人によって解釈が違う…「テルマ」監督「観客それぞれを反映する鏡になれば」
2018年10月26日 19:00

[映画.com ニュース] カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された「母の残像」を手がけたノルウェーの鬼才ヨアキム・トリアー監督が、最新作「テルマ」(公開中)の裏側を語った。
ノルウェーを舞台にした本作は、幼い頃の記憶を封印されたテルマ(エイリ・ハーボー)が、同じ大学に通うアンニャ(カヤ・ウィルキンス)に恋をしたことで、周囲で不可解な出来事が起こっていくさまを描く。米批評家サイト「Rotten Tomatoes」では92%(10月26日時点)を獲得し、「アイ,トーニャ」のクレイグ・ギレスピー監督による英語リメイクも決定している。
本作の独創的なアイデアについて、トリアー監督は「2つのものを融合することに興味があったんだ」と話し、影響を受けてきた作品の名前を次々と明かす。
「1つはテルマというキャラクターの物語。実存主義的な問題を抱えた若い女性が自分は何者なのか、ということを受け入れる。真の恐怖だ。もう1つは、子どもの頃にたくさん見たスーパーナチュラル・ムービーやイングマール・ベルイマンの映画。ほかにもブライアン・デ・パルマ監督作品とか、大友克洋監督の『AKIRA』。こういった作品は、SFやスーパーナチュラルのストーリーを通して実存主義や人生における大きな疑問を描いている。日本映画ではよく人間の感情が描かれていると思うけど、昨今のアメリカのメインストリームな映画はアクションだけで人間の心が描かれていない。だから、この2つを組み合わせてみたかったんだよ」。
劇中は、冒頭での湖のシーンをはじめとした、ノルウェーの雄大な自然の美しさも印象的だ。トリアー監督は「視覚的な言語を創り出すために、200以上のCGのデジタルショットを使ったよ。見た人がリアルに感じてもらえるように。近年のスーパーヒーロー・ムービーは型にはまっていて、まるでアニメを見ているみたいだ。僕はリアルに見せたかったんだ」とこだわり、「この映画に出てくる動物は本物もいればデジタルで操作されているものもある。あの印象的な鳥の群れは『鳥』へのオマージュでもある。僕はヒッチコックの大ファンなんだ。かなり長い過程だったけど、楽しかったよ」と振り返る。
さまざまな解釈ができるエンディングについては「本国のノルウェーでも、『なんて美しいハッピーエンドなの』という人もいれば、『なんてダークなエンディングなんだ』という人もいて、反応がさまざまなんだ。この事実を気に入っているよ。見た人には自分で感じてほしいし、願わくばその解釈が観客それぞれを反映する鏡になればと思う」と述べる。
大友監督や宮崎駿監督、故今敏さんらのアニメーション作品きっかけに日本のカルチャーを好きになったと明かしたトリアー監督は「日本で『テルマ』を公開してもらえるなんてとても光栄だよ! いつか僕の作品のPRで日本に行けたらうれしい」と意欲を燃やしている。
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