ジアド・ドゥエイリ監督「判決、ふたつの希望」は「普遍的なテーマを扱った心に響く作品」
2018年8月9日 07:00
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[映画.com ニュース] レバノン史上初となる第90回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた映画「判決、ふたつの希望」のジアド・ドゥエイリ監督と首都大学東京大学院教授で憲法学者の木村草太氏が8月8日、東京・渋谷のユーロライブでトークイベントを開催した。
同作は、クエンティン・タランティーノ監督のアシスタントカメラマンという経歴を持つドゥエイリ監督作。レバノンの首都ベイルートを舞台に、パレスチナ人男性とキリスト教徒のレバノン人男性の間に起きた些細な口論が、ある侮辱的な言動をきっかけに裁判沙汰となり、やがて国家を揺るがす騒乱にまで発展するというストーリー。監督自身の体験が着想のきっかけになっている。
ドゥエイリ監督の来日は、カンヌ国際映画祭監督週間に出品された監督デビュー作「西ベイルート」以来2度目で、「新作の脚本を執筆していたので、来日を躊躇していましたが、来てよかった。素晴らしい時間を過ごしております」と笑顔。木村氏は「素晴らしい映画でした。最初はなぜこんなことになってしまうのかと思いますが、次第に背景が浮き彫りになって、最後には希望が満ちている。レバノンは日本からは遠い国ですが、扱っているテーマは普遍的。心に響くものがあると思います」と絶賛していた。
劇中には法廷シーンが描かれているが、木村氏は「法科大学院で弁護士や裁判官になる人たちを教えているので、そういう人たちを魅力的に描いてくれるのはうれしい。法廷は本物ですか?」と聞くと、ドゥエイリ監督は「夏休みを使って、本物の裁判所で撮影しました。内装には木製のパネルを貼っていたのですが、映画では法的な部分のコンサルタントをしてくれた弁護士の母から『まだ、そのまま残っているわよ』と聞きました。気に入ってくれたようです」と話した。
木村氏が「日本の映画を見ていると、個々には期待するが、社会には期待しないという空気を感じます。レバノンには複雑な歴史がありますが、社会全体に期待ができるという希望を感じました」と言うと、ドゥエイリ監督は「レバノンでは社会に希望を見いだせるのか、どうかは分かりませんが、中東では今も、宗教的な過去が漂泊しています。私は、映画作家がそういうものを解決できるとは思っていません。出来事を見て、物語を作り、観客と共有すること。映画という旅にいざなうこと。まだまだレバノンはやるべきことが山積しています」と話した。
上映後のQ&Aでも観客からは熱心に質問が続き、ドゥエイリ監督は参考にした映画として「評決のとき」「アラバマ物語」「十二人の怒れる男」など法廷映画を挙げ、宮崎駿監督の「もののけ姫」を子供と一緒に繰り返し見ていることや是枝裕和監督の「そして父になる」に感銘を受けたことも明かした。「映画はレバノンを舞台にしていますが、あくまでも背景です。きっと私がしばらく日本に住めば、日本に置き換えて、同じような物語を描くことができるでしょう」と話していた。
「判決、ふたつの希望」は8月31日から全国で順次公開される。
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