映画.comでできることを探す
作品を探す
映画館・スケジュールを探す
最新のニュースを見る
ランキングを見る
映画の知識を深める
映画レビューを見る
プレゼントに応募する
最新のアニメ情報をチェック
その他情報をチェック

フォローして最新情報を受け取ろう

検索

「翳りゆく父」に影響を与えた作品は「ミツバチのささやき」

2018年11月3日 11:00

リンクをコピーしました。
ガブリエラ・アマラウ・アウメイダ監督と ロドリゴ・サルティ・ウェルトヘイン
ガブリエラ・アマラウ・アウメイダ監督と ロドリゴ・サルティ・ウェルトヘイン

[映画.com ニュース] 事故で母親を亡くした少女ダルヴァ。悲しみに暮れる彼女を、父親はどう扱っていいのか全く分からず、苛立ちばかりを募らせてしまい、2人の間には会話が成立しないほどに。やがてダルヴァは、超自然的なことを信じていた母と叔母の影響で、おまじないごとに執心する。そして、彼女は母親を生き返らせることが、唯一の希望となっていく。幼く無垢(むく)な子どもだからこそ、超自然的現象に憧れてしまう気持ち。それは誰もが通ってきた通過儀礼のようなものだ。その感情を、ダークに、そして名作のホラー映画への敬愛を込めて作られたのが「翳りゆく父」だ。

--この脚本を映画化すること自体、難しいものだったと思うんですけども、監督はなぜこの題材を選んだんでしょう。また、プロデューサーがこれにゴーサインを出した決め手は何ですか。
ガブリエラ・アマラウ・アウメイダ監督(以下、アウメイダ監督):私の映画作りへのアプローチはいつもこうで、とてもパーソナルなところから着想しています。友達にはよく、「君は思考がシュールだね」と言われるのですが、私はいたってリアルな思考だと思っていて、このような人間性を描く作家なんだと自分では思っています。脚本は、サンダンス・インスティテュートのラボに参加して書いたものです。サンダンスでは、脚本家のラボと監督のラボに参加をしたのですが、私が書いたこの脚本に対しては非常にレスポンスがよく、ジャンルをあえてミックスしているからこそ選んでもらえたんですね。リスクを伴う映画ですから、サンダンスの後ろ盾は非常に心強かったです。
ロドリゴ・サルティ・ウェルトヘイン(以下ウェルトヘイン):これまで一緒に6本の短編を手掛けているので、今回の作品を彼女と作るのは自然の成り行きでした。それに加えて、いろいろな要素が詰まった映画というのも興味をそそりました。ドラマもあり、ストーリーも素晴らしく、ホラー的要素もある。見る人の心を突き動かす映画だと思ったんですね。私は製作のパートナーと一緒に脚本を読んだんですが、瞬時に夢中になりまして。それで、すぐに製作を決めました。とはいえ最終稿に仕上げるまでには、それなりの時間があったり、また資金集めも大変だったんですけれども。
画像2
--撮影は16年でしたよね。完成まで時間がかかったのはそういうことですか?
ウェルトヘイン:確かに16年の半ばには撮影を終えていたんですが、いざ編集段階に入ったら、これは寝かせながらやっていくべきだということになりました。編集作業の半ばで、1カ月ほど寝かせてその続きを編集していったという感じだったんですね。作品を熟成させていきながら編集していったような感じです。これは監督がとった戦略だったのですが、私もプロデューサーとしてこういう手法をとるのは初めてのことでした。
アウメイダ監督:実はその当時、“Friendly Beast”という作品を完成させており、そのプロモーションのために海外に行ったりすることが多く、忙しかったこともあります(笑)。
--本作も、パーソナルな体験がベースになっているとのことですが、ダルヴァにはどれくらい自己投影をしているんでしょう。
アウメイダ監督:キャラクターの考えの動機に、自分が少し投影されています。また、父親との関係も少しなぞっている部分がありますね。私の父はエンジニアで、家にいることは少なかったんです。そんな家庭で育ったものですから私は映画ばかり見ていました。それと、母と叔母が神秘主義的なところがあって、そういうところも反映されているかな。なので、そことなくダルヴァには自分の少女時代が投影されているとは思います。
――こっくりさん、やりますよね。あれ、ブラジルでもあるんですね。
アウメイダ監督:ありますよ(笑)。どこの国でもそういうことを子どもはやるもんですよね。
――見えないものに対して悩まされる。それが子どもじゃなくて大人のほうが悩まされるみたいな描写は、どのように着想を得たんでしょう。
アウメイダ監督:この映画の中では、現世と心霊的な世界のふたつの世界を共存させたかったのです。父親が生きている唯物の日常の世界があり、その一方、映画の中の女性たち、つまり少女とその叔母が欲する神秘の世界がありますね。それは我々生きる者が求める唯物と、人が根源的に欲する夢みたいなものを指します。少女と叔母は何かを呼び寄せることができると思っており、一方、父親のほうはレンガとか石とか生活とか、日常の繰り返し。その中で死へ歩み寄っていくわけです。このふたつを対峙させたかったんですね。私は、唯物の世界と神秘の世界が共存できるような世界が一番だと思っているのです。なぜかというと、私たち人間は体だけではなくて魂もあるわけですから、それができるはずなんです。
画像3
--物語の構造は「パンズ・ラビリンス」(06)のようだと思ったのですが、影響を受けた作品はあるんでしょうか?
アウメイダ監督:確かに、いろいろな監督の作品の影響は受けていますが、もちろんそれを直接使ったりはしません。他の監督の作品を見て、自分の中で呼び起こされた感覚を抱きながら自分で練る、そしてそれを自分の作品のなかに投影させるのが私のやり方です。本作において影響を受けた具体的な作品名をあげるなら、ビクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき」(73)ですね。それを初めて見た時にとても印象に残りました。少女がフランケンシュタインに夢中になって「死」を初めて知るわけですが、その描写にとても衝撃を受けたんです。でも、決して「ミツバチのささやき」をスタッフに言ったりはしませんでした。というのも、言ってしまうとそれをマネたくなるというリスクが伴うので。「ミツバチのささやき」はあくまでも自分の中でおさめておきつつ、本作のキャラクターの人間性を掘り下げていきました。結局、私たちはいろんな作品の影響を受けて、その作品のコラージュをしているにすぎないと思うんです。そういう意味では私は、(アルフレッド・)ヒッチコックや(ジョージ・A・)ロメロ、いろんな先輩方の影響を受けています。
--さまざまなホラー映画のフッテージを引用していますが、尊敬する監督の作品ばかりだったんですね。
アウメイダ監督:ロメロのクリップはあくまでも少女が自分の願望をあれに投影しているという、物語にちゃんと内包されているもので「ほら、これはオマージュだよ」というコメンタリー的な使い方は決してしていません。
ウェルトヘイン:幸い権利元とは割とスムースにアクセスできたので、使うことができました。劇中ではテレビで放映されている設定なので、ちょっとフッテージに手を加えて、ダルヴァが見ているテレビのホラー映画という設定にしています。
--監督もホラー映画はテレビで見ていたんですか?
アウメイダ監督:80年代後期~90年代当時のブラジルの番組編成って、昼ドラかホラー映画しかやっていなかったんですよ(笑)。87年に軍事独裁政権が終了したので、それ以降いろいろなエンタテインメント作品がブラジルで解禁されました。昼間は勉強し、夜は親が寝付いてからホラー映画を見ていました。それが私の唯一の安息の場所で(笑)。見た作品といえば「グレムリン」(84)や「チャイルドプレイ」(88)、「13日の金曜日」(80)……。ロメロ作品もテレビ局のホラーパッケージのなかに入ってました。局側はロメロの映画に政治的メッセージがあるという認識がなかったようなので、普通にエンタテインメント作品として消化されていましたね。90年代にはいると、ブラジルでもビデオが一気に広まって、私も商業映画ばかり見ていました。大人になってからいわゆるカルチャー色の強いものを見るようになりましたが、子ども時代の映画教育の核にあるのは、ホラーや「パルプフィクション」(94)なんですよ。
(取材/構成 よしひろまさみち 日本映画ペンクラブ)

