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「足りない二人」佐藤秋&山口遥が新宿ピカデリー上映という“夢”を掴むまでの軌跡

2019年1月17日 12:00

山口遥(左)&佐藤秋「きみはいい子」

山口遥(左)&佐藤秋
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[映画.com ニュース] 新進の30代俳優2人が“映画ドリーム”を掴むべく、約5年の歳月をかけて力強い1歩を踏み出した。「親密さ」(濱口竜介監督)の佐藤秋と、「きみはいい子」(呉美保監督)の山口遥が監督&脚本&主演を兼ねた映画「足りない二人」が、2月21日に東京・新宿ピカデリーで披露される。映画製作未経験だった2人は、どのように同館での上映を実現させたのか。(取材・文・撮影/編集部)

このサクセスストーリーを辿る前に、まずは佐藤と山口の“演じる者”としての始まりを明かしておくべきだろう。美大出身の佐藤は在学時に経験した挫折、山口は幼少期から心の中に抱いていた表現者としての信念を貫くべく、俳優の道を突き進んでいる。

佐藤「予備校に通っている時、グラフィックデザインを筆や鉛筆でやっていたんです。これを職業にしたいと思っていたんですが、いざ大学に入ると『今はデジタル、PCの時代』と言われてしまい、入学時点で目標を失ってしまったんです。その後、別の美大の文化祭でやっていた舞踏を目の当たりにして、自分を媒体にした作品を作るという面白みに気づきました。舞踏自体は経験しなかったんですけど…、夢を追っていたかったんだと思います」


“陸の孤島”で暮らす漫画家カップルを描く「きみはいい子」

“陸の孤島”で暮らす漫画家カップルを描く
(C)2017 UNUS Inc.
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山口「5歳からバレエをやっていて、その後ダンス、歌手を目指したり。とにかく表に出る人になるんだと思っていました。芸能事務所にも入りましたが、結局辞めて、普通に働いて――そんな時に東日本大震災が起こって、このまま死ぬのは嫌だなと思ったんです。諦めていた演技ともう1度向き合いたかった。その後、ある映画の現場に参加したんですが、何もできなかった。自分の思うようにできないからやる。課題がどんどん出てきて、“悔しい”という気持ちが継続へと繋がっていきました」

2011年、2人は瀬々敬久監督のワークショップに参加。恋人役を演じたことをきっかけに、実生活でも交際をスタートさせた。本作の始まりとなったのは、14年6月のこと。佐藤が脚本執筆を開始した。「自分たち俳優が長い年月続けていくことを考えた時、ただ事務所に入ることを目指しているだけではいけないと感じたんです。やはり土台のようなもの、自分たちを所属させておく場所というのは、自ら作らなければいけないと思ったんです」と当時を振り返る佐藤。苦心の末に紡ぎあげた物語は、殺人鬼が登場するような現実離れした内容――その脚本の映像化を依頼したのは、「人のセックスを笑うな」で知られる井口奈己監督だった。

だが、希望を胸に抱いたオファーへの返答は「自分たちで監督、主演したらいいのでは?」というもの。「(当時は)やりたいことと、やっていることがちぐはぐでした。物語の内容と、監督していただける方の相性がマッチするかというよりも、どうやって映画を作るのだろうという気持ちが優先していた」という佐藤は、14年9月に脚本執筆を山口にバトンタッチ。その後、ある映画監督の共同企画も持ち上がるが、諸事情により製作は断念。そんななか、山口は自分達で監督を兼任する決意を固めた。


極寒の撮影は悪戦苦闘「きみはいい子」

極寒の撮影は悪戦苦闘
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ストーリーだけでなく「何もない二人の日常」「中年放浪記」とタイトルも変遷していった「足りない二人」。舞台となるのは、北海道・積丹郡美国町。共同で漫画作家をしている小山内(佐藤)と楓子(山口)が、行き詰まる日々を変えるべく、勝負の1本として自分たちをテーマにした作品に着手。「2人で描けば、絶対に面白いものになる」と未来に希望を抱く小山内に対して、30歳の誕生日を目前とする楓子は「2人でいるから、うまくいかない」と将来に不安を募らせていく様が描かれていく。

