劇場公開日 2017年11月23日

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gifted ギフテッド : 映画評論・批評

2017年11月14日更新

2017年11月23日よりTOHOシネマズ シャンテほかにてロードショー

挫折を乗り越えた監督の輝かしい再起に、心から「おかえり」の言葉を

かつて「アメイジング・スパイダーマン」シリーズの続行中止という憂き目に遭ったマーク・ウェブ監督が、3年ぶりに放つ復帰作である。その間、苦しみや葛藤もあっただろう。しかし彼が描くのは、そんな逆境を微塵も感じさせない、優しくて陽だまりにみちた物語だ。撮影の規模も方法もシンプルで、肩肘を張らず、自由で大らか。まるで今いちど初心に戻って、自分の映画への愛情を確かめながら大切に呼吸を重ねていったようにも思える。

その世界の中心を担うのは、7歳の少女メアリー(マッケンナ・グレイス)と、男手一つで彼女を育てる叔父フランク(クリス・エヴァンス)だ。いつも仲睦まじく、一緒にいると笑顔の絶えない二人。だが、メアリーが小学校に通い始めると、ひとつの問題が持ち上がる。それは彼女が抜きん出た知能の持ち主だということ。「この子にごく普通の生活を」と願うフランクに対し、教師たちは彼女の名門校への転校を薦め、さらに遠方から訪れた祖母は最高級の英才教育を受けさせようとするのだが………。

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本当の幸せって一体なんだろう。ここに登場する大人たちは誰もが彼女の幸せを願っているはずなのに、そうであるがゆえに衝突し、メアリー本人の思いからどんどん遠ざかってしまう。そんな歯がゆさ、不条理さに対し、全身を使って怒りや悲しみをぶつける子役マッケンナ・グレイスのなんと健気なことか。その姿を見つめているだけで胸がキュッと締め付けられ、そんな姪のあらゆる感情を全身で受け止めるエヴァンスの名演にも心動かされてやまない。二人が織り成す人間模様は、シンプルな中にプリズムの輝きを望むかのような、見るたびに沁みていく深みがある。これぞ互いが奏で合うウェブ監督流ヒューマンドラマの真骨頂だ。

映画監督という職業を一つの特別な才能とするなら、ウェブ自身もまた、その“使い方”に悩み続けてきた一人。長い旅路の果て、「(500)日のサマー」にも通ずる瑞々しさへ回帰した本作は、まさに彼の持ち味が発揮できる最高の舞台といえよう。誰もがこの瞬間を待っていた。あるべき場所に帰還し、輝かしい作品を届けてくれたマーク・ウェブに心から「おかえり」の言葉を贈りたい。

牛津厚信

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