銀河一美しいミレニアム・ファルコン号をつくった日本人CGモデラーが抱き続ける夢
2018年5月18日 14:00

[映画.com ニュース] 「スター・ウォーズ」シリーズの新作「ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー」で、ミレニアム・ファルコン号などのCGモデリングを担当した、日本人CGモデラーの成田昌隆氏が4月に来日。本作でのこだわりや、インダストリアル・ライト&マジック(ILM)入社の秘話、これからの夢を聞いた。
本作は、人気キャラクター、ハン・ソロの知られざる過去を描くアナザーストーリー。シリーズ1作目「スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望」の10年前の物語だ。リード・モデラーとして参加した成田氏は、「今回の映画は、ハン・ソロのレガシーを描くことがメインなんですけど、同時にミレニアム・ファルコン号の歴史を語るという目的もありまして。どうして(ファンにおなじみの)こういう姿になったかというのが明らかになる」と解説する。影の主人公とも言える宇宙船ミレニアム・ファルコン号のCGモデリングに費やした期間は120日。パーツ数は5万にもおよぶというが、「外観で見えているのは4分の1くらいなんです」。ということは、内装を相当つくりこんだのか? 「まあ、その辺は詳しくはいえないんですけど(笑)」とはぐらかしながら期待をあおる。
そもそもCGモデリングとは、2Dのコンセプト画やデザイン画をもとに、コンピューター上で3Dの立体を造形する仕事。完全に分業化されており、着色や質感の付加、照明などは別のアーティストが担当するそうだ。本作では、「新たなる希望」にはじまる初期3部作のコンセプト・アーティスト、ラルフ・マッカーリーが描いたミレニアム・ファルコン号のコンセプト画をベースに、アートディレクターのジェームズ・クラインが新しいデザインを描出。それをもとに、成田氏がパーツを創り出し、監督の意向をもとにスーパーバイザーとディスカッションを重ねながら、ディテールを決め、最終的なルック&フィール(見栄えと雰囲気)を作り上げた。ファルコン号のほか、新型のタイ・ファイター、ハンとモロクのスピーダー、ATハウラーなどを担当した。
独特の形状が印象的なミレニアム・ファルコン号は、「銀河最速の無骨なガラクタ船」としてファンにはおなじみだが、「10年前にランド(・カルリジアン)が持っていたころは、銀河一美しい流線型で、あまりゴツゴツしていない」など、誰もが知る形とは全く異なるのがポイント。一方、特撮が主流だった初期3部作から引き継いだ手法もある。当時は、プラモデルの部品を用いたキット・バッシングで実物の模型を制作しており、それが「スター・ウォーズの世界観をつくりだしている」と指摘。本作でも、戦艦大和の艦橋の部品を用いるなど「ファルコン用にカッコいいパーツを作るのではなく、オリジナルの方法を踏襲してスター・ウォーズ感を出しました」と、こだわりを明かした。

2015年に再始動した「スター・ウォーズ」シリーズの全作でモデラーを務める成田氏は、社会人になってからCGを独学し、46歳のときに証券マンからCGアーティストへ転身した異色の経歴の持ち主だ。「(CGの道は)一度ギブアップしているんですけどね。映画の世界で何ができるかというのを突き詰めた結果、CGしか僕にできることはないなということでやらせてもらっているんです。映画には何かしら関わりたいなっていうのは、子どもの頃からいつも思っていました。だから、それをあきらめることはしなかった。その結果、夢をかなえられたと思うんですね」と映画への熱い思いを口にする。
ところが、意外にも「どうしても『スター・ウォーズ』がやりたくてILMに入社したわけではない」という。12年頃、カナダやイギリスが映画産業誘致のために大胆な税制優遇措置を実施した結果、ハリウッドのVFX業界をめぐる環境が激変し、成田氏が当時所属していたデジタル・ドメイン社が倒産。リード・モデラーとして参加していた「アイアンマン3」は最後までやり遂げたものの、職を失ってしまった。CGアーティストのキャリアはまだ4年ほどだったため、「僕の中ではILMってハードルが高くて、すごい経験を積んだ人が入る会社だと思っていたから、自分が応募するなんて考えてもいなかったんですよ。『スター・ウォーズ』をやるというウワサは聞いていたんですけど、自分なんて絶対できないと思っていて……」と当時の心境を振り返る。
しかし、他に選択肢がないためILMに応募したところ、テーマパークのライドの仕事を運よく得ることができた。「フリーランスで雇われただけで万々歳。(初出社の)前の日は眠れませんでしたね、緊張で(笑)」。その頃まさに、「フォースの覚醒」のスタッフ集めが始まろうとしていたが、「自分はたかだか1カ月半しかいないフリーランスの身だし、経験も4年しかない。だから、うらやましいとも思わなかった」と手の届くチャンスだという認識はなかった。偶然にも、そのライドのスーパーバイザーが「フォースの覚醒」のモデリング・スーパーバイザーを担当することになって、仕事ぶりが評価されて4人のモデラーのうちの1人に大抜てき。「チームに入って最初にやってくれといわれたのが、ファルコンのモデルと言われたときには、手が震えましたよね(笑)」と喜色満面だ。
中学生の頃、ハリウッドでの特殊効果の仕事を夢見るきっかけになった「スター・ウォーズ」の新作に携わり、まさに“アメリカン・ドリーム”をかなえた成田氏に今後の夢を聞いてみた。「僕の夢は、映画の世界で働き続けること。僕にできるのは、CGのモデリングしかありません。それで(映画に)貢献していくしかないので、今後も与えられたモデルの仕事を精一杯、ひとつひとつ丁寧にがんばっていくっていうのが僕の目標です」。
「ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー」は6月29日から全国公開。
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