は「現在の日本映画界のシステムでは、これだけチャーミングで実力のある人たちの主演映画ができにくいという状況があった。でも、今回片山監督が動いたおかげで“日本映画界の隠れた実力者たち”の力が全くぬるくないということが示された。『岬の兄妹』の存在自体が、今の日本映画の状況に対する批評になっている」と説明。さらに松浦と和田の出会いが、竹洞哲也監督が手がけた“最後のフィルム撮影のピンク映画”だったことから「ピンク映画というのは、撮影所システムの端っこにちょっと引っかかっていると言えるような気がします。だからこそ、ピンク映画の“尻尾”からお2人が出てきたというのは、映画史的に重要な気がする」と分析していた。

「(作品が)どういう風に広がっていくか楽しみ」と公開後の心境を吐露した片山監督は、改めて作品を鑑賞した際、ある気づきがあったようだ。それは“最も悪い人物”が、良夫の友人であり警察官の溝口肇北山雅康)なのではないかということ。「良夫と真理子を助けられるのは彼しかいないんですが、お金を貸すことはあっても、彼らを行政に委ねたり、逮捕したりはしない。ある種面倒は見ているが“一線は越えていない”。肇を見て共感できる人は、今の日本を代表するメンタリティを持っている気がします」と語ると、森氏は「それは僕もイタイ話。もしかしたら皆にとってもイタイ話なのかもしれない。本当に2人のことを考えているのならば、警察としての権力を行使して(線の内側に)踏み込んでいたのかもしれませんが、彼はしない。いわゆる傍観者だった」と切り返していた。

次回作に話題が及ぶと「何本もやりたい題材はありますよ。“和歌山毒物カレー事件”とか興味ありますね。めちゃくちゃお金がかかっている大作もやりたい」と打ち明けた片山監督。「ちなみに監督が一番好きな監督は誰なんです?」と松浦から問いかけると、マーティン・スコセッシデビッド・フィンチャースタンリー・キューブリックの名を挙げる。「そういえば試写会の楽屋で、自分をフィンチャーに例えだしてましたよね? まだ『セブン』を撮っていないと(笑)」という森氏の発言を受けると「“和歌山毒物カレー事件”が『ゾディアック』だとしたら、自分はその前に『セブン』のようなものを撮らなくてはいけない。(『岬の兄妹』は)『エイリアン3』、スコセッシでいうところの『ミーン・ストリート』。次は『タクシードライバー』のような作品を」と笑いながらも野心をみなぎらせていた。

「活弁シネマ倶楽部」(第20弾「岬の兄妹」)は、YouTube(https://youtu.be/9TaIM__h_40)で配信中。

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