白石和彌監督、ほぼノーミス映画「岬の兄妹」が報われなければ「日本映画に未来はない」
2019年1月27日 15:30
[映画.com ニュース]SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の国内コンペティション長編部門の優秀作品賞と観客賞に輝いた「岬の兄妹」が1月26日、東京・京橋の国立映画アーカイブで上映され、メガホンをとった片山慎三監督とゲストの白石和彌監督がトークイベントに出席した。
上映企画「Rising Filmmakers Project 次世代を拓く日本映画の才能を探して」の1本として上映された「岬の兄妹」は、ポン・ジュノ作品や山下敦弘作品などで助監督を務めた片山監督の初長編作。足に障害を持つ兄・良夫(松浦祐也)と自閉症の妹・真理子(和田光沙)が、貧困から脱するため、売春で生計を立てようとするさまを描く。「映像塾」(主催:中村幻児監督)出身の繋がりで対談相手として招かれた白石監督は「演出に力がある。光の使い方、音の設計、ほぼノーミスな感じ。松浦祐也をずっと見ていられる幸せ、和田光沙の肉体性。俳優冥利に尽きる作品です」と激賞した。
「ロストパラダイス・イン・トーキョー」で知的障害を持つ兄のためにデリヘル嬢を呼ぶ弟という同作に近しい設定を組み込んでいたことから「和田さんの芝居はどの程度コントロールしていた?」と質問した白石監督。片山監督は「撮影初日に“手の動き”への要望を出しましたが、あとは撮影を進めながら細かい修正をかけました。ある程度は任せて、アドリブもやっていただきましたし、参考資料としてドキュメンタリー『ちづる』を見てもらって研究してもらいました」と回答した。すると白石監督は「片山監督の力強さのひとつは、シーンごとの役者のファーストポジション。そこからの動線の作り方、奥行きの広がり方は、和田さんの動きがアクセントになっている」と分析し、この技量は「どんなジャンルでも対応できる」と話していた。
そして白石監督は「自主映画の体制で重要になってくるのは、面倒くさいシーンやカットをいかに作れるか。それが自然に存在している」と振り返り、観客の爆笑をかっさらった“ウンコバトル”、セックスの相手が体勢を変えるごとに次々と入れ替わるシーンに言及。緻密な計算が成されたセックスシーンは「撮影に8時間かかった」(片山監督)と聞くと、「多分ああいうカットは助監督をやっていないと思いつかない」と納得の表情を浮かべた。
「こういう映画が多くの人に見られないと…」と胸中を吐露した白石監督。「今村昌平、ATG、日活ロマンポルノ――偉大な先人たちが『お金がなくても絶対にこういうことをやりたい』というなかでやってきた系譜にある作品。特に松浦さん、和田さんがこういう作品で報われていかないと、日本の映画に未来はないかなと思う」と思いの丈を述べると「(公開されれば)片山監督に新たなオファーが来るはず。商業映画のなかでもポジションを見つけていけるんじゃないかな」と大きな期待を寄せていた。
「岬の兄妹」は、スウェーデンで開催されるヨーテボリ国際映画祭のコンペティション部門「イングマール・ベルイマン賞」への正式出品も決定している。3月1日から全国公開。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
八犬伝 NEW
【90%の観客が「想像超えた面白さ」と回答】「ゴジラ-1.0」監督も心酔した“前代未聞”の渾身作
提供:キノフィルムズ
今から映画館へ行くなら、絶対に読んでほしい
【追加料金ナシで映画体験を“極上”にグレードアップ】「こんなにすごいの!?」と驚く体験をあなたに
提供:TOHOシネマズ
ヴェノム ザ・ラストダンス
【はじめてのゔぇのむ】未見の人に1作目を観せたら「マジ傑作。早く観とけばよかった」的に感謝された
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
ジョーカー フォリ・ア・ドゥ
【ネタバレ解説・考察】あのシーンの意味とは? “賛否両論の衝撃作”を強烈に観たくなる徹底攻略ガイド
提供:ワーナー・ブラザース映画
映画史に残る“サイコパス”爆誕
【伊藤英明演じるナオキがヤバすぎる】最愛の妻を何度も“作り直す”…狂気的な愛にブッ飛ぶ覚悟は?
提供:Prime Video
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
惑星クリプトXの研究施設では、宇宙ザメと宇宙植物が秘密裏に育てられていた。しかし宇宙船が隕石にぶつかり地球に落下。その際にサメ型クリーチャーも地球へと送り込まれてしまう。宇宙船が落下した荒野では、麻薬中毒のセラピーを受けていた若者たちが、地球の環境に適応し狂暴になったサメ人間 <シャークベイダー>に次々と襲撃され殺されていく!残った彼らは、宇宙船唯一の生き残り・ノーラと合流し、荒野からの脱出を試みるが…果たして、宇宙ザメと宇宙植物の恐怖から逃げ延びることはできるのか!
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
2012年に逝去した若松孝二監督が代表を務めていた若松プロダクションが、若松監督の死から6年ぶりに再始動して製作した一作。1969年を時代背景に、何者かになることを夢みて若松プロダクションの門を叩いた少女・吉積めぐみの目を通し、若松孝二ら映画人たちが駆け抜けた時代や彼らの生き様を描いた。門脇むぎが主人公となる助監督の吉積めぐみを演じ、「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」など若松監督作に出演してきた井浦新が、若き日の若松孝二役を務めた。そのほか、山本浩司が演じる足立正生、岡部尚が演じる沖島勲など、若松プロのメンバーである実在の映画人たちが多数登場する。監督は若松プロ出身で、「孤狼の血」「サニー 32」など話題作を送り出している白石和彌。
若松孝二監督が代表を務めた若松プロダクションの黎明期を描いた映画「止められるか、俺たちを」の続編で、若松監督が名古屋に作ったミニシアター「シネマスコーレ」を舞台に描いた青春群像劇。 熱くなることがカッコ悪いと思われるようになった1980年代。ビデオの普及によって人々の映画館離れが進む中、若松孝二はそんな時代に逆行するように名古屋にミニシアター「シネマスコーレ」を立ち上げる。支配人に抜てきされたのは、結婚を機に東京の文芸坐を辞めて地元名古屋でビデオカメラのセールスマンをしていた木全純治で、木全は若松に振り回されながらも持ち前の明るさで経済的危機を乗り越えていく。そんなシネマスコーレには、金本法子、井上淳一ら映画に人生をジャックされた若者たちが吸い寄せられてくる。 前作に続いて井浦新が若松孝二を演じ、木全役を東出昌大、金本役を芋生悠、井上役を杉田雷麟が務める。前作で脚本を担当した井上淳一が監督・脚本を手がけ、自身の経験をもとに撮りあげた。