マーク・ウェブ監督が語る、温かな「普通の幸せ」の重要さ
2017年11月22日 12:30
[映画.com ニュース] 冴えない青年の恋模様を綴った「(500)日のサマー」で一躍注目を集め、「アメイジング・スパイダーマン」シリーズを手がけたマーク・ウェブ監督が、「キャプテン・アメリカ」のクリス・エバンスを主演に「gifted ギフテッド」のメガホンをとった。ザ・アメコミなコンビだが、描いたのは普通の幸せの重要さ。小さな町を舞台にした今作を、「“温かさ”を核に製作した」というウェブ監督に話を聞いた。(取材・文・写真/編集部)
映画は、生まれて間もなく母親を亡くし、独身の叔父フランク(エバンス)に育てられた少女メアリーの特別な才能をめぐるハートウォーミング・ストーリー。7歳で生意気盛りのメアリーは、フランクと片目のネコのフレッドとともに、米フロリダの小さな町で幸せに暮らしていた。しかし、その非凡な数学の才能が明らかになったことで、穏やかな生活が揺らぎ始める。
ウェブ監督は、「私たちは往々にして、日々のささやかな普通の幸せをあまりにも見逃しがちです。メアリーの存在が、その重要さを思い出させてくれるんだ」とほほ笑む。
突然現れた天才児に、学校の担任教師や校長は特別な学校への転校を勧めるが、フランクは亡き姉から託されたある秘密により、メアリーに“普通”の生活を送らせることにこだわる。そんななか、フランクの母で数学者のエブリンは、メアリーに英才教育を施すためふたりを引き離そうとする。
エブリンの存在はふたりを悲しませるが、ウェブ監督は「彼女なりに、メアリーにとって1番いいことだと思ってやっているんだ」とフォローする。この設定は、ウェブ監督の映画作りにおけるひとつの“流儀”に基づいている。「(脚本家の)トム・ストッパードは、『素晴らしいドラマには、常に“何が良いか”という対立したアイデアがある』と言っています。僕はその考え方が大好きだよ。どの登場人物にも悪気はなくて、ただ考え方が異なっているだけなんだ」
今作には、「いかにシンプルに映画を作れるかということをあらゆる面で実験してみたい」という思いで臨んだ。「俳優たちの演技だけに頼るような映画にしたかった。物語自体も流行りのクールなものではないし、重要なものですらない。それよりも、“あたたかく”作られているんだ。観客に、素直に『いい映画だな』と思って欲しかった。製作期間中はとにかく楽しかったし、シンプルな映画の可能性を思い出させてくれたよ」
今作で特筆すべきなのは、間違いなくメアリーを演じた子役のマッケンナ・グレイスだろう。ウェブ監督は、エバンスとともに700人以上の子役のオーディションを行ったが、理想の“メアリー”にたどり着くのは容易ではなったと明かす。
「メアリー役に求めていることをすべてできる子役はいないと思っていたところに、マッケンナがやってきた。とにかく愉快で、楽しませてくれたよ」
感情的になる場面のテストでは、マッケンナは完全に “メアリー”になっていたという。「シーンが始まった瞬間の感情の爆発には驚いたよ。怒りや悲しみを全部出し切っていた。クリスと『この子だ!』って意見が一致したよ。感情表現とユーモアのセンスを併せ持った彼女の人間性は、幸せや喜びの塊みたいなんだ」
“泣き”の演技には、撮影中も心を奪われたようで、メアリーが泣くシーンでは自分も一緒に泣いていたと告白。「監督が感動したときに泣けば、俳優に自信を持たせることができる。客観的に撮影する必要はないと思う」と持論を展開したが、最後に「小さな子どもがつらい目に遭っているのを見て、泣かずにいるのは難しいよ」と肩をすくめて本音を漏らした。
また、「何の特徴もない男」に扮したエバンスを、「この映画のすべての登場人物をリアルにしてくれた」と大絶賛。「フランクは感情を抑えた岩のような男で、メアリーは猫を追い掛ける小鳥のような女の子。この対比が物語を面白くしている。クリスとマッケンナの関係は、カメラが回っていないときも素晴らしくて、愛があった。映画に出てきたふたりそのものだね」
超大作を経て、原点に立ち戻ったウェブ監督。目を輝かせながら今後の展望を語ってくれた。
「スリラーやミステリーもいいかな。違うジャンルを探求していきたいんだ。自分を決めつけることも、同じことを繰り返すこともしたくない。ピーター・ウィアー監督はいろんなジャンルの作品を手がけながらも、どこか彼らしさを失わないよね。僕もそういう監督になりたいと思う」
「gifted ギフテッド」は11月23日から全国公開。
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