物語のテイストが固まったのは、15年6月に行われた北海道でのシナリオハンティングの時。本作の魅力のひとつは、複雑な入れ子構造にある。実生活で交際中の佐藤と山口、漫画を描くカップルの小山内と楓子、そんな2人が創造する漫画の世界の恋人たち――三重の入れ子構造が極めて異色だ。16年1月から始まった撮影は、北海道の厳冬に苦しむことになった。衣装やスケジュール管理、美術やロケ地交渉に加え、撮影を寸断する灯油の確保や雪かき。疲労困憊した2人は“眠りながら演技をする”ことさえあったようだ。

「自分たちで監督をするならば、好きなロケ地でやりたい」という思いを貫く2人をサポートしたのは、現地の人々だ。キャラクターの設定に、同所に住んでいるからこそわかる助言を与え、キャストとして出演するだけでなく、苦難続きの撮影を裏方として支え続けた。「『きみはいい子』のボランティアスタッフの方に、本作の話をしてみたら『協力しますよ』と言っていただき、色々な人を集めてくれました。その方々にロケハンに連れて行ってもらうなかで脚本のヒントを得られたことがあったんです」(山口)と現在でも感謝の念は絶えない。やがて、16年4月に小樽市でクランクアップ。編集期間を経て、17年4月に所属芸能事務所及び映画製作・配給会社『株式会社UNUS』を設立させた。

脚本執筆前から会社設立の構想を練っていた佐藤は「自分たちでやっていかなければ成り立たない反面、自分たちで好きなようにできる。ある意味強くなりましたね。自ら調べること――それが視野の広がりとなったんです」と胸中を吐露。2人が製作前から目指していたのは、新宿を代表するシネマコンプレックス型映画館(新宿ピカデリー、TOHOシネマズ新宿、新宿バルト9)での上映だ。「この目標が人が離れていく理由のひとつでもありました。無謀というか…今考えると、皆優しく諭してくれていたと思うんです。でも、僕たちは自分たちで動いて、『(これまで)なかったことを考え出したい』と思っていたんです」(佐藤)という言葉に、山口も同調する。


“場内満席”を目指して奮闘中!「きみはいい子」

“場内満席”を目指して奮闘中!
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山口「初の長編という1度きり。だからこそ、自分たちが見てほしいと思える映画館で上映したいと思っていたんです。私たちは“俳優”として出たいという気持ちが強かった。そうなると順当なやり方では違うと感じたんです」

作品の認知度を高めるために行ったのは、WEB配信番組「掴め!映画ドリーム」。動画配信の企画として各劇場の運営元である松竹、東宝、東映に対して、問い合わせフォームから上映依頼のメールを送ったが、約1カ月音沙汰はなかったようだ。そのため「心が折れかけ、(番組の)配信も止めていた」(佐藤)という。だが、そこへ松竹の関連会社から「一度話を聞かせてほしい」という吉報が届く。「こちらは阿波踊り状態(笑)。電話がかかってきて、(山口が)急に踊り出して」(佐藤)、「あんなに心が躍った電話はない」(山口)とまさに青天の霹靂(へきれき)だった。

現在は宣伝活動の真っ只中。「掴め!映画ドリーム」でのゲスト対談、企業とのコラボ試写など“場内満席”に向けて余念がない。宣伝活動で実感しているのは、人との縁だ。番組出演者、チラシ配りで出会った人々の繋がりが集客へと結びついている。「今まで生きてきたなかで断片的に関わってきた人との繋がりを、宣伝期間で物凄く実感しています。無駄はなかった」としみじみと語る山口。「デジタル世界の宣伝は拡散力がある」と前置きした佐藤は「それは自分達にとっては実感が薄い気がしています。(人と直接対面する)“小さな宣伝”と一緒に行動することが、自分達にできる最大限の活動なのかな」と思いの丈を述べ、撮影地・北海道での上映、全国展開への思いを馳せた。

「自分たちが先頭をきる」というスタイルを変えず「2人でコントロールできる映画作り」を今後の目標に掲げた佐藤と山口。公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCmcdXcsG_nBTr6rdYCcvOiA)では「俳優としての居場所づくり」として始まった本作の軌跡が確認できるが、今回の上映実現は単なる“奇跡”ではなく、当然の結果だろう。2人の情熱、作品の質に心動かされた人々の力が絡み合い、「足りない二人」は“上映に相応しい場所”へと導かれたのだ。

(映画.com速報)
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