ガブリエラ・アマラウ・アウメイダ の関連作を観る


Amazonで関連商品を見る

関連ニュース

映画.com注目特集をチェック

【推しの子】 The Final Actの注目特集 注目特集

【推しの子】 The Final Act NEW

【忖度なし本音レビュー】原作ガチファン&原作未見が観たら…想像以上の“観るべき良作”だった――!

提供:東映

物語が超・面白い!の注目特集 注目特集

物語が超・面白い! NEW

大物マフィアが左遷され、独自に犯罪組織を設立…どうなる!? 年末年始にオススメ“大絶品”

提供:Paramount+

外道の歌の注目特集 注目特集

外道の歌 NEW

強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…地上波では絶対に流せない“狂刺激作”【鑑賞は自己責任で】

提供:DMM TV

全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作の注目特集 注目特集

全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作 NEW

【伝説的一作】ファン大歓喜、大興奮、大満足――あれもこれも登場し、感動すら覚える極上体験

提供:ワーナー・ブラザース映画

ライオン・キング ムファサの注目特集 注目特集

ライオン・キング ムファサ

【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!

提供:ディズニー

映画.com編集部もドハマリ中の注目特集 注目特集

映画.com編集部もドハマリ中

【人生の楽しみが一個、増えた】半端ない中毒性と自由度の“尖った映画”…期間限定で公開中

提供:ローソンエンタテインメント

【衝撃】映画を500円で観る“裏ワザ”の注目特集 注目特集

【衝撃】映画を500円で観る“裏ワザ”

【知って得する】「2000円は高い」というあなただけに…“超安くなる裏ワザ”こっそり教えます

提供:KDDI

モアナと伝説の海2の注目特集 注目特集

モアナと伝説の海2

【モアナが歴代No.1の人が観てきた】神曲揃いで超刺さった!!超オススメだからぜひ、ぜひ観て!!

提供:ディズニー

関連コンテンツをチェック

シネマ映画.comで今すぐ見る

セルビアンフィルム 4Kリマスター完全版

セルビアンフィルム 4Kリマスター完全版 NEW

内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。

HOW TO HAVE SEX

HOW TO HAVE SEX NEW

ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。

aftersun アフターサン

aftersun アフターサン NEW

父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。

痴人の愛 リバース

痴人の愛 リバース NEW

奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。

卍 リバース

卍 リバース NEW

文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。

愛のぬくもり

愛のぬくもり NEW

「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。

おすすめ情報

映画.com注目特集 12月20日更新

映画ニュースアクセスランキング

映画ニュースアクセスランキングをもっと見る

シネマ映画.comで今すぐ見る

他配信中作品を見る