諏訪敦彦監督「見たことのないJ=P・レオが現れた」 ヌーベルバーグを代表する俳優との現場を述懐

2018年1月19日 17:00

諏訪敦彦監督
諏訪敦彦監督

[映画.com ニュース]諏訪敦彦監督が、俳優ジャン=ピエール・レオを主演に、フランスで撮り上げた8年ぶりの新作「ライオンは今夜死ぬ」が、1月20日公開される。南仏の美しい土地で、老俳優がかつて愛した女性の幽霊と洋館で不思議な再会を果たし、さらに子供たちと一緒に映画撮影をしていく姿を切り取ったみずみずしい作品だ。ヌーベルバーグを代表する名優との現場を諏訪監督が振り返った。

学生時代より、ジャン=リュック・ゴダール監督の作品を中心にレオの出演作に多大な影響を受けていた。「僕はゴダールの『男性・女性』からですが、ヌーベールバーグを発見していくときに、ジャン=ピエール・レオという人が非常に、好きになってしまったんです。学生時代はタバコの吸い方などよく彼のまねをしていましたね(笑)。フランソワ・トリュフォーのドワネルとしての彼より、『中国女』『ウイークエンド』など、ゴダール作品のほうが、印象が強かったんです。右往左往している不安げな感じはドワネルと一緒だけれど、ゴダール作品でのほうがちょっと暗い。トリュフォーだとコミカルさが強調されますが、ゴダールだとそのコミカルさが痛々しくなってくる。そこが好きで。それから、ジャン・ユスターシュの『ママと娼婦』も公開当時見て、やはりすごい作品だなと感動しました」

2/デュオ」で長編デビュー後、「不完全なふたり」「ユキとニナ」などフランスを舞台にした作品も発表。いつかレオと仕事がしたいという願いが今作で叶った。「ある映画祭でジャン=ピエールの特集があり、その時に彼が僕の映画を見たがっていると聞き、DVDを見てもらったんです。『不完全なふたり』はセリフを覚えるくらい見てくれたそうで、対面した際にはシャッポを脱ぐ仕草までして下さった。俳優としての彼を実感したので、この人を撮りたいなと思ったんです。彼は僕にとって特殊な存在だけれど、一人の老俳優でもある。彼が特殊な人だと思うのは、映画が一気に変革されていく時に、その新しい映像の中に存在したこと。そしてその波が変化し、今の普通の映画にはどうもフィットしない。こういう特異な人に合わせた映画を作らないといけないと思ったのです。彼を主役にするというのはそういうこと。映画そのものも変われるのではという期待もありました」

2010年から子供たちが主体となって映画製作を行うワークショップ「こども映画教室」に参加。「子供が映画に出会うプロセスに立ち会う経験が非常に面白かった。今回、一緒に作ったら面白いんじゃないか」と考えた。「子供たちには、即興でやると同時に、彼らの映画を作ってほしかった。ですから、(映画内の映画の)シナリオは彼らに考えさせました。子供たちがジャン=ピエールを『じいさん!』なんて呼んでいるのもよかった。無作法で遠慮がないけれど、僕とジャン=ピエールだけで作り上げた関係だけではなくて、子供が入ってくる。みんなで何かを食べるシーンで、スープを飲んだジャン=ピエールが突然笑い出すんです。フランスのスタッフもこんな彼の表情は見たことがないと驚いていて。過去のどの映画にもあんな彼はいなかったし、ああいう笑顔を映画の中で見せたことはない。この映画には、僕たちが知らないジャン=ピエールが現れていると思うんです。そういう、ある意味で奇跡が起きたのは、子供たちのおかげだと思います。ある子供は『変なおじいさん、大人なのに子供みたいなんだもん』と共演の感想を語っていましたね」

撮影時のレオは、演技について内面的なアプローチは必要とせず、あくまで何をして欲しいかを監督に確認するのみだという。「ここからここまで歩いてくれとか、何秒止まるかなど具体的な動きを聞かれて、そして、僕がジャン=ピエール風にやって見せるんです。不思議なことに、僕がまねしたジャン=ピエールをジャン=ピエールが参考にするという(笑)。過去のジャン=ピエールを再創造しているとも言えますね」

「撮影中はリラックスせず、監督にどう思われているかを気にされていて、僕が『良かった』というとうれしそうでした。昔の映画の話をするのは好きで、最初に会ったときに『ウイークエンド』のことなど楽しそうに話をしてくれましたね。僕があの劇中でジャン=ピエールが歌った歌を口ずさんだら、彼も当時のままに歌いはじめて、感動しました。ある時は撮影中に『ママと娼婦』のセリフが出てきたことも。ジャン・コクトーの言葉だったり、昔の彼の記憶にある言葉が時々ぱっと脳裏に浮かぶことがあるんだろうなと思いました」と撮影時のエピソードを明かした。南仏の光の下、生と死、現実と非現実、登場人物の年齢や立場を軽やかに超えた豊かな映画を是非スクリーンで見届けてほしい。

ライオンは今夜死ぬ」は、1月20日からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次公開。

(映画.com速報)

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