高齢者の未来を描く「グランドフィナーレ」監督、主演は「マイケル・ケインしかいなかった」
2016年4月15日 07:30
[映画.com ニュース] 第28回ヨーロッパ映画賞でヨーロッパ作品賞と同監督賞、男優賞(マイケル・ケイン)の3冠を受賞し、第88回アカデミー賞では主題歌賞にノミネートされた「グランドフィナーレ」のパオロ・ソレンティーノ監督が、映画.comのインタビューに応じた。
世界のセレブが宿泊するアルプスの高級ホテルで余生を過ごす天才音楽家のフレッド(ケイン)に、英国女王から指揮者としての出演依頼が舞い込むが、フレッドは固辞。そこには娘レナ(レイチェル・ワイズ)にも明かせない妻とのある秘密があった。
ショーン・ペンがロックシンガーに扮した「きっと ここが帰る場所」(2011)や、第86回アカデミー賞外国語映画賞に輝いた「グレート・ビューティー 追憶のローマ」(13)で独特の映像世界を生み出してきたソレンティーノ監督は、本作のテーマを「誰も否定できない、未来と愛」と語る。「本作では、ある一定の年齢に達した人が、自分の未来をどのように見るのか、そしてそれがゆっくりと形になっていくさまを物語にしたんだ。もう若くはない人が、どのように自分の未来を見るか? 時間の経過と、自分たちに残された時間をどうするかというテーマに魅了された。80歳以上の人が人生についてどのような期待を持つかということを知りたかったんだ」。
人生の終盤を迎えた人々にとっての“未来”を描く上で、主人公はまさに作品の心臓といえるが、ソレンティーノ監督は「オーケストラの指揮者を映画に登場させたいという思いは、以前から強くあった。作曲者・指揮者はとても高位だという考えがあり、それに値する高位な俳優が不可欠だった。そして年齢と才能を考えたときに、マイケル・ケインしかいなかったんだ」とフレッド役に現在83歳のオスカー俳優・ケインを当て書きしたと明かす。
さらに、フレッドの最良の友でありホテルの宿泊者でもある映画監督のミックには、「タクシードライバー」(76)や「パルプ・フィクション」(94)、「グランド・ブダペスト・ホテル」(13)の名優ハーベイ・カイテルを起用した。「ハーベイ・カイテルとの出会いは、とても貴重な機会だったといえるね。彼のものの見方、繊細さや強さはミックの役に多くをもたらしてくれた。ミックを登場させたのには個人的な理由が大きくて、自分が将来的に、映画に対してどう関わっていくかということへの興味からなんだ。時間が経過したときに、情熱や体力、精神力が満ちてくるものなのか、何が起きるのか少し探ってみたいと思った」。
本作の原題「Youth(若さ)」は、まさに監督の思いを反映しているといえる。圧倒的な映像美で人々の生き生きとした姿を描いたソレンティーノ監督は「私にとって、映画とは楽しむものであることに加え、物事を知る可能性を多く秘めた大学のようなものなんだ。私が目指しているのは、ささやかだけどぴりっとしたまさに常道。だって人生は悲劇をまじえたコメディだからね」と締めくくった。