橋本愛、20歳になったいま感じていること
2016年10月23日 09:00
[映画.com ニュース] 女優の橋本愛が、新鋭・吉田康弘監督がオリジナル脚本で挑む意欲作「バースデーカード」に主演し、宮崎あおいと初共演を果たしている。幼くして母を亡くした主人公・紀子の17~25歳を演じた橋本はキャリア豊富だが、まだ弱冠20歳。「個人的に人の死に立ち会ったことが、まだ一度もない」というなかで、どのように作品と対峙していったのか話を聞いた。(取材・文/編集部、写真/江藤海彦)
映画は、亡き母・芳恵(宮崎)から毎年誕生日に届く手紙に元気づけられ、勇気づけられながら、紀子が父(ユースケ・サンタマリア)、弟(須賀健太)と精いっぱい人生を歩んでいく姿を描いていく。顔合わせの時に、吉田監督の「堂々と王道をやりたい」という言葉を聞いた橋本は、「これは丁寧に慎重に取り組まなければ」と思ったという。
メガホンをとった吉田監督は、決め込むことなく十分に余白を残した脚本を用意していたという。母からのバースデーカードを楽しみにしていた紀子が、19歳の時に心境の変化を生じさせるが、それは橋本の提案が生かされている。
「最初にその話をしたのは、この作品に出演させて頂くと確定する前の段階でした。脚本を拝見し、監督とお会いして、『もしも私が紀子を演じるとしたら、この部分が不安です』みたいな相談をさせてもらいました。もとの脚本だと、反抗的なシーンはなくて従順に大人になっていくという流れだったのですが、いずれにしても母からの手紙は20歳で終わっちゃうじゃないですか。それ以降、お母さんの手紙なしで、ひとりで生きていけるような気がしなかったというか、二本足で立てる想像があまり出来なかったんです」。
橋本の思いを汲んだ吉田監督が加筆した脚本、そして完成した映像は、物語に大きな説得力をもたらすものとなった。そう伝えると、橋本は真摯な面持ちで「亡くなった母からの手紙がどんなに大切だといえど、自我をもって向き合うことは健全なことだと思うんです。それを乗り越えてひとりで立っていった方が、強く生きていくという説得力は生まれるんじゃないかとお話ししたことが、こういうシーンにつながっていけたというのは嬉しいですね」と語った。
また、娘にとって母親と比べて存在感はどうしたって薄くなりがちだが、今作における父親(ユースケ)の存在を無視することはできない。「適当なことばかり言っていますが、すごく真面目な方。ご自身の役について『愛する人を亡くして、ひとりで子どもを、それも女の子を育てるというのはすごい事だよね。俺だったら死んじゃうかもしれない』って仰られていました。でも、私にとっては本当に強くて頼りになるお父さんでしたよ」。
9~10月には、根本宗子が主宰する劇団「月刊『根本宗子』」の新作「夢と希望の先」で、舞台初出演を飾った。多くの刺激を受けたことは想像に難くないが、「大好きな劇団の内部に侵入するっていう、なかなかやりたくてもやれないことが出来て嬉しかったですね」とニヤリ。さらに、「カメラの前に立つことにはだいぶ慣れましたが、人前でお芝居をするというのは……、最初は混乱しましたね。でも、今までとサイズもボリュームも違うことをやってみたかったし、願いはかなったと思っています。(結果に対して)満足しきれていないところで終われたのも良かったのかなって感じていますね」と一点を見据えながら、穏やかな口調で話した。
今年は、これまでに「うつくしいひと」(行定勲監督)、「残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋」(中村義洋監督)、「シェル・コレクター」(坪田義史)と続き、今作封切り後は「古都」(Yuki Saito監督)の公開が控えている。来年の「美しい星」(吉田大八監督)も含め、相変わらず映画界からの寵愛を受けている。今後に関しても、仕事をしてみたい映像作家の名前がすらすらと出て来る。「絶対に是枝裕和監督とはご一緒してみたいんです。是枝監督の現場に行きたい、是枝監督が書かれたセリフをしゃべりたいんです。ほかにも黒沢清監督の作品にも出てみたいですし、最近何をされているのか分からないですが、沖田修一監督の作品にも出たいですね」。
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