映画評論家・松崎健夫「女は二度決断する」の“仕掛け”とは?
2018年4月5日 16:00

[映画.com ニュース] 名匠ファティ・アキン監督が手がけ、第75回ゴールデングローブ賞で外国語映画賞を獲得した「女は二度決断する」のトークイベントが4月4日、都内で行われ、映画評論家の松崎健夫氏が作品を独自の目線で解説した。
爆弾テロでトルコ人の夫と幼い息子を奪われた女性カティヤが、絶望のなかで下す“決断”をサスペンスフルに描く。主演を務めたダイアン・クルーガーが、第70回カンヌ国際映画祭の女優賞に輝いた。
本作を、私刑を執行する自警団を指す「“ビジランテ”もの」と評した松崎氏は、1960年代に台頭したマカロニ・ウエスタンから続く“復しゅう映画”の系譜に、本作があると持論を展開。「(マカロニ・ウエスタンの代表作)『荒野の用心棒』は、黒澤明の『用心棒』の翻案。そして『女は二度決断する』の主人公には侍の刺青(いれずみ)があり、あれは恐らく(『用心棒』の主演)三船敏郎だと思う。ダイアン・クルーガーは『イングロリアス・バスターズ』という復しゅう劇にも出ているし、(アキン監督は)本作をある種復しゅう劇として見せたかったのじゃないか」と共通項を挙げながら、アキン監督の真意を考察した。
さらに、チャールズ・ブロンソンの代表作であり、本作と同じく家族を殺された主人公の行動を描く「狼よさらば」を例に挙げ、「『狼よさらば』は犯人が見つからないが、本作は違う。スマートフォンが現れる前だったら、こんな風に犯人の元に主人公が乗り込もうとする映画になったかどうか。一般人が自ら情報を手に入れて、動けるようになってしまったという問題も描いている」と指摘し、本作を「“いま”の映画」とした。
松崎氏は、本作の構造にも目を向け、「この映画には、主人公が見たものしか描かれていない。彼女が持っている記憶と観客の記憶を同期させ、追体験させる構造になっているんです」と考察し、「でも最後だけ、彼女の姿が見えなくなる。観客の皆さんに考えさせる意図があるからです」とラストシーンによって、本作は単なる「ビジランテもの」から脱し、より深いドラマへと昇華されるとの考えを示した。
「女は二度決断する」は、4月14日から全国公開。
(C)2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production, corazon international GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH
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